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第九章:『本性』
【第九章:本性】
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(ライラside)
ベルブの姿をした悪魔の口を塞ぐのは、本物のベルブだ。俺は確信していた。いつもの登場だし…。何より俺の名前を知ってる。
一方でこの偽りのベルブは、俺の名前を呼ぼうとしなかった、俺の名前を知らないからだろう。
ベルブに会えた嬉しさと興奮が身を焦がすが、それよりもこの状況…良くないな…。ベルブから、やましいことをしていたと疑われている…。
「ベルブ…っ…違う、何もしてない、分かるだろ!?その悪魔を祓おうとしてたところだ!」
ベルブの口から飛び出た"浮気"という言葉に驚きながら、こんな勘違いをされるなんてたまったもんじゃないと、必死に否定する。
しかしベルブは、俺に冷ややかな視線を送った。
「この悪魔と2人きりで?何もしてないって?全裸なのに?」
そんな指摘をされ、ハッと自分の体を見る。握りしめていたシーツはどこへやら、素っ裸で俺は立っている。
「いっ…!?」
慌ててシーツを引っ付かみ、下半身を覆った。顔が真っ赤になっていくのが分かる。
「違う、これは!訳あって…!」
「へぇ、言い訳かな?じゃあ…しっかりとした言い訳を用意しててよ。あとでゆっくり聞くから。まずはコイツを…」
ベルブはそう言って、捕まえていた悪魔を睨みつけた。悪魔はベルブの姿のまま口を塞がれ、その目は怯え切ったように見開かれている。
「んんん"っ…!んんっ!」
悪魔は声にならない声を鼻から漏らしながら、ベルブの腕を掴んで口元から引き剥がそうとしている。脚をジタバタとさせて暴れるが、口を塞ぐベルブの腕はピクリとも動かなかった。
ベルブの表情はキッ…、と険しく歪む。眉間に深い皺を刻み、鬼のような形相で悪魔を睨みつけていた。
「…分かってるな?自分のした事を。地獄行きだ」
ベルブが悪魔の耳元で囁くと、ベルブと悪魔の2人は漆黒の闇に包まれていく。
「お、おい…!ベルブ…!」
待てよ、どこへ行く気だ…!?
消えていくベルブと悪魔に手を伸ばし、追いかけようとする。悪魔の断末魔のような声が、霞んでいく闇と共に小さく遠くに消えていく。
「ベルブ…!」
姿を消したベルブを探すように声を張り上げた。
クソッ…。ベルブ…。どっかにあの悪魔を連れて行っちまった…。
せっかく会えたのに…。
しかも浮気だと?んなもん、するわけねぇだろ…。ちょっと…騙されかけたけど…。
俺にとっては悪魔なんてただでさえ宿敵なんだ、たった一人、ベルブだけが例外なだけで…。
「はぁ…最悪だ…。」
ため息をつきながら、ベッドに腰を下ろす。シーツを肩から掛けて身を包み、項垂れた。
しかしその時、ベルブが現れる時のあの音が、突然部屋の中に響き始めた。
「ベルブ…!」
ハッと立ち上がり、ベルブの戻りを待つように視線を巡らす。目の前にズズッと黒い影が現れたと思うと一瞬で霧散し、そこにはベルブが立っていた。
「ライラ。言い訳を聞こうか。」
ベルブは戻ってきた途端にそう言って、腕を組む。眉が吊り上がり、不機嫌そうに目を細めていた。
赤い眼差しは冷たく光り、鋭い眼光が宿る。
あぁ…すごく機嫌が悪そうだ…。弁明しなきゃならないのに…ベルブの美しさで息を飲む。
ずっと待ってた、コイツが戻ってくるのを…。
「ベルブ…。会いたかった…。戻ってくれて…嬉しい…っ」
勝手に視界が潤んで、本音が口からポロリと漏れた。恥ずかしくて、咄嗟に顔を伏せる。
「…ライラ。そんな顔されたら…怒る気も失せそうだ…」
ベルブの柔らかな声が響き、俺は思わず顔を上げる。
「遅くなってごめん。待たせたね…」
ベルブは表情を緩めて申し訳なさそうに微笑み、俺の頬にそっと手を当てた。
冷たい手のひらの感触が、心地いい…。俺が求め続けていた存在だ。
心をもう一度奪われるかのように、顔を真っ赤に染めながら、震える瞳でベルブを見つめる。ベルブの姿に釘付けになって、視線を逸らすことが出来ない。彼の真紅の瞳に吸い込まれるかのようだった。
「…ライラ。待っててくれたんだね」
「待ってたよ…。待たせ過ぎだ…」
「…待たせたのは何度でも謝るよ。」
ベルブはそこまで言った後、言葉を溜めるように唇を結ぶ。その表情は再び険しさを取り戻し、首を僅かに傾げた。
「でも、だからと言って…悪魔と2人きりで居たこと、許せないな。」と、ベルブが言葉を続ける。
たちまちにベルブの瞳が鋭く光っていて、俺を射抜く。冷酷ながらも美しいその表情に、ゾクッと背筋が震え、膝が震えて後ずさる。
あぁ…すごく冷たい目だ…。なんでだ、怖いのに…そんな目で見られたら…体が熱くなって…
「ベルブ…さっきのは浮気じゃないっ…、あんな悪魔とは何もしちゃいねぇ…」
「…へぇ。あの悪魔の匂いを…こんなに体に付けてるのに…?」
スンッ、と鼻を鳴らしながら、ベルブが1歩、距離を縮めてくる。思わず後退すると、ベッドに足が当たって、バランスを崩し、マットレスに尻もちをついた。
「っ…違う、本当に何もしてない…」
声が震える。確かに体を少し触られたり…あぁ、手の甲に唇を付けられたりしたけど…!
俺はアイツを拒否した…!
「…ライラ。俺のものだ…他の悪魔にも、人間にも…。誰にも渡さない…」
ベルブは低い声でそう言うと、ずんっ、と空間が沈むような、重い空気が肌にまとわりつく。
愛憎と執着が瞳に深く影を落としたような、ジットリとした目つきだ。その白く長い髪がフワッ、と毛先から四方へ膨らむように靡いた。
ベルブの雰囲気に異様な圧を感じ、額に冷や汗が流れた。なんだ…その姿はあまりにも綺麗だけど…流石に…少し、怖い…。
「ベルブ…落ち着け…俺はそもそも、お前以外の悪魔と交わるなんてゴメンだ、分かってるだろ…!」
「…そうだとしても。俺以外がライラに触れるなんて…許せない。あの悪魔に裸まで見せてる…。嫌だ…すごく、不快だ…」
ベルブはそう言って、ベッドに座り込んで動けない俺に覆い被さる。
「っ…」
顔が近い…。ドキドキしてしまう。
ベルブは…それは嫉妬なのか…?
俺に、そんなにも執着してる…?
「…」
ベルブは、俺とベルブの顔の間に、そっと人差し指を出した。俺は自然とその指を見つめる。
「なに…する気だ…」
ベルブの行動への戸惑いと、距離が近いことへの胸の高鳴りと…
混乱しているうちに、ベルブがその指先を、ピッ、と素早く軽く振り下ろした。
「なっ…!?」
その途端、俺の両手首が体の前に引き寄せられて、ギュッと何かに強く縛られる。ハッと手元を見ると、手首に黒い影のようなモヤがまとわりつき、まるで手錠をされているかのように動かせなくなった。
あぁ…マジかよ…縛られた…?
ベルブの行為に、羞恥心と興奮が込み上げる。まさか、縛られたまま…このまま好き勝手されるのか…?
「べ、ベルブ…っ…はぁ…っ…」
熱い吐息が漏れて、潤んだ瞳で媚びるように見上げる。
「…俺のものだって…もう一度、ライラに教えなきゃいけないね…」
「っ…ぁ…、駄目だ…こんなの…俺…っ…」
このままされたら、おかしくなっちまう…。何日も悶々として欲求不満だったこの体を、動けないままで、ベルブに犯されるなんて…
小さな喘ぎ声が混じるような荒い息遣いを繰り返しながら、逃げるように身を捩らせる。
ベルブは妖艶に笑うから、乱れていた心音がさらにドキッ!と急に跳ねた。
ベルブは再び、俺の前で人差し指をかざす。
つ、次は…何する気だ…。
恐怖と期待が混じりながら、溜め込んでいた欲望が膨れ上がるかのようだった。ベルブから逃げるように、ベッドの上で脚をもがいて後退しようとする。
「ベルブ…っ…」
「逃げるの…?じゃあ…こうしてみようかな…?」
ベルブは低い声でそう言うと、再び指先を軽く振った。
もがいていた足に突然異変が起こる。
「うぁ…っ…!?」
俺の脚は、両方とも膝を曲げた状態で固定され、股を大きく広げるような状態になった。脚を曲げて重なった太ももと脛 を、片足ずつ1つに纏めるように黒い影がまとわりつく。両脚の膝を伸ばすことができなくなってしまった。
さっきまで握っていたシーツが、かろうじて腹や下腹部を覆っているが…。
膝を曲げたままで片足ずつそれぞれが縛られ、局部を晒すように大股を開いたポーズから脚を動かせない。さらに手首も縛られている。完全に身動きができない…。
恥ずかしい…。なんて屈辱的な格好だ…。抵抗も許されない…。
こんな格好をベルブに見られてる…羞恥心が込み上げて、体が震える…すごく興奮してしまう…
「…これで逃げられないよ。分からせてあげようね、ライラが俺のものだってこと…」
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