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(ライラside)
壁に押し付けられながら、ベルブの熱い昂りが直接尻の肉に押し付けられていた。
「うぅ…っ…はぁ…ぁ…」
乱れていく呼吸を止めようとしても叶わなくて、ベルブに何度も犯された穴が奴を求めるように卑猥にヒクつくのが自分でも分かる。
「や…めろ…、ベルブ…っ」
「どうして…?俺の事、好きだよね…?」
「あぅ…っ…好き…ぃ」
ベルブの低くて甘ったるい囁きに脳ミソまで溶かされていくようで、理性も何もかもブッ飛んでいくのを感じる。浅ましく腰を擦り付けて強請るように尻を突き出してしまう。
こんなの自分の意思じゃない…
熱く腫れ上がったように熱を持つアナルに、ベルブの大きなペニスがヒタリと押し当てられ、背筋からゾクゾクと興奮が駆け巡った。
あぁ…早く犯されたい…ベルブに…コイツのモノにされたくて、体が変になりそうだ…
あのさっきの赤い目だ…ベルブは俺になにかしやがった…この体の渦きも、熱も、呼吸も…滾るような欲情も、ベルブの魔術のせいだ。
そして今、確信したことがある。ベルブは初めて出会った時に、確かにこんな下劣な魔術を俺に使っていなかったのだ。
あの時、俺はどう抗ってもベルブに惹かれてしまっていたから、最初は汚い魔術でも俺に掛けているんだろうと疑っていた。
だけど俺は本当に…ベルブに、ただ最初から惹かれていただけだった。そしてベルブのことを知るほどに、もっと、体だけでなく心まで惹かれていったんだ。
ベルブの魔術にかかった今、実際にあの瞳の魔力に当てられれば、この感覚は理性を到底保てるものではなく、ただ本能のまま獣のように彼を求める状態になるのだと分かる。こんな魔術にかけられていたのだとしたら、俺はとっくにコイツに溺れて堕落していただろう。
「や、…めて…くれ…ベルブ…っ…おがしぐなる"…っ」
涙が出てきて、鼻をグズグズと鳴らした。嫌だ…ベルブにこんなふうに犯されるなんて、望んでない。
「俺を拒否しないで…」
ベルブは冷たい声でそう言って、後ろから俺の右脚の下に手を入れる。冷たい指がしっかりと俺の膝裏を掴んで上へと押し曲げた。壁に体重を預けるようにしながら、息を飲む…
ベルブのが入ってくる…っ
「ん"んっ♡おおぉ"…♡…ぁっ…♡…はぁ♡」
情けない声が漏れてガクガクと腰が震え、ペニスからドロドロと白濁が溢れ出す。与えられる強烈な快楽に全身が歓喜しているようだった。頭の中が真っ白になって、俺の中を深くまで蹂躙して埋め尽くすような圧倒的な質量に抗えない。
「声…っ、聞こえるからぁ…っ…許…し、てぇ"…っ」
「だーめ。ライラのイヤらしい雌声…聞いてもらおうね…?」
「や"だっ…!ベルブ…っ、マジで…いやだ…っ! 」
必死に体をよじろうとするが力も入らなくて、寧ろその逞しい剛直に貫かれた中を擦り付けるように腰を動かしてしまう。
「ぉ"っ…♡…ぁ♡…あ"ぁ♡」
汗ばんだ両手を壁につきながら、ヘコヘコと情けなく腰を振り続ける。ベルブの性器に奥まで貫かれる快楽と、ベルブの子種を求めるだけの存在になったかのように、何度も繰り返してしまう。
「はぁ…気持ちいいよ…俺のペニス、必死で扱いてくれてるね…?」
「違っ…ぁ"…イク…ッ…イっちゃう"ぅ…♡イクの止まらないぃ"…っ」
必死に声を抑えながらも、漏れていく声は止められない。ガグンッと激しく背中を反らせながらもう一度内壁が激しく痙攣する。
「…ベルブ…っ…嫌だ…もうっ…本当に…っ」
そのような口先だけでの抵抗も虚しく、ベルブは止まること無く、しかしどこか手加減するような腰使いで、物音を最小限にするかのように、荒い息を殺しながら何度も中をピストンした。
喘ぎ声の止まらない俺の口をその右手が塞ぐ。
「んぉ"…っ♡…ふぅっ…、…ん"ン"っ…♡」
「出すよ…ライラ…」
俺は拒否するように首を横に振る。なのに、ケツをベルブの方へ高く上げて媚びるように揺らしてしまう。死にものぐるいと言った様子で声を抑えようとしつつも漏れ出ていく淫らな自分の嬌声を聞きながら、熱いベルブの精液が全て注ぎ終わるのを待つしか無かった。
「んっ…おおぉ♡…ベルブぅ…ぎもちいい"っ…♡」
白目を剥いて涎を垂らしながら、ほとんど地に着いてないような左足がつま先までピンッと伸び切り、全身が激しく痙攣する。
ビュクビュクと長い射精を行うベルブの男根を必死に締め付けて、最後まで搾り取ろうと腸壁が蠢いた。
「はぁ…凄いね……いつも気持ちいいけど…今日は特に…絡みついてくるよ…」
ベルブはそう言って湿り気を帯びた熱い吐息を耳に吹きかけながら囁く。ビクッと肩を揺らして、その囁きにさえ敏感に体が反応してしまうのを感じる。
「っ…ベルブ…!」
涙や涎を拭いながら、必死で振り返りベルブを睨む。
「ライラ…俺なしじゃ…生きられないよね…?」
ベルブはそう言って、繋がったまま俺の体を優しく抱きしめてきた。絆されて、何も考えられなくなりそうだった。お前なしで生きられるかなんて、もちろんそんなはずが無い。
でも…俺は…
「ベルブ…っ、…俺は…」
息を荒くしながら、ベルブを見つめる。
「俺が悪いんだ…分かってる。俺が弱すぎるから…お前のことも…仕事や妻とのことも、同じように比べるなんてできない…。俺は最低だ…。でも…俺は……愛してる…お前のこと…!」
頭の中は与えられた快楽でクラクラしていた。それでも俺は何とか言葉を紡いだ。
自分の弱さを認め、ベルブのことは心から愛しているということを伝える他に、俺に手段は無い。
全てを捨ててベルブの手に堕ちることができたなら…
どんなに楽だろう。
でも俺は、エクソシストという仕事を捨てられない…。
正直言って…妻のことを愛しているかと聞かれたらそれは…ただ、聖職に縋るために、離婚ができないということだけだ。もう、妻を愛してなどいなかった。
俺が愛しているのはベルブだから。
「…ライラ」
ベルブはどこか暗く影った瞳で、静かに俺の名を呟いた。そして、ズルリとそのペニスを引き抜いた。
「ん"っ…」
思わず声が漏れて、体を震わせる。ベルブに注ぎ込まれた白濁がドロリと溢れて内股を伝った。その恥ずかしさで潤んだ瞳をベルブに向けながら、体を捻って壁に背を当てつつ、ベルブと向き合う。
「…ライラ。つまり、俺を選べないんだね…?」
ベルブはどこか落ち着いた声色でそう言って、首を僅かに傾げた。
「…ベルブ、違う、俺はベルブを選んでる。お前を愛してる…!」
熱心にベルブに伝えるが、その赤い瞳は静かにただ俺を見つめていた。俺を疑っているのか、信じられないのか、その瞳は少しも揺れることもなく。
しかし、俺の心はお前にある、それは偽りようの無い事実だった。ベルブへの想いを込めて俺の声色にも熱が籠る。
「ベルブ。俺は…こんなことを口にしてはいけない立場だが、お前には言うよ……。妻のことは、もう愛してない。愛してるのは……ベルブだけだ。エクソシストを辞めることはできないけど…俺は、ベルブだけを想ってる、お前を選んでるんだよ…!」
正直な胸の内を吐露した。エクソシストとしても聖職者としても、1人の男としても最低だ。だけど、ベルブの手だけは…離したくない。
すると、ベルブは、ふっ、と少し笑う。
そして、その深紅の瞳はどこか儚げに俺を見つめ返した。しかしすぐにその整った眉尻が吊り上がり、自嘲するような笑みを口元に滲ませた。
「…高貴な神父様と穢れた悪魔ではモノの考え方が違うらしい。俺を愛してると言っても、全てを捨てることはできないんだね。」
ベルブのその問いかけで浅くなった息をひゅっと飲み込む。俺が言葉に詰まっている数秒の間に、ベルブはまた直ぐに口を開いた。
「…ライラ。君が愛してると口にする度、俺の心は締め付けられるよ。腹の底は醜い悪魔のくせに、なぜか胸が痛い。俺は…お前の全部が欲しい…。」
そう呟いたベルブの言葉はため息混じりで、その表情は悲痛で切なく歪んでいた。どうしてだ、愛してるのは本心だ…。その言葉がお前を傷つけるなんて。
「ベルブ、俺は与えてる。全部捧げてる。神に背いてまでもお前のことを…」
「…神に背いてまでも…?いや、…違う。俺が欲しいのは、ライラの全てだ。何もかもを俺だけのものにしたい。」
ベルブはそう言い切ると、いつものようにその長い髪を片手で掻き上げた。言い返そうとする俺の言葉を遮るように再び小さなため息をついて、言葉を続けた。
「ライラ、こんなことをしてごめんね。ライラの気持ちを確かめたかったんだ…。」
「…いや、当然のことだ、俺が悪いんだから…」
「違う。ライラは悪くない…。ライラの全てを手に入れようと思った俺が……悪かったんだ…。」
ベルブはそう言うと、そっと体を離した。
触れ合っていた肌が遠ざかる途端に俺は青ざめて、前のめりになる。
「待て…、ベルブ…!」
「…ライラ。妻も教会も神でさえも――――、邪魔なモノを焼き払って、君を手に入れたい…。そんな気持ちが抑えられなくなっていくんだ。だからいつか、この哀れな悪魔を祓ってくれ…」
ベルブはそう言って微笑むと、聞き慣れたあの虫の羽音が鼓膜に響き始める。俺は慌てて、ベルブの腕を咄嗟に掴む。
「やめろ!行くなっ!ベルブ…!俺を捨てるな…っ」
プライドも何も無く、必死で縋るように涙を溜めて叫ぶ。
ベルブは冷たく笑った。
「…捨てられたのは…俺の方だ」
そんな言葉と共にベルブの体は闇の中へ消えていき、黒い霧となって霞んでいく。俺は空を掴んで拳を握りしめ、膝から崩れ落ちた。
「…ベルブ…嘘だろ…お願いだよ…俺を見捨てないでくれよ…」
鼻の奥がツンと熱くなって、次々と涙が溢れて落ちていく。冷たいフローリングに額を擦り付け、感情をぶつけるように拳を何度も打ち付けた。
俺はあの悪魔を愛してたのに、こんなことになってしまうなんて。
ベルブを失った今、俺の生きる意味はなんなんだ…?
孤独も弱い所も全部さらけ出せる相手を失って、こんな俺でも愛してくれると言ってくれた彼を失って…
エクソシストだ云々の前に、生きることさえ危うくなる気がした。
まるで、真っ暗な闇が目の前に降りてきて、広くて何も無い、底の知れない孤独の海に投げ出されたかのようだ。俺の未来を、絶望という二文字が覆っていく。
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