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第十一章『はっぴーめりーくりすます♡』ー2
(なんか、様子が……。彼女できたんなら陸郎に構わないでくれるからありがたいんだけど)
なんとなく訝しく思いながらも突っ込むのはやめにした。
「お母さんはいいって言ってくれたから。子ども二人が大学生になったら家族優先でもないでしょ」
自分でもちょっと冷たいことを口走ってしまったら、案の定優雅は憤慨した。
「冷たい奴っ」
ちっと舌打ちを残して去っていった。
(どっちが冷たいんじゃ。普段は兄らしいこと少しもしないのに)
去っていく背中に向かって舌を出した。
* *
待ちに待った日がやってきた。
約束は午後二時。
水曜日だが僕はもう冬休みに入っていた。なんなら午前中からでもと思ったが、陸郎は午前中大学に行く用があるらしい。
『いつもの別れる場所で待ってて』
昨夜きた連絡。
ちょろっと陸郎の誕生日の時のことを思いだす。待ち合わせの時間がどんどんずれ込み、最後は一人で陸郎のための誕生日ディナーを食べることになった、あの日のことを。
今日はそんなことはないはずと思いながら少しだけ不安になる。でも朝一番にスマホを見ても時間をずらして、などという連絡もなく、胸を撫で下ろす。
優雅も朝はリビングに顔を見せなかった。
僕が出かける時間になってようやく自室から出てくる。本当に寝起きだったらしく、ルームウェアに頭ぼさぼさ、だらしない格好だった。
小さな声で「行ってきます」と言って、そそくそと玄関のほうに向かう。優雅からの返事はない。
「陸の奴、おれの誘いを断るなんて」
ぼそっと言ったことにドキッとした。
(何、今の? 優雅、陸郎さんのこと誘ったの?)
独り言のようだったが、わざと僕に聞かせたのではないかと勘繰る。
(まさか、僕が陸郎さんと出かけるって気づいて……)
でも優雅はそれ以上何も言わなかった。
冬だというのに、変な汗をかきつつ外へ出た。
待ち合わせ場所に立って陸郎の家の方向を見ていたが、白い車がこちらに向かって走ってくる以外は人影がなかった。
(用事押してるのかな?)
スマホで時間を確かめながらそんなことを考えていると、目の前に先ほどの車が止まった。十字路なので安全確認のために止まったのかとそれほど気にも止めなかったが、運転席側のドアが開いて驚いた。
「陸郎さ……!」
「遅くなってごめん」
少し焦った様子の彼がいた。
「え? 車?」
「とにかく乗って」
僕の腕を軽く掴んで助手席側へと促す。驚いたまま車内に入るとドアを閉めてくれた。陸郎も運転席に戻り、車を静かに発進させる。
車がスムーズに走っているのを感じながら。
「陸郎、免許持ってたんですね」
「まあな……ほぼペーパーなんだけど。親に頼んで二日間車貸してもらった。だから安全運転な」
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