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第三章 『恋人としたいこと◯か条』ー1

 ーー果たして『恋人』とは?  僕らの関係を陸郎は『友だち』というスタンスで始めた。  あの日から一週間が経ち、陸郎は約束を守って大学へ来た二日とも一緒に昼食を食べてくれた。四年生の彼はゼミと他数教科の授業しかなく、週二、三回しか大学に来ていない。もう既に就職の内定も貰っているらしい。  そして、僕は。  僕は陸郎とは違って『友だち』ではなく『恋人』として関係を築きたい。 (まぁ、『ごっこ』なんだけどね!)  しかし、だ。  いったい恋人とは?   経験値ゼロの僕には具体的にどういうことをすれば『恋人』同士なのかがわからない。  とりあえず思いつくものを書きだしてみることにした。  僕は勉強机の棚にあったノートを取りだす。パラパラとめくると英文が書いてあるそれは高校の「論理・表現」のノートだ。使いかけのまだ白いページを開く。 (まずは……)   『デートをする』 『手をつなぐ』 『腕を組む』 『キスをする』 『セックスする』 (…………)  自分の書いたことに赤面する。 (いや、ないない。『ごっこ』だし。そこまではいくらなんでも。なんで僕、こんなこと書いてるんだろう)  半ば無意識に書きだしたのは、絶対アレのせいだな。  経験値ゼロの僕の教本といえばBL漫画だ。あれは短編なんかだと何故か告白してすぐセックスに持ちこんでいる。いや、もちろんそうでないものあるし、長編でじっくり関係を進めているものもあるんだけど。  現実では、想いが繋がってすぐセックスっていう展開になるのだろうか?   それに。  僕の『好き』はどんな『好き』だろう。  この提案を飲ませるために必死になる程、陸郎と関わりを絶ちたくはなかった。 (キス……くらいはいいかな。でもセックスまでは……)  最近読んだBL漫画のセックスシーンを頭に浮かべる。キャラ的にはどう考えて僕が挿入(いれ)られるほうだ。 (いや、ムリ!)  僕はふるふるっと首を振った。  今はそこまでしてみたいくらいの『好き』ではないような気がする。  陸郎は優雅に『触れたい好き』だと告白した。セックスしたいくらいに優雅を好きだったんだ。  僕はそこまでの想いを陸郎に対して持っているのだろか。どちらかといえばまだ憧れ寄りなのかも知れない。  僕は『セックスをする』のところをシャーペンで塗りつぶした。『キスをする』のところも塗りつぶそうとして。 (まぁ、これはいいかな)  なんとなく残しておいた。 『陸郎のことを知る』  そこに新しく書き足す。 (まずはここからかなー)  陸郎のことは家に来た時と部活や大会で見た時くらいの情報しかない。  陸郎のことをもっと知りたかった。  その文をトントンとシャーペンの先で叩いた。

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