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2 「…ぁ!…やめ…、ろ…!」 ベッドに上半身を押し付けられながら、後ろから覆い被さる悪魔の冷たい手が体を弄ぶ。奴の手のひらは冷たく、まるでひやりとした蛇が体の上を卑猥に這い回るようだった。 左胸の突起はワイシャツの上から摘み上げられ、小さな膨らみを丁寧に指の腹で押し潰すように刺激される。奴の片手は俺の右内腿を撫であげ、脚の付け根の方へ、上へ上へと這い上がる。その先にある熱の籠った箇所を俺へ知らしめる。 恥ずかしい… 声を抑えなければ… 湿り気を帯びたシーツを手繰り寄せながら、顔を腕やベッドに押し付ける。その白い布は自分の唾液や汗で直ぐに染みが残り、汚れていった。どうしようもなくビクビクと体が跳ねている。 「ンッ…!…ンッ!」 触れられる場所がジンジンと熱を持っていく。焦がれて痺れるような快感を与えられる度、鼻から漏れるような自分の甘い喘ぎ声がくぐもって響いた。 もう何度目だ…? 出会ってから何度も、こんな風に自分の痴態を奴に晒してきた。 次こそは祓うと決心するのに、今夜も奴が与える快楽から逃れられない。 「ライラ…我慢汁が染み出てきてるよ…」 俺の耳元で悪魔が艶っぽく囁いた。それだけでヒクンと背が正直に跳ねる。 腫れすぎたぺニスは熱くて、押し返す布が痛いくらいだった。我慢し過ぎて溢れた透明な体液が下着を濡らし、必死に内股を擦り合わせている。今にもほつれて切れそうな理性の糸を握りしめるかのように、浅ましく動く腰の動きを必死に抑えようとしている。 最強のエクソシストの俺が… 悪魔にこんな扱いを受けてるなんて… 最高に屈辱的で、気持ちいい… 「っぁ"…!も、ぉ…やめ…ろ…!」 恥ずかしさと屈辱で涙を堪えながら、声が上擦って裏返る。拒絶の言葉を口走るくせに、俺の本心は違っていた。 もっと強引に… 俺の全てを奪ってくれたらいいのに… 全部忘れたい… 頭の中も心の中もいっぱいいっぱいになるこの感覚が… 俺を縛り付ける(しがらみ)からの解放であり、救済だった… 最後のプライドで、俺は抵抗の姿勢を繕う。 それなのに、悪魔はすべてを分かっているかのようだった。 「やめていいのかい…?」 そんな悪魔の低い声が鼓膜にまとわりつくと、ゾワリと全身が粟立った。 屈辱と快楽で、俺の泣き顔は情けなく歪む。歯を食いしばった。 「ふーッ…、ふ…っ…」 自分の荒い吐息だけが静寂にこだましていた。 何も答えられない。頬だけでなく耳や首筋までも赤く染っていくのを感じながら、プルプルと体を震わせた。 やめて欲しくないなんて、俺の口から言えるわけが無いのに…! 悪魔は卑劣に、狡猾に…俺の尊厳を踏みにじる… 「…っ…もっと…ぉ…、欲し…い"っ…」 消え入りそうな声で泣きながら呟く。いい大人にもなって、こんなに情けない声を出すとは思わなかった。ガクガクと揺れてしまう腰の動きを制御できない。もう、下半身は果ててしまいそうなほど限界だ。 悪魔の手へ自らぺニスを擦り付けるように腰を揺らしてしまっている。自分のそんな行為にさえ、酷く興奮していた。この悪魔に全て見られていることが…俺を狂わせる。 「可愛いね…」 悪魔が笑いながら呟く声が聞こえる。咄嗟に言い返したいのに、喉まで上がってきた言葉は、核心部分に走った激しい快感によって嬌声に塗り替えられた。 「あ"ぁ…っ!イク…、イグッ…!」 今までのような焦らす手つきではなく、完全に絶頂へ導く確かな動きで悪魔が俺のモノを扱う。服越しに押し付けられる悪魔の指が、俺の敏感な部分に濡れた下着を巧みに擦り付け、断続的で強烈な、ヌルヌルとした刺激を与えていた。ソコから脳天へ電流が走っていくかのように全身が激しく引き攣る。脚の爪先がフローリングの上で反り返った。 「イッていいよ、ライラ…」 甘く囁く悪魔の声が、俺を快楽の頂点へと導く…。 瞬く間にガクンガクンと激しく腰が跳ねて、背中が弓なりに跳ね返った。押さえる物が無くなった口からはあられもない喘ぎ声が漏れていく。 「…あ"…んっ…!あぁぁぁ…!」 自分の服を汚しながら、ビクビクとぺニスが脈打つ度に白濁がビュルビュルと溢れていく。すかさず腰の革ベルトがカチャリと緩められ、悪魔の冷たい手が服の中へ侵入した。蒸れた服の下で手探りのまま悪魔の手は動き、体液でベトベトに汚れた俺のぺニスを探り当てた。最後まで搾り取るように扱かれて、ヒクヒクと腰がさらに跳ねてしまう。 「ひぅ…!ぁっ、ぁぁ…!」 耳を塞ぎたくなるような甘い喘ぎ声が漏れていくけど、絶頂の余韻から抜け出せなかった。荒々しく乱れた呼吸を整える余裕さえも持ち合わせていない。 悪魔は不意に俺の髪をグシャリと掴み、手荒に引き寄せた。 涙と汗でぐちゃぐちゃになった顔をのぞき込まれる… 「見る…、なぁ"…っ…」 泣き声混じりで嫌がるようにそう言った言葉に、どこか奴へ媚びるような響きがあった。自分でもそれに気づくと、さらに羞恥心と屈辱が募る。 奴の目には、俺の今の表情はどう映っているのだろうか…。 想像するだけで…俺のすべてが崩れ去っていくような感覚に陥る。 でも――――それが良い、俺の全部を壊してくれ。 悪魔は恍惚を浮かべ、妖しく微笑む。 「…また来るよ。ライラ。」 そう言って、奴は俺の身体を再びベッドに預けた。その直後、虫の羽音のような不快な音が次第に大きくなる。 また、俺を置いてどこかへ行くのか…。 「ま、待てっ…!」 俺の虚しい一言だけが空虚に残る。 悪魔の体は黒い渦のような物体に包まれながら消えていった。

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