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(ライラside)
「ぅ…体痛ぇ…」
唸りながら目を覚ます。ここは…昨日の宿屋か…。
ベルブが来て…
また、あんなことをされて…
ボッ、と顔を赤らめながら、利き腕を見た。左手は確かに手当てされた跡が残っていて、バスローブをしっかりと体に羽織ってる。
たぶん俺、最後…
"イグッ…ベル、ブぅ…っ、イくぅ…ッ"
"一緒に…出しちゃおっか…っ、ライラ…"
"あぁ"…っ、んっ…!…ぁ!ああっ!"
「うっわ、恥っず…」
頭を抱えながら、昨日の最後の記憶を思い出して体が熱くなる。顔から火が出そうだ。またあんな醜態さらして…
つーか、あの悪魔…!
俺と…セ、セックスするとか言いやがった…!
無理だ…あんな狂暴なものが俺の腹におさまるわけがねぇだろうが…!
なのに、期待してしまった…。欲しいって、きっと媚びるような顔して…あの悪魔のこと見ちまった…!
「有り得ねぇ、マジで…。そんな関係までなったら…エクソシストの仕事にも支障が…」
そうだ、先日の悪魔祓いでさえ、あんな状態だったんだ。ターゲットに悪魔との関係を見抜かれたら…信仰心が揺らぐ…。
最強のエクソシストが名折れするぞ…!?
「うぅ…、でも…考えるだけで…体熱くなる…」
無意識に膝を擦り合わせ、腰が甘く揺れそうになる。その時、ズキッと背中に痛みが走り、眉間に皺を寄せた。
「チッ…体痛すぎてロクに抜くのもできねぇのか…」
額から汗を流し、自嘲しながら腰を押さえた。
あぁもういい、萎えた。寝よ…。
「って、寝てていいわけねぇ…!」
この宿、延泊するつもりじゃなかったのに、大丈夫なのか…!?
時間をチラリと見ればとうに昼を過ぎている。それなのにスタッフも起こしに来ないし…。
痛みが走る体を引き摺りながら這い上がると、古びた受話器を取って、フロントへ連絡する。
『あぁライラ様。大丈夫ですよ。延泊分のお駄賃はいただいております。』
そんな女性スタッフの声が返ってきて、「はぁ?」と、気の抜けた声で返す。
『今朝早くに、ライラ様のお知り合いだという方が払っていかれました。』
ま、まさか…
「どんな奴だ…?」
『えぇっと…背の高くて…イケメンで…白くて長い髪の…』
受話器の向こうの女性の声が艶っぽく熱を帯びながら、"代金を払った"という男の正体を告げる…。
「そ、そうか…。つーか、何かされてないか?大丈夫だったか?」
ふと、アイツは悪魔だったということを思い出し、反射的にエクソシストとしての庇護欲から尋ねる。
『いえ、何も。お駄賃だけ支払って帰られました。言伝も特に聞いておりませんが…』
「あぁ、ならいいんだ…」
『どうぞ、ごゆっくりお過ごしくださいませ。』
電話をガチャンと切った。
「ベルブ…余計な世話を焼きやがって…」
なんだよ…
俺のこと全部分かってるみたいで…
それに朝早くに代金を支払って、って言ったな。
朝まで俺のそばに居たとでも…?
クソ、意識飛ばしてて、あの後のことが全く分からん。
額に手を当て頭を抱えながら項垂れる。
「…はぁ、好き」
と、消え入りそうな声で呟いた。
正直、特別扱いされてるみたいで嬉しい。
どうせあんな面のいい悪魔には、俺みたいな都合の良い暇つぶし相手が沢山居るんだろうけど…。
しかしあの悪魔にまた借りを作っちまった。最強のエクソシストが情けない…。
それに今日は動けんな…
報告書をまとめて、少し休むか。
明日からはまだ案件があるし、早く終わらせねぇと…。
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