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第三章 『恋人としたいこと◯か条』ー2
* *
週が明けて月曜日は陸郎は休みだ。そして今日は心待ちにしていた火曜日。
どぎまぎしていた先週に比べて今日は少しわくわくしている。
土曜日にあのか条書きを書き始めて、あの後追加したことがある。
『毎日ラインする』だ。
恋人同士っぽくない? って自分では思ってる。陸郎にはうざがられるかも知れないけど。でも僕は『恋人ごっこのつもりでいる』って言ってあるから。いろいろ経験豊富なフリをしてぐいぐい押していくつもり。でも僕が陸郎のことを好きなことは知られないように気をつけないと。
陸郎は基本余りしゃべらない。入学式の日のことはどうやら特別だったらしい。陸郎自身ずっと胸に溜めこんでいたものを僕にいろいろ突っつかれたせいで吐きだしてしまったのか。
その後の二日間は今みたいに黙々と食事をし、コーヒーを飲んでいる。僕が話しかけたことに対しては答えてくれる。家で見ていた優雅との関係と同じだ。
今日の僕はカフェのランチにオレンジジュース。相変わらず女子か子どもみたいだ。コーヒーは苦くて飲めない。でもコーヒーを飲んでいる陸郎が格好良くて一緒に飲めるようにしたいなと思う。
「松村さん、お誕生日いつですか?」
食事を終えジュースを一口飲むと『陸郎を知ろう』プロジェクトを開始した。
(これくらいは恋人としては基本たよね。というか、友だちでも聞いたりするな)
「六月二十二日」
「血液型は何型ですか?」
「AB型」
(六月二十二日、AB型かぁ。あとで何座かとか相性とか調べてみよ)
ほくほくしていると、
「温くんは十月三十日だよね」
と意外なことを言ってきた。
「え? 僕の誕生日知ってるんですか?」
(なにそれ、めちゃめちゃ嬉しい)
そう思ったけど。その出どころは当然……。
「毎年優が騒いでたからさ」
クスッと笑う。
「今年はプレゼント何にするかーとか、部活早く終わんねぇかなーとか」
その時のことを思いだしているのか、すごく優しい表情をする。
「あれで意外と弟思いなんだな」
自分を振った男の話をそんな顔をしてするのかと思うと、ちりちり胸が痛んだ。
「そうですねー」
と気のない返事を返す。確かにそういうところもある。全部が全部嫌な部分じゃないし、基本的には嫌いとかでもない。
だけど。
(優雅の話はもういいよっ)
僕は急いで次の質問をした。
「松村さんは兄弟いるんですか?」
「高二の妹がいるよ」
「妹さんいるんですか」
心の中で『なんかそれっぽい』と微笑ましくなった。陸郎はぶっきらぼうに見えるけど面倒見が良さそうだし、きっといいお兄ちゃんなんだろうなと思った。
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