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第十章『彼氏になったらこんなに甘々になるなんて聞いてません!』9

(さっき気にしてたのって、そこ?! 良かった〜、キモいと思われてたわけじゃなかったんだ)  思わずほーっと息を吐きたくなったが、押し留める。 「バレバレだった! 恥ずかしいっ」 「バレバレってほどじゃないよ。でも、一生懸命なところが可愛かったし」 「かわっ?!」 (可愛くなんか、ないでしょーっ! 大人の余裕? なんかちょっと悔しいっ)  反論しようと後ろに顔を向けようとしたところをすかさずキスをされた。口を開く前に封じられる。 「んっ」  長いキスだった。  吸い上げられたり、唇を舌でちょろちょろ舐められたり。唇を割られても中まで入ってこず、前歯や歯茎を舐められた。  離れていく舌先から唾液の糸が繋がっているのが、明るい部屋の中で見えてなんだかいやらしい。 「つき合うの初めてなんだ……じゃあ、キスとかこういうことも初めてだよね」  耳を中までじっくり舐められ首筋を唇が這う。 「あ……」  まだキス以外のことはしたことがない。  今は陸郎の部屋。それ以上進むような予感がして、嬉しいような怖いようなむずむずした気持ちになる。 「少し……触らせてくれる?」  首筋に埋めていた顔を上げ、真横から僕の顔を覗き込まれ、こくこくっと頷いた。彼はすかさず前に回ると、僕をラグにそっと倒した。  陸郎の身体の重みを全身で感じ、それだけで身体中が熱くなる。 「顔、真っ赤。可愛い」  ちゅっと唇にキスをする。 (あの陸郎さんがっ! こんなこと言って、こんなことするなんて!) 『可愛い』とか絶対に言わなそうなのに、と軽い感動を覚える。 (ん? でもなんか妙に慣れてない?)  はたっと気がついた時には、再び首筋に顔を埋め、その手はトレーナーをたくし上げて直に肌に触れていた。  どっどっと激しく鼓動する。  でも。 「あの……」 「ん?」 「陸郎って……誰ともつき合ったことないって言ってましたよね?」  ピタッと動きが止まる。のそっと上体を起こし、両手を僕の顔の両側についた。上から覗き込まれる。 「……つき合ったことはないけど、経験はある」  彼は僕が言わんとしたことがわかったらしい。 「女性とだけど。俺が目指していたゼミの飲み会に誘われて、そこで会った先輩と……その人は四年生で、彼女が卒業するまでの半年間数回関係を持った。自分から離れるようなことをしておいて、優が彼女を作ったのがやっぱりショックだったんだと思う。少し自棄(やけ)になってた。その後は何もないけど……」  僕が何を言うのか。目の前の瞳は少し不安げに揺れている。でも僕は何も口にできずにいた。 (そんなふうになるほど、優雅を……)  僕はそっちのほうがショックだった。 「やっぱり……嫌だよな? こんなの」  行為を止めてしまいそうな気配を感じて僕は陸郎の頭に手を伸ばし、ぎゅっと抱きしめた。 「やめないで」  掠れた声で言う。 「いいの?」 「陸郎さんっ、好きっ! もっと触れてほしい」 (優雅なんかに負けないっ)  耳元に安堵の息を感じた。  彼の手がもぞもぞと動き始める。唇や頬や首筋、鎖骨に唇を這わしながら、手は胸や腹を探る。そしてその手は、ジーンズの前を広げ、そのまま中に忍び込んできた。 * *  最後まではしなかった。  あの後僕も陸郎のに触れて、お互い触れ合って達した。  それだけで気持ち良かった。初めて人に触れられ、それが大好きな人の手なら、なおさら気持ちいいに決まっている。それに、陸郎も僕でああなるんだと嬉しくなった。 「クリスマス……続きあるかなぁ」  陸郎はそんなつもりないかも、と思う反面めちゃめちゃ期待している自分がいた。  

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