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第二章『お兄ちゃんの代わりにしていいよ』ー6

 答えて貰えなくても仕方ない。そう思っていたけど。 「卒業式の後、優に告白した。中学の時からずっと好きだったって」  陸郎は答えてくれた。僕は「うん」と相槌を打った。 「お兄ちゃんはなんて?」 「俺も好きだよ、だって親友じゃないかって」  優雅の声が聞こえてきそうだった。いつもの調子で言ったのだろう。 「そうじゃない、それ以上に。俺の好きは恋人になりたい、お前に触れたい好きだってはっきり言った」  僕はごくっと喉を鳴らした。 「それでお兄ちゃんは?」 「そうかって。でもごめんそういう意味で陸のこと好きになれない。だって男同士じゃないか。そんなの普通じゃないだろって、即答だった」  その時のことを思いだしてか酷く切なそうな顔をしている。僕も陸郎の気持ちを思い切なくなった。  でも一方で疑問にも思う。 (だって……あの時確かに……それとも……僕の見間違いだったんだろうか……)  自分の見たものに確信が持てずそれを陸郎に伝えることはできなかった。  それにしても、だ。 「我が兄ながらそれは酷いと思う。マイノリティを認めない典型的な人間の言うことじゃないですか。頭の固いオヤジかっ。しかも親友だって豪語していた松村さんにそんな言い方っ」  僕は陸郎のために、そして自分自身をも否定されたように思えて憤った。しかし陸郎のほうは冷静だった。 「いや、優がそういうふうに言うのはなんとなくわかっていたような気がする」  陸郎は兄という人間をよく理解しているのだ。それなら何故わざわざ関係を壊すようなことをしたのか。 「じゃあ、なんで告白したんですか? そんなふうに傷つけられるのがわかっていて」 「苦しかったから……。優……余り人に心許さないだろ。でも俺にだけ距離近いんだ。俺はそれが最初は嬉しかったけど、自分がそういう意味で優を好きなんだって気づいてからは辛さに変わって……俺の気持ちも知らないで俺に触れてくるのが苦しくて。だから決別しようと思ったんだ」  陸郎がこんなに言葉を発するのを初めて聞いた。それがこんなに苦しい話だなんて。  だけどその話で新たな疑問が生まれそれを僕は陸郎にぶつけた。 「決別って。だって同じ大学に通っているじゃないですか。いくら学部違うからって同じ大学じゃ会う可能性は高いのに」 「ん〜」  その問いに彼は頭を抱えていた。 (なんだ? どした?) 「俺は別の大学に行くつもりでいたんだけど。だから告白したわけだし」 「え? どういうこと?」 「さっきの言葉、あの後に優は。でもおれは陸のことは友だちとして好きだし、おれたちこれからも親友だから安心して。って言ったんだ」 (なんだそれ! 安心してってなんだ! お前はいったい何様のつもりだっ)  本当に酷い兄だと(はらわた)が煮え繰り返りそうになる。

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