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第十章『彼氏になったらこんなに甘々になるなんて聞いてません!』ー8

 僕はあの花火大会の日、陸郎に告白をした。  あの時は『ずっと好きでした』というだけが精一杯だった。いつから好きだったのか、どれだけ好きだったのかは伝えていない。  僕は今それを伝えている。 「失恋したけど、僕はずっと貴方のことが忘れられなかった。僕と同じ同性を好む人につき合いたいと言われたこともあるけど……やっぱりそういう気持ちにはなれなくて。陸郎と優雅が大学生になって、陸郎がなぜか家に来なくなって、ずっと会えなくても僕の心には貴方が棲んでいたんです」  心のままに告白する。そこでふと、あれ? ひょっとして気持ち悪く思われちゃうかな、と不安になる。陸郎の表情を見ると話を聞きながら何事か考えているように思えた。 (あれ? なんだろ? やっぱ気持ち悪い? もういいか、全部言っちゃえ) 「桜葉大に決めたのは貴方がいたからってわけじゃないんだけど、でも会えたらいいなぁとは思ってた。それが入学式から再会できて、陸郎と優雅の話を聞いて、優雅の代わりでもいいから期間限定でもいいから陸郎の傍にいたかった! でも! 傍にいればいるほど、『ごっこ』じゃない本当の恋人になりたくなったんですっ!」  自分の話していることに興奮してきて、最後は思いの丈をぶちまけた。涙まで滲んできた。 「そんな前から……そんなに俺のこと……」  陸郎が僕の身体を背中から包み込んでくる。耳に届いた声には軽い感動が滲んでいるように思えた。  彼は両足を伸ばして広げ、その中に正座をしている僕を囲う。 「陸郎……」  こんな体勢は初めてだった。 (なんかめちゃめちゃ恥ずかしい)  抱きしめられたりキスしたり、どきどきすることは今までもしているのに。これはそれを上回る。顔がめちゃくちゃ熱い。 「……でも……そうか。やっぱり……」 「え? 何が?」  後ろからぎゅぎゅっと力を込められ、耳朶を軽く噛まれた。 「……っ」 「温、誰かとつき合ってたことのあるフリしてたろ」 「う……っ」  言葉に詰まった。  そう。僕はずっといろいろ経験のある振りをしていた。そのほうが陸郎が気軽に応じてくれると思ったからだ。慣れている振りをすることは、ぐいぐいいける子を装う自分をも鼓舞していた。 「ですねぇ……ひょっとして気づいてた?」  非常に気まずい気持ちになる。気づかれてたのにずっとそう装っていたなんて。 「確信はなかったけど……なんか、無理してるような。そういうの慣れてますって感じの温よりも、そうじゃない温――俺のこと気遣ったり赤くなったり泣いたり、俺にはそっちのほうが自然のように思えてた。それで、さっき、つき合いたいって言ってきた奴がいてもそういう気になれなかったって言ってたろ。それを聞いてやっぱりそうだったんだって」  

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