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4 (ライラside) ちゃぽん、と湯が跳ねて、熱い水面が揺れる。風呂場の白い蒸気に包まれながら、石造りの湯船は両脚を伸ばしきっても余るほど広い。 「デカっ…」と言うのが、俺の一言目の感想。城の風呂場……いや、これは最早、浴場じゃないか。 分身のベルブが丁寧に入浴剤まで入れてくれたのか、白濁した湯船から漂うのは甘い香りだ。 身体や頭を洗い終わって、手脚を伸ばしながら湯船に浸かっている。俺はこの大きすぎる風呂を独占しているわけだ。角張った黒く大きな石が隙間なく埋められた縁が、溢れた湯で黒々と鮮明に濡れていた。 「ったく、結局1人じゃねぇか…」 一緒に風呂に入るだとか言っていたベルブは、突然、魔界からの頼りが来たとかで、俺に先に風呂へ入っててくれと言ってきた。 だから仕方なく、1人寂しく入浴している。 ベルブは要件だけ聞いたら直ぐにこちらに来ると言っていたが、もし長引くようならここで待っていると逆上せそうだな。 熱めの湯は今日1日歩き回った身体を温めてくれて、心地よくて目を閉じる。暫く浸かると額に汗が滲むようで、温まり過ぎる前に出ようかという考えになる。 ベルブを待つことを諦め始めている俺は、湯船に身体をグッタリと預けて湯けむりが舞う天井をぼうっと見上げ…。もう少し経ったら上がろう…、と思い立ったその時。 ガラガラッ!と突然浴室のドアが開いて、俺はハッと視線をそちらへ向ける。 「ライラ、ここに居たんだ」と、いう言葉と共に、腰にタオルを巻いたベルブが堂々とそこに立っていた。 ベルブの白い肌と美しい筋肉の凹凸はまるで彫刻のようだ。その姿に見惚れるように息を呑みながら、顔がカッと赤くなる。 「お、おう……ゆっくり浸かりながら待ってたんだ…。もう、要件は済んだのか…?」 浴槽の(へり)に凭れていた上半身を起こしながら、ベルブに尋ねる。 「まぁね」と、短く返事を返したベルブは、優雅に俺の方へと歩いてくる。その右肘を上にあげながら、奴の長く白い髪を後ろで束にして纏めるような仕草をしつつ、更に左手を束ねた髪に添える。 魔術で髪を団子のように束ねたのか、左右から顔に落ちてくる髪は無く……ベルブの整った顔立ちがより際立って見えた。 「…そ、そうか…。魔界からの連絡は平気だったのか?」 ベルブのあまりに綺麗な顔立ちに見蕩れてしまっていたが、そのことを思い出してそう尋ねる。もう目の前まで来ているベルブは俺の隣へと長い脚を伸ばして、湯に浸かった。綺麗な横顔で少し首を傾げながら座る。 「…あぁ、大丈夫だよ。気にしないで、後で伝える」 ベルブはそう言って返事を曖昧にするから、俺は魔界で何かあったのではないかと気になって、眉を顰めた。 「本当か?大丈夫なんだろうな?」 「うん、平気。それより、もう身体洗っちゃったの?」 「お、おう…もう俺は…」 「そっか、残念。背中を流してあげたかったけど」 ベルブはそう言って困ったように微笑む。細められた赤い瞳の奥に吸い込まれそうなほど惹き付けられて、唇が震えた。湯に濡れたベルブの白い首筋や鎖骨のラインが艶めかしくも綺麗で、ゴクッと息を飲む。 そうだ…。 俺がベルブの背中を流そうと思ってたんだった。 「…ベルブ、……お、俺が、お前の背中流したい…」 ドキドキする。でも何とか…照れ臭くなってしまいながらもそう伝えると、ベルブは途端に嬉しそうに頬を緩める。 「いいの?是非お願いしようかな」と、ベルブが答えてくれるから、俺は意気込みながらザバッと立ち上がる。 「よし、任せてくれ…!」 あ、やべ…。 気合い入りすぎか…? この下心を隠そうとしていたが到底無理だった。だが、普段は恥ずかしくてなかなか俺から触れられないから、これはチャンスだ。 「…可愛い」と、背後からベルブの小さな呟きが耳に入ってくる。まだ湯船に座っているままのベルブから聞こえてきたその声に、立ち上がった背中を向けたまま、この顔を一気に赤く染め上げた。 俺の下心が見透かされているようで恥ずかしい… 俺は羞恥心で数秒硬直していたが、なんだか背後から熱い視線を感じてゾクッとする。ハッと振り返れば、ベルブはニコニコと笑いながら……奴の赤い瞳は俺のケツをジィィっと見ていた…! 「ば、馬鹿…!見るな…!」 胸元まで赤く染まるほど恥ずかしさを募らせながら、慌てて尻を両手で隠して、濁った湯船へしゃがみ込む。ザプンッ!と激しく水音が響いて湯が飛び散った。 「どうして?目の前にあったんだもの、見るなって言われる方が難しい」 ベルブは背後からそんなことを呟き、ザパザパと新たな水音を立てる。ベルブの体がしゃがんでいる俺を追い越して、湯船を出て行ってしまう。 俺も慌てて奴を追いかけ、椅子に腰掛けたベルブの背中に近寄った。近くにあった他の椅子へと手を伸ばし、その背中の前に俺も座る。目の前には美しく筋肉質な広い背中と、髪を結んでいるお陰で普段は見えない白い(うなじ)が見えている。 な、なんだ…凄く…セクシー… ドキッとしながら、奴の首筋や背中に見とれていたが…。 「ライラの手で洗ってくれるんだよね?」と、目の前から奴の声がして、ハッと頷く。 「え?あ、あぁ。手で、洗う…」 「じゃあ、お願いね?」 ボディソープを手渡されて、俺はそれを両手を擦り合わせて泡立てる。 手で洗うって… 実質触り放題か…? そんなことを考えながら、ベルブの背後で顔を赤くさせ……。心臓の高鳴りが、この鼓膜の奥で響いている。あぁ、ドキドキする…。だが、別に、ただ、体を洗うだけなのであって…。 いかん、真面目に…! 「じゃぁ……洗うぞ…」 冷静なフリをしながら、そっと背中に両手を触れる。ベルブの肌と俺の手のひらの間でヌルヌルと泡が滑り、きめ細かで滑らかな奴の肌の感触に改めて驚く。 き、気持ちいい…。ベルブの肌……マジで、陶器みたいで…… 泡を背中へと塗り広げる。 広い背中だ…。俺のと違って、傷もねぇし…。綺麗で…。この感触、安心する…。 だが……その場所以外には、手を伸ばす勇気が……ねぇ…! 背中だけじゃなくて、もっと……その、胸板とか…腹筋とかも…触ってみたい……けど…。 む、無理だ、恥ずかしい。 いや、恥ずかしがらなくても、体を洗ってるんだぞ!? 胸の方とか?腰とか?脚とか…! 全身を洗ってやるのは別に悪いことをしてるワケじゃねぇし… …などと葛藤しながら、俺は何度も同じ場所に泡を塗りつけている。 その時、「…ねぇ?」と、突然話しかけられて、ギクッと肩を震わせる。 「あっ…、なんだ?こそばゆかったか…?」 妙な手付きで触ってしまっていただろうかと背後で慌てていると、ベルブは首を僅かに捻ってこちらに視線を向ける。 「うぅん、心地いい。でも、背中だけ?もっと…」と、ベルブが言った後、奴は腰を浮かせてその体を捻り… 俺が呼吸も忘れて目を見開いている間に、クルッとこちらを向いて椅子に座る。 「べ、ベルブ……っ」 「…うん?表のほうも洗ってよ、ね?」 ベルブはそう言って目を細めて妖しく微笑み、俺の両腕をどちらもグッと握ってくる。 圧倒的に綺麗な顔面と、美しい肉体が目の前にあって、俺は目を丸く見開きながら……この呼吸は簡単に乱れてしまう。 目のやり場に困って目線を下げると、ベルブが腰に巻いていたタオルが異様な程に膨らんでるのが目に入って、思わず声が出そうになる。 コ、コイツ…!勃起して…! しかしそんなことを気に留められる間も無く、ベルブが強引に俺の腕をその体の方へグイグイと引っ張ってくる。 「ぁ、うっ……ベル、ブ…!ま、待っ…て…くれっ…!」 羞恥心と興奮とで混乱し、咄嗟に身を引こうとする。しかし強く引っ張られたこの両手は、ペチャッと泡を跳ねさせながら、奴の厚い胸板や腹筋に押し当てられてしまっていた。 「ンッ……」 はっ…?は?! なんだよその声はッ…! 「〜っ!!」 俺の手が触れた途端に奴が漏らした、ワザとらしいその甘い吐息にドキッとして、顔面が真っ赤に染まって視界が潤む。 ど、どこ見ていいかも分からねえし…! 両手は掴まれて動かせない、顔も隠せない…! 奴の綺麗な筋肉に両手が触れてて… アワアワと混乱して、どうしていいか分からなくて…! ベルブの動かすまま、俺の両手のひらは奴の体を撫で回すように操られる。 ヌルヌルと滑って… 艶やかなその白い肌は不思議な引力によって、官能的にこの指に吸い付くようだった。弾力のある筋肉が俺の手を押し返してくる。その凹凸を確かめるように指が滑り、泡を塗り広げていく。 「ライラの手、気持ちいいね…。どこでも触れて?」 妖しく笑うベルブがそう言って、俺の左手の指先が奴の胸の突起を掠めるから、何故か俺の方がピクッと肩を震わせて声を漏らしそうになる。 「ここも…ね?」 ベルブはそう言って、膝を曲げていた長い脚を左右へ開き……力の抜けた俺の両手を、しなやかで筋肉質な太腿へピッタリと押し当てる。どこまでも、くすみの無く美しい肌が続いていて…… ふと気づけば、俺の手はどんどんその脚を上がっていく。股間を覆いながら両腿に垂れたタオルの方へ、もっとその先へと、手を伸ばしてしまう。 「はぁ……はぁ……、ぁ……」 思わず息を荒くしながら…。欲望のまま、この指先は、布と肌の間へと向かう。慎重に、ゆっくりと侵入していく―― 俺の手の感触のせいだろうか。ベルブのその脚が、ピクッと震えた。それを見て俺は、さらに興奮してしまう。 濡れたタオルがベルブの肌に張り付いていて… もう、その場所がどんなふうになってしまっているのか、タオルに覆われていてもハッキリと分かるほどに、熱の形を浮かび上がらせている…。 こんなに…ガチガチに勃起させてやがる…… 俺が触れたせいで…?俺と一緒に風呂に入ってるから…? コイツが俺で興奮してくれると、う、嬉しい…。 「…っ…ベルブ……。これ…邪魔……だろ…」 顔を真っ赤にさせつつ、もうこの渇望を抑えきれない。甘えるような瞳を奴に向けてしまいながら、そっと…ベルブの腰を覆うタオルに手をかける。 「あぁ…そうかも…。外してくれる…?」 ベルブは低い声でそう言って、クスッと意地悪く笑う。その笑みに射抜かれて、ヒュッと鋭く息を吸い…。言われるがまま、タオルをゆっくりと剥ぎ取った。 「っ…ぁ……♡あ、相変わらず……デケェ……っ♡」 ベルブの股の付け根で反り立つ凶暴なそれを目の当たりにして、思わず喉が渇いたかのように唾を飲む。 もう見慣れたはずなのに、何度見ても…圧倒される。こんなモノが毎回、俺のケツに… 「洗ってくれるんだよね…?ライラ」 「はぁ……ベルブ…っ……♡こ、こんな…モノ…っ」 震える指で、そっとその昂りに触れる。熱を確かめるように優しく触れて、ヌルヌルとした泡を絡めながら…その粘膜を包む手つきが、勝手に卑猥な動きになっていく。 「はぁ………気持ちいいよ…」 ベルブが、甘い溜息混じりに低い声でそんなことを呟くから……ゾクッと背中が痺れるように震えて、腰が甘く疼く。 「こ、…コレっ………欲し、…ぃ……♡」 潤んだ瞳で媚びるようにベルブを見つめ、唾液の溢れる唇で懇願してしまう。するとベルブは妖しげに口角を上げて、少し首を傾げる。 「欲しい?ライラのお口に?それとも…お尻に?」 「あぅっ……♡…ど、…どっちも……くれ…♡…口から…っ…」 「いいよ…?その後、お尻ね…?」 ベルブが妖艶に笑って承諾するから、俺は理性を手放し、口を大きく開ける。 ベルブに奴との契約印を見せつけ……その熱い視線が俺の舌を捉えるのでさえ、甘美な快楽に変換されてしまう。 「はぁ……♡…ぁ…っ…」 震える唇で湿った熱い吐息を吐きながら…。この舌が、奴のペニスに触れそうになる時… "ブブブブブッ……" 「んぁ…、…へ……?」 聞き覚えのある音が鼓膜にこびり付く…。沢山の虫たちが翅を擦り合わせているような音…。ベルブが瞬間移動するときの音だ。 昂りを咥えるために開いた口のまま、戸惑う。なぜこの音が…、と、ペニスのほうから、目の前のベルブの顔へと、直ぐにこの視線を上げた。 しかし俺の目の前のベルブは、俺の方ではなく、俺の背後の辺りを見ていて…。 「お、おい……ベル、ブ……?」 何を見ているんだ―― そう思って、振り返った時。 「ベルブ…!?」 う、後ろにも…奴が…!!! は…? ど、どういうことだよ…!? はっ、もしかして分身か! 分身が、瞬間移動してココに来やがったのか…! そうだ、きっと、ベルブに与えられた家事を終わらせて、俺を探しにココまで来たに違いねぇ…。 ふと、先程のことが頭をよぎる。この分身が本物のベルブに嫉妬していたあの姿を思い出した。俺は慌ながら、俺と最初からこの浴槽に居たほうのベルブへと身を寄せる。椅子に座っている全裸の方のベルブの、その膝の近くにしゃがんだ。 一方で、俺の背後に瞬間移動で現れたベルブは、いつもの黒いワイシャツ姿だ。眉を顰め、何故か慌てたような表情で、頬を僅かに赤くしているように見えるが…。 「…ライラ。俺は魔界と通信してたんだ。分身とイチャつかれたら困るよ…!」 そう言ったのは、瞬間移動で現れたワイシャツ姿のベルブだ。 「…え……?」 お、おい… 瞬間移動してきた方が、魔界と通信してた……って…? つまり… 「は…?…嘘だろ…?こ、コッチが…分身…!?」 直ぐにそばに居る全裸のベルブを見上げ、目を見開いた。 「あぁ、バレちゃったね…?でも、俺が分身だとか、関係ない。俺はライラが好き」 「そ、そうか……。っ、じゃなくて…!」 俺は…分身の方のベルブのペニスを咥えて…セックスまでしようとしてたのか…!? 全てを理解すると顔をさらに真っ赤にして、両手で顔を覆う。 嘘だろ…? 再現率100%だとか抜かしてやがったが…! アソコまで完璧に複製されてんのかよっ…!!! 本物のベルブは、もしかして、怒ってるか…? 恐る恐る、指の間から本物のベルブの方をチラッと見る。 本物のベルブの方は、拗ねたような表情且つ、なぜか恥ずかしそうな顔をしている。そして分身の方は、俺を愛おしそうに見つめ続けている。 思わず顔を覆っていた手を外して、キョロッキョロッと何度も交互に見た… クソ…!どっちも…顔が良すぎる…! 俺は慌てて自分の体を隠すように身を縮こませた。

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