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第十二章『僕は……ほんとにほんとに幸せでした……っ!(大号泣)』ー4

「ついでにここまで車で送ってくれた」  旅行の時に陸郎が運転していた車だろうか、とあの時の車を思い浮かべる。 「そうなんだ。優しいお母さんですね」  ただ単純にそう思って言った。手を伸ばし荷物の一つに手をかけると、その意図を察してか一番軽そうなものを手渡された。僕はそれを受け取った。 「上がってください」  揃えたスリッパを指し示す。 「おじゃまします」  残りの荷物を持って上がる。 「母は最近俺が旅行に出かけたり家を空けたりすることが多くなったから、彼女ができたんだろうって言ってきて」  どきんっと心臓が音を立てる。 (……彼女ではないなぁ……)  ちょっと後ろめたい気持ちになる。 「今回も三日間家を空けるって言ったら執拗く聞かれて。優の家に行くって言ってしまった。母は俺がまだ優と仲がいいんだと勘違いして、こんなに……」  高校を卒業してから、陸郎は優雅の話をしてなかったのかもしれない。実際離れようと思っていたのだから。同じ大学に行っているのは知っているとして、話もしないのは仲違いでもしたのだろうかと考えた。それが三日間優雅の家にいるともなれば、また仲直りしたのかと喜んでも仕方がない。  いつまで経っても親にとって子どもは子どもだ。心配していたのだろう。 「ごめん、温のことは言えなかった」  すごく申し訳なさそうな顔をしている。 (言えるわけない。僕と恋人としてつき合ってるなんて)  少し落ち込む気持ちにはなったが、今はまだ、仕方がないと割り切る。 「仕方ないですよ。優雅じゃなくて弟の僕と過ごすために僕んちに来るなんて。え? なんで? って思われちゃうから〜」   そんなことはたいしたことないですよ、ということを示すように殊更明るく言った。  前を歩いて、陸郎をリビングに促す。  リビングの手前で陸郎が立ち止まる。一瞬どこか懐かしそうな顔をした。彼の目には何が映ったのだろうか。   僕の心にちょっとだけもやがかかる。  陸郎と優雅の間の長い年月は、やはりすぐには消え去ったりはしないのだろうと感じた。  陸郎の母が用意してくれたもののおかげでレンチンは免れた。  昼食を取ると僕の自室へと案内した。  これまた陸郎の母が持たせてくれたケーキと、インスタントのコーヒーとココアをローテーブルの上に置く。  陸郎は立ったまま室内を見渡した。 「そんなに見ないで、なんか恥ずかし」 「なんで? 温くんらしい整頓された部屋だね」 (それなり片付けました〜)  確かにいつもそんなには散らかってはいないけど。 「優の部屋はけっこう散らかってた」  くすっと笑う。つい言ってしまったと自覚したのか、 「ごめん」  とつけ加えた。

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