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第十章『彼氏になったらこんなに甘々になるなんて聞いてません!』ー7
ゆっくりと目を閉じた。目蓋の裏に浮かぶ光景を見るように。
すぅと小さく息を吸った後、静かに口を開く。
「僕、最初に会った時、陸郎のことが少し怖かった。僕があまり大きくなかったのもあるけど、中二なのに兄よりもずっと大きくて、人の家に招かれてもまったく笑いもせず、ぶすっとしてたし話し方もぶっきらぼう」
その時のことを思いだし、くすっと笑いが零れる。陸郎は黙ったままで、笑いを噛み殺しているような息遣いだけが間近で聞こえる。
「でも何度か家に来るうちにだんだんと怖い人じゃないんだとわかった。兄に話しかける声は優しいし、表情も少し柔らかいって気づくようになった。なぜだと思います?」
陸郎からの返事はない。
「僕が陸郎のことを見ていたから。だって兄とは全然違うタイプで、とても兄の親友になるように思えなくて、それがすごく気になっていたから。それから二人の出る競技会を見に行って、陸郎が飛ぶ姿を見た――とても美しくて、かっこよくて……」
(写真たくさん撮っちゃったんだよな〜)
ということはまだ内緒にしておこう。
「僕、実はその頃から女子よりも男子に憧れを抱いていたから、陸郎にもだんだん憧れを持つようになってた。イケメンでイケボで、美しくてかっこよくて。小学生とはやっぱり全然違う、素敵なお兄さんって感じで。でも……」
目を開くと陸郎が僕の顔を覗きこんでいる。僕はその目をじっと見つめながら。
「でも、陸郎と優雅の関係ってなんなんだろうって思うようになった。陸郎は優雅にだけは表情が柔らかくて、優雅にとっても陸郎は特別な感じがして……」
(あ……しまったなぁ。いつも心の中で『優雅』って呼んでるのが、出てきちゃった)
「……温は優のことが嫌いなのか?」
案の定そんな問いかけがきた。
「嫌いじゃない。だけど家族なのに、高校までの陸郎と優雅ほど接触もなかったんだ、実は。だから好きとか嫌いとかの感情もなかった。でも陸郎とのことで今は少しわだかりもある」
「うん……」
まだ陸郎と優雅の間のことを少し気にしていると分かってしまったろうか。
そう思ったけど、僕は話を続けた。
「陸郎が怪我で陸上部を辞めても、一緒に帰ってきてて、ぜったい『親友』ってだけじゃないだろうって。それで、あの日。二人がリビングでうたた寝しているのを見て、確信したんだ。二人は恋人同士なんだって」
一気に喋って苦しくなって、一息ついた。
「実際には違ったんだけど……でも、陸郎から聞かされるまではそう信じてたんだ。あの時僕は、いいなぁ優雅になりたい、そう思った。ずっと憧れていた陸郎のこと、本当は恋人になりたい『好き』だって気づいて……そして、同時に失恋もした」
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