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(悪魔side)
ライラは恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、腰を上げて俺の膝の上に跨る。
ライラは対面で座りながらするのが好きだ。どの体位が好みなのか問い正したら、ソレが1番好きなんだと自白した。
「いっぱいキスしながらしようか…」
俺の首や肩へ腕を巻き付けたライラに、妖しい微笑みを投げかける。
「…っ…、する…」
「あぁ…可愛いね。大好き…」
ライラの背中に手を添えて支えながら、片手で腰を掴んで下へ降ろす。
「ん"ぅっ!あ"ぁっ…♡ベルブぅ"…っ…おぐっ…当たって…っ♡」
「はぁ…っ…気持ちいいね…ライラ…。深くまで入ってるよ…」
「ぎもちぃ…っ♡…ベルブッ…んん"っ♡」
涙を溜めながら蕩けた表情を晒すライラに、深くキスをする。そのまま腰を動かせないように下へと押し付けながら、腹筋に力を込めて、弱点に昂りを当て続けたまま動きを止める。
「ん"っ…ぉ…♡…はぁ…っ…ぁ…♡…止めんの…、ヤダッ…て…!…ベル…ブっ…♡」
そう言ったライラの腰はヘコヘコと揺れて、俺のペニスをその内壁で淫らに扱こうとしている。
「自分で腰振ってて可愛いね…。」
「ん"っ…♡…ぉ"っ……♡…ぉ"っ…♡イ"グッ…♡ベル…ブ…っ、イ"っちゃう…っ、焦らされてんのに"っ…イッグ…♡」
ガクンっ、とライラの体が跳ねて、ビクンッビクンッと全身が痙攣する。グッと背中を後ろへ反らし、汗ばみながら引き攣った喉元に筋が浮かんでいる。
ライラの体を支えながら、反り返るその身体を引き寄せ、無防備な首筋にキスをした。
さらに後頭部へ手を回し、ライラの顔をこちらへ向けながら今度は唇にキスをする。しっかりと強く抱き合う。
喘ぎ声の止まらないその濡れた唇を塞ぎ、舌を絡める。深いキスと共に、下から何度も最奥を突き上げた。
ーーーーーーーーーーー
仕事に向かうライラとキスを交わし、ライラを送り出す。時間は正午前だ。
朝一から盛り上がってしまって、あの後もう一度求めようとしたら流石に怒られた。
でも、帰ったらまた、俺と体を重ねてくれると、ライラは恥ずかしそうにしながら約束をしてくれた。
どうしてもライラのことを直ぐに求めてしまう。ライラも同じだ。俺のことを拒否せず、寧ろ誘われるのを待っているかのようだった。
でもライラは時と場合を考え、自制する。俺との快楽に溺れ過ぎるような男ではなかった。肌を合わせれば大胆になるが、その辺に居る人間のようには堕落しない…。
俺はライラのそういう所も好きだ。
ライラがもし、与えられる快楽に簡単に堕ちて堕落してしまうようなら、俺もここまでライラに執着しなかったかもしれないと感じる。
流石、最強のエクソシストの精神力、と言ったところだろうか。
欲望に走る俺の悪魔の本能を制御する。ライラはまるで俺のストッパーのようだ。
「…今日は悪魔祓いじゃないって言ってたな。安心だ…」
ボソリと呟きながら、午後の柔らかな日差しが包むリビングに佇む。
椅子に座り、読みかけていた本を広げた…。しかし、数ページ捲ったところで物語は終わってしまった。
それは昨日、最後の数ページだけ残してしまっていて、読みかけになっていた本だった。その結末が気になるところだったが、ライラが帰ってきたから読むのを止めた本だ。
「返しておこう…」
スクッと立ち上がり、本を片手にライラの書斎へ向かう。勝手に本棚から拝借して読んでいた小説だ。
書斎のドアを開けると、目の前にはごちゃっ、と散らかった世界が広がる。
「片付けるように伝えたのに…。まだ片付けてない…」
ポツリと呟き、壁際の本棚へ向かった。埃っぽくて、煙草の吸殻の古い匂いが立ち込めている。
足元には悪魔にまつわる分厚い本が積み上げられていて、なんだか様々な言語で書かれたような、恐らく聖書も混じっている。
デスクが面した壁の上の方には、これみよがしに銀の十字架が梁 けられいる。アレには悪寒がするな…。
デスクの上も同様だ…。散らばった書類が乱雑に置かれているが、奥には様々なメダルやロザリオ、聖女の小さな彫刻、聖水の小瓶などが所狭しと並べられている。
「…ここは空気が悪い」
長居すると体調が悪くなりそうだ…。
モノによっては触ることができないから、ライラに整理してもらうしかない場所だ。
改めて部屋を見渡す。デスクの上に置かれた灰皿に吸殻が溢れるほど突き刺さっている様子や、ゴミ屑がゴミ箱から溢れている様、酒瓶まで転がっているのも確認できる。
いかにライラが荒んだ生活を送っていたかわかる場所だった。
「簡単に、触れられる物は片しておこうか…」
そう呟くと、ゴミ袋を何枚か用意する。右手をフッ、と宙に振ると、それぞれを振り分けながらゴミ袋へ。魔力を使って詰め込んだ。
ポルターガイストのようにゴミが宙を舞う。
片付いていく様子を見つめながら、ゴミを確認するように部屋を歩く。デスクの上に、本と本の間に挟まれたクシャクシャの塵紙を見て、これも要らんだろう、と魔力で引っ張り出す。
すると、積み重なる本のてっぺんが揺れて、パサリ、と一番上にあった本が地面へ落ちた。
「…聖書…ではない、よな…?」
それを拾おうとしたが、足元の本を確認するようにしゃがみ込む。じぃ、と本のカバーを見つめた。革製のその本はタイトルもなく、表紙もない。
「手帳か…」
安心したように手に取った。それを拾い上げると、手帳に挟まれていたらしき紙が、パラパラとフローリングに落ちる。
「あぁ、また…」
また何かが落ちた、と、再びしゃがむ。地面に舞い落ちた数枚の紙へ手を伸ばすが、ピク、とその手が止まる。
「…写真」
古びた写真だった。間違いなくライラだ、若い頃の…。
突然、胸が締め付けられるように苦しくなった。
その写真に写っている人物が、ライラと、ライラの妻と思われる女性と共に撮られているものだったからだ。
「この女が…」
写真に指を這わせる。なるほど綺麗な女性だ。容姿は褒めてやってもいい。しかし、ライラと隣合って、様になっている様子は腹立たしい。
この女は、ライラの伴侶としての役割を果たしてはいないのだ。ライラを孤独にさせている。
「…こんな女のどこがいい。俺は恋人だと認めて貰えないのに…。この女が…妻だと…?」
婚姻か。人間の婚姻や夫婦という文化に興味はなかった。しかし、それによってライラは、この女のものだと認められているのだろう…?
あぁ…駄目だ…
フツフツと臟 が煮えるような、黒くどろどろとした感情が腹の底に広がる…。
どす黒い感情を鎮めようとした。写真を伏せ、気にしないようにしようとした。
視線を剥がすようにひっくり返した写真の裏に、ライラの筆跡を見つける。
"最愛の人"
「…はっ。…違うだろ…。俺だよな…。」
ぼうっと写真を見ながら、考えるよりも先に体が動いていた…。
メラメラと写真から火柱が上がる。妻の姿だけを黒く焦がした。
「燃やしてやる…。ライラは…俺のもの…。」
うわ言のように呟きながら、他の写真も手に取った。これも…これもだ…。
ライラとあの女の写真だ…
ライラの笑顔が苦しい。幸せそうな顔だ…。
燃やせ…燃やせ…!
「ライラ…。俺とお前は…このまま過ごして、曖昧な関係のまま、いつか終わってしまうのか…?俺が悪魔だからか…?」
怒りに震えるような拳を、地面に叩きつける。
恨めしい、この女…。
コイツが居なければ…
いや、教会も邪魔だ…
エクソシストという職業も…
俺が悪魔だという事実でさえもそうだ…!
ライラを取り巻く柵が、ライラを俺から遠ざける…
ふと、あの蛇風情の悪魔、メドゥーサの言葉が蘇る。
"あの神父は裏切るぞ…"
ゾクッと背筋が凍る。
「ライラは裏切らない…。俺を選ぶ…」
そうだ、最後に、ライラは俺を選ぶのだ…
絶対に…!
ライラは俺を選ぶ。裏切らない。
「…そうだよな、…ライラ…?」
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