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(ライラside)
「だから!真面目に答えろよ…。好きな食いもんは!」
「うーん、ライラ」
「〜っ!お前な…!からかってんのか…!」
この悪魔…!なんでも答えるって言ったくせに…何を質問しても、俺のことばっかり…!
好きな食べ物が俺ってどういう意味だよ…。どうせまた録でもねぇ下世話な思考を…
顔を真っ赤にさせながら、背後のベルブを睨みつける。
「もういい、趣味は!あんのかよ…」
「そうだな…」
ベルブは俺の背後から腕を伸ばし、その身を屈めた状態だ。俺を抱きしめ続けながら、少し考えるように首を横に傾けた。その長い髪が俺の肩へと垂れて触れる。
ベルブの視線はチラリとテーブルの上のチェスを見た。
やっとまともな答えが返ってきそうだ……!
チェスが趣味か?
しかし、その赤い瞳は直ぐに悪戯な色を滲ませ、薄く細められる。
「…ライラかな」
「っ…馬鹿野郎…!また…!だいたい俺が趣味ってどういう意味だよ…。こっちはマジで知りたいのに…… 」
この悪魔…。俺に自分のことを話す気がないのか…?
少し悲しくなって、顔を伏せる。
「…ホントのことだもの。ライラと過ごす時間が俺の唯一の楽しみ」
そんな返事が帰ってくると思わず俺はドキッとして、顔がさらに熱くなっていく。 嬉しい…。だけど、恥ずかしい…!
耐えられなくなって、俺は慌てて次の質問を口走る。
「……と、歳は…!いくつだよ…」
すると、ベルブは俺の耳元で、ふふ、と小さく笑った。
「ライラと同い歳…」
は?…絶対嘘だろ。なんだよその笑いは。
…いや、本当か?
見た目は同じくらいに見えなくもないし、寧ろ若く見える。20代半ばくらいか…?でも色気があるせいで、大人びて見える若者のような…
「…本当に同い歳か…?」と、目を見開いて尋ねると、ベルブは困ったようにクスッと笑った。その綺麗な笑顔に射抜かれて、心臓がさらに早鐘を打つ…。
「その驚きは?もっと俺が老けて見えた?それとも若く見えたから?」
「…っ…若くも見えるし…同じくらいにも見えるし…」
「…そう?まぁ…俺、200は軽く超えてる」
「に、にひゃ…く…!」
「…悪魔だもの」
あぁ、そりゃそうだ…
悪魔が普通の寿命してる訳ねぇよな…!?
同じ年齢かも、だなんて信じかけた俺って阿呆か…
額に手を当てながら自分とこの悪魔の両方に対して呆れていると、突然ベルブが俺の顎を掴む。
「なっ…」
驚く言葉さえも遮られ、強引に奴の方を振り返るように顔を動かされてしまう。ハッと息を飲んで、その悪魔を見上げた。
「ライラが産まれる前から俺は存在してた。だけど俺はね……こんなに誰かを想ったのは初めてなんだ。人間なんて本気で好きになると思ってもみなかった。初めてなんだ。信じてもらえるか、分からないけど……」
そう言ったベルブの瞳は真っ直ぐに俺を見つめていて……真紅に輝くその瞳に吸い込まれるかのようだった。
俺はただ、時が止まったかのように、奴を見つめ返す。
初めて誰かを好きになったという奴の話が、本当かどうかなんて……俺には分かるはずもない。コイツは200年も存在していたんだ、もしかしたら、俺じゃない相手と、過去に身を焦がすほどの恋を経験したことがあってもおかしくない。
嘘か本当かなんて、知る由もない…。
悪魔なら、そのような歯の浮くような甘い台詞だって、呼吸をするかように囁くことができるのかもしれない……
ただ、俺は、その言葉を受けて、嬉しかった。ベルブがそう言うなら、俺はこの悪魔が初めて愛した存在なのだと、疑わず信じようと思った。
「……嬉しいよ。俺は……ベルブの初めてなんだな…」
感情が昂って、言葉に詰まり、声が震えた。目頭が熱くなる…。潤んだ瞳で、奴を見つめ返した。
「…そう、初めてだよ。そして、最後の人。俺が心から愛するのは、これからもずっと、ライラだけ…」
ベルブはそう言って、ふわりと優しく微笑む。
ベルブのその気持ちが俺の胸を熱くさせる。
だけど、俺は人間だ。いつか、ベルブより先に……。
そう考えると、この胸はギュッと切なく締め付けられた。
「なぁ……。ベルブ…。悪魔って…、どれくらい生きるのか…?」
「……俺くらい魔力があれば、800から長くて1000年くらいは」
その返事を聞いて、俺は奴のシャツをしっかりと握りしめる。誰かを愛するのは、俺が初めてで最後だなんて。
本当は……死ぬほど嬉しい。
その言葉どおり、ずっと俺だけを愛してほしい……もし、俺が数十年後に、先に居なくなったとしても。
だけどそれから何100年先もずっと、この世を去った俺の存在がこの悪魔を縛り続けるなんて、あまりに酷い話だ。
「…お前は、人間とは寿命が全く違うんだ。お前が1人になっちまった後は、また誰かを愛してやれよ。居なくなった俺を思い続けて、その後の何100年もを無駄にするなんてのは勿体ねぇ。俺は、たまに思い出してくれるだけでいいから……」
ベルブの白磁のような、1点のくすみも無い頬に手を当てて……無理に笑顔を作って、優しく微笑む。
するとベルブは眉を顰め、ギリっと奥歯を噛んだ。
「…無理だよ。ライラ以上に誰かを愛するなんて、できっこない。そんなことを想像しただけで反吐が出る…。俺はずっと……ライラだけのものだから」
ベルブはそう言うと、その身をさらに屈め、俺の唇へと深いキスを落とす。
「んっ……」
情熱的なその口付けで息が上がる。眉根を寄せて、ベルブにしがみつく。ベルブの冷たい手が、俺の服の上からこの体の輪郭を確かめるかのように這い回る。
「はぁ……♡…ンンッ……ぅ……」
貪るように重ねられる唇の端から唾液が垂れて、背後のベルブの方に向かって顔を上げていた顎を伝って垂れていく。
ベルブからの深い愛情を感じて、魂が打ち震えるように歓喜している。嬉しくて…涙が溢れそうになる…。
熱くなったこの体をベルブに預けたい…。もっと愛されたい…。
だが、煌々と燃える暖炉の傍で……明るくて…恥ずかしい…。せめて…もう一度寝室に…
「っ…待……て…♡…ベル、ブッ………こんな、場所で……っ」
「ライラ以上は俺にとって居なくていいんだよ…。分かってもらえるまで……離さないからね…」
ーーーーーーーーーーー
暖炉のあるこの広い空間は、この城ではリビングのような場所だ。石造りの古めかしい床には、なんだか高級そうな絨毯が引かれているのに……
ドピュッ…と溢れた薄い白濁がその表面を濡らして染みを作り、小さな水溜まりのように溜まって染み込んでいく。
「ぁ"っ……♡よ、汚れ…てる"っ…♡ご、め……っ」
「いいよ…あとですぐに綺麗にできる…。俺に集中して……」
四つん這いになった俺の背後から、ベルブが情熱的な律動を刻む。バチュッ、バチュンッ…!と激しく肌と結合部が重なる音が響いた。
全身に力も入らなくなって、両腕を前に伸ばしながら絨毯へと顔を擦り付けている。ベルブの指が俺の腰骨をしっかりと掴み、尻だけはベルブの方へ高く上げられていた。
「っアァ"…♡…おぐ…っ…ら、め"ぇぇ…っ♡おがしぐッ…なる"ぅッ…!」
ベルブの凶暴なペニスが俺の腹の奥で暴れ回って、的確に敏感な場所を抉るようにピストンされ続ける。再び頭の中が真っ白になって、全身に強烈な快楽が駆け抜ける。
「ひぐぅッ!…ン"ッッ…♡あ"ぁぁぁっ♡♡」
ビクンビクンと激しく体が痙攣して、自分のものとは思えないほどの悩ましい喘ぎ声上げながら果てていく。腹の中でベルブのペニスが脈打って、ベルブしか知らない俺の1番奥で射精されている。
「ぁ"…♡…ベル、ブぅ…っ♡…好き……っ愛…してるッ…♡」
潤んだ瞳で虚ろになりながら、ベルブのペニスを咥えた穴で必死に締め付ける。呼吸を乱したベルブが背後から体を密着させて抱き締めてくれる…。
ベルブのハァハァと荒い呼吸が耳や首筋にかかって、その刺激にさえ体が敏感に反応して震えた。
「…ライラ……もう1回…。いいよね…?」
「っ……ぅ…、も…ぉ……イキ過ぎてッ……♡…ヘンに…なりそ……っで…」
「…あぁ、可愛い…。ヘンになっていいでしょ、俺が面倒見てあげるからね。……愛してるよ」
その言葉に俺の体はビクッと反応して、勝手にアナルがギュウッと締まってしまう。
もっと、もっと愛されたい…ベルブに……
突然体をひっくり返されて、俺は涙や涎で塗れた顔を奴に晒すことになる…。頬を真っ赤に染め上げながら、体液に塗れた顔を覗かれて…恥ずかしいのに、なにも抵抗できない…。全身から力が抜けて、ベルブの思うままに求められてしまう。
俺の汗で濡れた両足の太ももや膝裏を捕まれてしまい、股を大きく開くようにさせられる。
「あぅ…っ♡」
羞恥心が込み上げて、このだらしなく蕩けた顔も、ベルブと繋がった場所も、隠したいのに、体も動かない…。熱烈な視線を俺へ向けてくるベルブから、目を離せない…。
「はぁっ♡…ベル、ブぅッ…、俺に……キス…っ…して…♡ 」
隠れる場所があるなら逃げ込みたいくらいに甘い声で強請ってしまって、もう……どうしようも無いくらいに恥ずかしい。だけどベルブはそんな俺を見て、さらにその瞳をギラギラと輝かせながら妖しく微笑み、上半身を屈めて覆いかぶさってくる。
ベルブは俺の要求どおりに唇を重ねてくれて、さきほどよりももっと獰猛な腰使いで俺を愛し始めた。
ーーーーー翌朝ーーーーー
「ライラ、行くよ!早く」
ベルブの声が俺を呼んでいる。
「あぁ!ちょっと待ってくれ!すぐ行くから…!」と、返しながら…。俺は古城の外に置かれていた木箱の中を急いで漁る。
引越しの際に、俺が捨てたエクソシストの道具の一色だ。ゴミ捨て場に持っていくか、燃やすか、どちらかの方法で破棄しようと思いつつ、一旦城の外に出したものだった。
ガサゴソとモノを探して、見つけ出したその小さなケースを手に取り、コートの胸ポケットに入れた。木箱に再び蓋をして、慌てながら城の門の方へ走る。
「悪い、待たせたな」
門の外にあるスペースに停めていた車の前で、ベルブが腕を組んで立っていた。
「どうしたの、忘れ物?」
ベルブは心配そうに俺を見る。
「いいや、ちょっとな…。さ、行こうか。待ち合わせ場所は……確か郊外の町の先にある、山道の入口だったな。目印は、古びた赤い風車小屋だっけか…」
「そうだね、司祭はそう言ってたよ」
「よし、俺が運転するよ。乗ってくれ、ベルブ」
そう言ってベルブに微笑む。運転席に腰掛けると、その隣の助手席へとベルブも乗り込んだ。
「あっ、ライラ。忘れ物が…」と、ベルブが隣で言うから、シートベルトを絞めていた手を止めて奴の方を向く。お前も何か忘れ物かよ、と、思いながら。
「ん?どうした?取ってこいよ」
そう返した瞬間に。ベルブはスっと俺の方に身を乗り出して、そっと唇を重ねてきた。
「――ンっ……!?」
突然のことに驚きつつ、頬を赤く染めて目を見開く。視線の先でベルブが直ぐに唇を離すと、フフ、と悪戯に笑った…。
「ほら、忘れモノ」
「っ…!…ば、ばか……急にすんなよ…」
恥ずかしくて目を逸らしながら、そそくさと車にキーを差し込む。エンジンを掛けながら再びチラッとベルブを見ると、奴は優しく笑っていた。
「さっさと終わらせて、2人で過ごそうね。ライラのためだから、俺もちゃんと協力するよ」
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