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第十二章『僕は……ほんとにほんとに幸せでした……っ!(大号泣)』ー2
本当はほんのちょっとの怖さや、痛みや辛さもやっぱりあった。
(でも……めちゃめちゃ幸せ……)
アプリを開いたままスマホを胸に抱いて、目を閉じて幸せに浸る。
しばらくそうしていて、ふとそういえばと思い出す。
(陸郎、全部挿れなかったんだよね)
最後は二人で達したし、ちゃんと気持ちよくなってくれたんだと思うけど。
「んー」
少し心配になった。
(次は、陸郎の欲望のままに……なんつって)
「あ、そうだ」
パチッと目を開いて、飛び起きる。
「うちにも来てほしいよね〜」
顎に右手を当てて考える。
「でも、優雅がねぇ〜」
* *
陸郎を自分の部屋に呼ぶ。
難関と思われた案件は、しかし、案外早くチャンスが巡ってきたのだった。
十二月三十一日。大晦日。
実はこの日から二泊三日で両親の会社の保養所を使って、家族旅行に行くことになっていた。毎年行われる咲坂家の年中行事である。昨年までは僕も参加していた。彼女持ちの優雅も必ず参加していた。
陸郎を家に呼ぶにはこの日以外はない!
僕が不参加の意思を母に伝えると、ここしばらく家族イベントに参加していなかったために、さすがに渋い顔になった。
「え〜またなの〜最近つき合い悪いわね」
「お母さん、ごめん。友だちが来ることになったんだ」
目の前で手を合わせて謝る。
そこは優雅と違って幼い頃からあまり干渉されなかった経緯もあり、それ以上責められも突っ込まれもしなかった。
「まぁ、でも。温が大学で楽しくやってるならいいか」
最後の一言はちょっと嬉しかった。少しは僕のことを気にしてくれてるみたいだ。そう思うとちょっと胸が痛んだ。
(嘘……ではないよね。友だちでもないけど)
「一人キャンセルできるかしら〜」
母はもう切り替えて、そう言いながら二階に駆け上がっていった。宿泊先に連絡をしにいったのだろう。
話の途中で優雅が帰ってきていた。彼がいないところで話をするつもりだったのに、間の悪いことだ。
母が去っていった後、彼は無言でじっとりと僕を見ていた。
「なに?」
「べつに。なんでも」
なんでもない、という顔ではなかったがそれ以上は何も言わず、彼もまた二階へ上がっていく。
(もう、諦めてくれたかな)
少しの不安は心の奥にちらっと残ったけれど、僕の頭はもうすでに陸郎と過ごす大晦日を描いていた。
* *
「行ってらっしゃい、気をつけて」
午前九時。家の前で両親と優雅を見送る。
「お土産よろしく〜」
「もう、調子いいわねっ」
助手席の窓を開けて母が笑いながら言う。後部座席の優雅は反対の窓側に座り、そっぽを向いている。
(めっちゃ不機嫌)
「じゃあね。ちゃんと戸締まりするのよ」
「はーい」
お互いに手を振り合う。
僕は車が見えなくなるまで眺めていた。
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