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第九章『『恋人ごっこ』やめました!』ー4
洸が真剣だから、僕も真剣に答える。
「三瀬さん、ごめんなさい。僕、まだ陸郎さんのこと諦めてないんです」
じっと彼の目を見つめた。
「温くん……」
洸は力尽きたようにへにゃと僕の肩に顎を載せた。彼の重みが僕の身体にのしかかってくる。といっても何かしようとしてるわけでもないようだった。
支えないとそのままずるずるその場に沈んでいってしまいそうだった。
「三瀬さん? どうしましたっ?」
ぽんぽんと背中を叩く。
「そっか……うん、じゃあオレも諦めない。オレはオレでこれからガンガンいくから」
「三瀬さん……」
(ほんと……この人を好きになれたら、僕は幸せになれそうなのに……)
諦めの悪い男二人はしばらくその場で身を寄せ合っていた。
* *
「陸郎さんのこと諦めてないんです」
洸にはそう言ったし、僕自身も心の底からそう思っている。
だけどあの時の『ごめん』でかなりのダメージを食らっていて、前みたいにガンガンいくことはできなくなった。というかもう、『ガンガン』どころか『ガ』すらいけてない。
夏休みも終わり後期の履修も済み本格的に授業が始まっても、僕は陸郎に会えていなかった。
あれから、連絡をしようと何度ラインを開いたことか。でもあの時の陸郎の顔、声が蘇ってきてすぐに閉じてしまう。だから陸郎にラインをするという日課も途切れてしまった。
もともと僕が連絡を入れて約束を取りつけていただけだ。陸郎のほうから連絡がくるはずもない。もちろん『お昼を一緒に』という約束もあれから果たされていない。
時折、カフェや学食に行くと、前によく二人で座っていた席に彼を見かけたことはあったが、そんな時は別のところに行ってしまう。
もう一度顔を合わせたら僕はどうするだろう。
泣いてしまうだろうか? 問いただしてしまうだろうか? 『恋人ごっこ』でもいいからと縋ってしまうだろうか。
どうなるかわからない自分が怖かった。
そして、陸郎は? 陸郎は僕にどんな顔をするのだろうか。
それも怖くて見かけても近づくことができなかった。
だから陸郎の履修の状況もわからず、前と同じ曜日に学校に来ているかもわからなかった。
僕はガンガンいけないでいるが、洸は宣言通りガンガンやってくる。
バイト先でも。大学でも。
バイトを始めた頃同じ大学だということもあり、洸の勢いに押されてラインを交換していた。しかしそれはずっとバイト連絡以外には使われていなかった。
それが最近はちょくちょく向こうから連絡がくるようになった。
他愛もないことや「明日お昼一緒に食べよ〜」という誘いなどだ。
まるで陸郎のいない穴埋めのように、僕は洸と昼食を共にしている。
(っていうか、陸郎さん以上だよね!)
四年生より二年生のほうが授業数が多い。当然大学に来る日数も多いのだ。そういうわけでほぼ毎日のように昼食を共にしている。
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