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第十九章:『蟲の知らせ』
【第十九章:蟲の知らせ】
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(ライラside)
ベルブは俺の腰へ腕を回したまま、寝室のドアをそっと開けた。黒を貴重にしたその部屋は重厚感があった……
…が、なんだ……?
ロマンチック…ってやつか?
非現実的な空間でありつつ…
でも、甘美で好色なムードも感じる…
「…魔界の王子の寝室か…。家具は全部黒かよ…」
少し燻んだ金で縁取られたテーブルランプが室内に点々と灯っていたが、それは心許無い明かりだった。アンティークな雰囲気を思わせる古びたランプシェードが傘のようにその光源を多い、ほとんど照明としての意味を成していないほどだ。
黒いベールのようなカーテンの隙間からは、魔界の夜空なのか、真っ赤な月明かりのような光が差し込んでいる。
そしてなんと言っても主張が強いのはベッドだ。中央には、いかにも悪の王子らしい、とでも言えるような、黒い布地の天蓋の付いた大きなベッドが置かれている。しかしそれは派手過ぎる印象を与えるものでは無く、クラシカルで、スッキリとしたシンプルさも兼ね合わせていた。
甘い雰囲気とやらを通り越して、妖しい雰囲気しか感じない寝室じゃねぇか…!
なんだか…とても、卑猥だ…
こんな…ボヤっとした明かりしかなくて、ベッドは無駄に豪華だし、月明かりは紅くて刺激的な色で…
どこからとも無く羞恥心が湧いてきて、どこに目を遣っていいのか分からず…。視線を泳がせながら身を縮める。
「…どうかな?俺の寝室、気に入ってくれた?」
不意に、ベルブの低い声が耳元で響く。
ドキッとして、直ぐ真横にいるコイツの顔をまともに見ることができない。
「……しゅ、趣味悪いぞ…」
「…そう?派手なのは嫌いだから…でもあまりにシンプルにすると、質素すぎると怒られるし。丁度いい塩梅にしたつもりなんだけどね。雰囲気はあるでしょう?」
そう呟いたベルブは徐に俺の腰から腕を離し、一人でベッドへと向かう。
「ふぅ…」と、まるで落ち着き払ったかの様な深いため息を漏らしながら、ベッドに横になった。
「…はぁ。今日は少し、疲れたね、ライラ」
ベルブはベッドに伏せたままそう呟く。それは返事を求めていないかのような、まるで独り言のようだった。
白く美しい髪は乱れて広がりながら、ゆっくりと頭を上げていく。上質な絹の糸のように束になって流れ落ちる髪の間から、ベルブの白い肌が露になる。整った目鼻立ちが、赤い月明かりと薄暗いランプの明かりに照らされ、影を落とす。その紅の瞳が静かに動き、熱っぽく俺を見つめ返し始めた。
黒いシーツの上で、その髪や肌、瞳が甘美なコントラストを生んでいる。黒いワイシャツを肘辺りまで捲った腕は筋肉質で、長い脚を無造作に下へ投げ出していた。
陶器のような艶を纏った白い肌と、服の上からでも分かるような肉体は彫刻のように美しく、その顔立ちの眉目秀麗さを一際際立たせるかのように見えて…
俺は目を離すことができず、息を飲む。
「…ライラ。甘えていい…?」
ベルブが掠れた声でそんなことを呟くから、ドキリと心臓が荒ぶって乱れた。
顔も体も……良すぎるだろ…
しかも、魔界の王子で…これから王になるっていう、こんな悪魔に…魅せられて…
エクソシストという仕事を辞めたことも、妻と別れたことも、教会や神を捨ててしまったことも……全部良かったと思えてしまう。
死後、神のお導きで、天界で永遠の安息を手に入れられる。そう信じていた魂さえも、この悪魔に与えてしまった。
何もかも差し出したい、まだ、与えられるものがあるのならば…
「…ベルブ」
「うん…?ライラ、傍に来て…」
甘えたような声でそう言われて、俺はその妖しい誘いへと惹き寄せられていくかのように、踏み出していく。
あぁ…
なんだっけ…
子供のこと、どうするか決めなきゃなんねぇのに…
とりあえず、ベルブが俺に甘えたいって言ってるから…
もう、体が熱くて、自然と呼吸が乱れてしまう。震える膝で、ベッドに腰かける。思ったよりも柔らかな感触でマットレスが沈む。布が擦れる音と、俺の息遣いが異様に耳に残る。
横向きに寝そべっているベルブを見下ろす。乱れても美しく、芸術のように流れ落ちている白い髪の間から、その赤い瞳が俺を見上げた。
「ライラ、キスしてほしい…」
「っ…♡」
ズルい悪魔だ…
そんなに、掠れた、甘ったるい声で言われたら…
俺は顔を真っ赤にさせながら上半身を屈め、ベルブに唇を近づける。
ゆっくりと唇を重ねて、そっとキスを落とした。
「ん……」
ベルブが色っぽく溜息を漏らすから、さらに心臓が早鐘を打つ。
話し合わないと…
でも…流されてしまいそうで…
けど、早く……さっきの続き…シてぇ……
なんとか理性を繋ぎ止めるように、重なり合う唇を一度、離そうとした…
しかし、ベルブの右手が即座に俺の後頭部へと回され、上半身を曲げた不安定な体勢から、体を離せなくなる。
「ンッ…!」
そのままベルブの舌が唇を押し割って、咥内へと入ってきた…絡め取るような動きで舌を捕まえられて、体を支えるように付いていた手でシーツを握りしめる。
「んんっ……!?」
プチ、プチ、と何かが外れる小さな音がした。ギュッと瞑ってしまっていた瞳を開けて、ベルブに押さえられ動かせない首の角度のまま、視線だけを音の方へ移す。
見えない…
何が起こってるのか見えねぇけど…
俺のシャツのボタンが外されてる…?
ベルブの右手は俺の後頭部に添えられていた、そしてもう片方の手はベルブの体の下にあって、俺の視界に入っている。両手はどちらにも俺のシャツに触れていないのに。しかし、その左手の人差し指は、何かを操るように動いていた。
間違いない…
魔術で、服を脱がそうとしてやがる……!
「…はぁ…ベルブ…っ…」
次々とワイシャツのボタンが外されて、外気の冷たい空気が肌に触れていく。唇を離されて深く呼吸をしながら、潤んだ瞳でベルブを見つめた。
体を斜めにこちらへと傾けたベルブは、その両腕で俺の二の腕を掴む。
「…ライラ、欲しくなってきた…?俺のこと…」
「待て…、ベルブ……話、が…ァッ!?♡」
左胸に強烈な刺激が走り、思わず声が裏返って甘い悲鳴を上げていた。ビクンッと背中を反らせて、上半身が反射的に逃げるように身を引こうとする…
…しかし、ガッシリとベルブに両腕を掴まれていて動けない。
ハッと視線を向けると、ベルブの臀部から伸びた黒い尻尾の先が、俺の左乳首をツンツンと突いている。尖った黒い尻尾の先がその場所を弄ぶように刺激する。
「ひ、ぁっ…♡…そこぉ…ッ……駄目…ッ♡」
一瞬のうちに、自分でも驚くほどの甘い声が喉から漏れ出てしまう。
恥ずかしい…
出会った頃から、ベルブに執拗に触られ続けて…
左が特に敏感になっちまって…
ガクンと腰が跳ねる。
もう無理だ…
ソコ触られたら……ケツが疼いて…ッ♡
しかも、そんな…尻尾で弄ばれるなんて……♡
「も…っと…♡…ベルブ…、もっと…」
ベルブに媚びるように、腰が淫らに揺れてしまう。だらしなく蕩けてしまった顔をベルブに向けて、喘ぐ唇の端から零れ落ちそうな唾液さえも気に留められない…
その時、ベルブが俺の口元を見て、ニヤリと妖しく微笑む。
「…いいね、その契約印…。ライラが喘ぐと……よく見えるね…」
あぁ、そうだった…♡
ベルブとの契約印……俺の、舌に……
羞恥心を煽られて恥ずかしいのに、同時に見られていることへの快感が高まってしまう。
あぁ、もう駄目だ…
頭ん中がおかしくなって、体が疼いて…ベルブのことしか考えられん……
「ぁ……♡」
左胸への刺激が焦らすように止められて、ベルブの右手が俺の頬に添えられていた。その親指が俺の口へと押し込まれ、唾液が溢れて濡れた舌をそっと押さえてくる。
「…綺麗だね。俺の契約印…こんな場所に。凄く気に入ったよ…」
恍惚とした微笑みでそう言ったベルブの赤い瞳は情熱的に輝き、俺だけを映し出している…。その瞳は俺の目線と口元へと行き来を繰り返し、飽きることがないかのように俺を見つめ続けていた。
「ンッ…♡」
その時、スルリ、と背後に違和感を感じ、ビクッと体が小さく跳ねる。
ベルブの尻尾が俺の腰元へと伸びてきて、器用にその先端が服の中へと滑り込む。蛇のような動きでそれは履い回って、俺の尻肉を撫で上げた。
「ぁ…ッ♡…はぁ…♡」
ベルブに舌を押さえられ、開きっぱなしになった口から喘ぎ声が漏れ、涎が垂れていった。
「ひ、っ…ぁ…♡」
その尻尾が畝るように動きながら目指す先が分かり、ギュッと下半身に力が入る。
「ぁあッ…!♡」
ゴムのように肌に吸い付く尻尾の感触が、俺の後孔を撫で上げた。思わず悲鳴のような嬌声が漏れてしまう…
駄目だ、声……我慢できねぇ…
聞かれたら恥ずかしいのに……っ
しかも、口を開けられたままで、舌を動かせなくて…喋れない……
「ン"ッ……♡…や"…、らぁ…っ…へる…ふっ…♡」
口を十分に動かせないまま抗議したが、それも虚しく、アナルへその尻尾が強く押し当てられ、中へと入り込もうとしていた。
魔術でもまた使われたのか、その尻尾はヌルリと湿り気を帯びて、抵抗なく体内へ受け入れてしまう。
「んぉ…♡…ぁ…ぅっ♡」
「ライラの中……俺の尻尾も悦んで受け入れてくれるんだね…」
ベルブはそう言って、力も抜けて抵抗も出来ない俺を抱き寄せた。やっと舌を解放され、ギュッとベルブにしがみつきながら、震える唇を動かす。
「ベルブ…っ…声…漏れちまうぅ……♡ケツ…もっと……尻尾でも犯してッ…♡」
「イヤらしいね…。ライラ…。そんなオネダリ、どこで覚えたの…?」
「うるせ、ぇ…っ♡…早く…もっと……俺の事ッ……ぐちゃぐちゃに…シて…っ」
鳴き声混じりに懇願すると、抱きしめられたまま、体内に入った尻尾が蠢き、的確に俺の弱点を刺激する。
「あ"ぁ…♡…ぎもち…ぃッ…♡尻尾でケツ穴犯されでる"ッ…♡イクッ…イクゥッ…♡」
声を我慢しようと思っていた薄膜の理性さえ破られて、あられもない声が漏れてしまう。
頭の中が真っ白になって、込み上げてきた快楽で体が痙攣した。
必死に音量を抑えようとした俺を褒めてくれ…
でも……もっと…欲しい…
「ライラ…声抑えてよ…?他の悪魔に聞かれたくないな…」
ベルブは興奮を隠せないように息を上げてそう呟く。
「無理ッ…♡…だろ……っ、こんなのっ……気持ち良すぎて……おがしぐなるっ♡」
涙で潤む視界の中でベルブを見つめながら、下半身はさらに刺激を求め、奴の尻尾を締めつけようとして勝手に筋肉が強ばる。
「…っ…可愛いね。…我慢できないや……もっとライラのイヤらしいところ見たいな。人間界に行こうか…」
ベルブのその言葉に、キュンっと後ろの穴を絞めてしまいながら顔をあげる。
「はっ……?♡移動できんのか…っ?」
「できるよ……思いっきり喘ぎたいんでしょ、ライラ…?」
「うぅ……。違う、そんなんじゃ……気が散るからで…♡」
……いや本当は、違う…くない…けど…。
恥ずかしくてそんなこと…!
「嘘つき。ほら、言ってよ。俺に犯されていっぱい喘ぎたいって……」
「っ…♡…嫌だ、恥ずかしいだろうが……」
「恥ずかしくて言えない…?でもライラの声は大きいし、絶対漏れちゃうから…。言えないなら、ココでやめようかな……?」
また…こんなに恥ずかしい思いをさせられて……♡
なのに、体はどんどん反応して、我慢できずに両脚を擦り付けるようにして腰が動いてしまう…
焦らされて、意地悪なことをされてるのに…
それさえも何故か、甘く痺れるような快楽になってしまう…
もう、なんとでもなれ…!
言ってやる…!!
「人間界……連れてけ…っ♡お前に犯されてっ……いっぱい喘ぎたいんだよ…!」
ベルブの纏った黒いシャツをギュッと握り締め、羞恥心に震えながらそう言い切った。
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