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第十二章『僕は……ほんとにほんとに幸せでした……っ!(大号泣)』ー5

「いただきます」  ローテーブルを前に、腕が触れ合うくらいの距離に座った。  僕の家でどんなふうに過ごすか、というのはまったく無計画だった。  普段彼が家でどう過ごしているかまだ分からないこともある。勉強以外は何をしているのだろうか。  部屋に本がたくさんあったから読書? 動画なんかは見る? ゲームとかするのかな?   まだ二人の時間は始まったばかり。  とりあえず、カップに入ったケーキにぱくつく。 「美味し」 「そう、良かった。それも母が作ったんだ。喜ぶよ」 「お母さんが作ったんですか? すごいっ」  僕の母親が食事以外の菓子類を作ったという記憶はない。とにかく忙しいので必要最低限の家事しかしないのだ。とはいえ料理は苦手ということはなく、普通に美味しい。 「良かったら俺の分も食べて」  陸郎はケーキには手をつけず、コーヒーだけ飲んでいる。 「え? いいの? 美味しいですよ?」 「もう、腹いっぱい」 (そういえばあまり甘いものは食べなかったっけ。でもせっかくお母さんが作ってくれたのに) 「じゃあ、一口だけでも?」  上目遣いに言ってみる。  少し黙って僕の顔を見ている。 「陸郎?」 「あ、うん。じゃあ一口だけ」 (ん? 今一瞬悪い顔してなかった?)  コーヒーのカップをテーブルの上に置いた。『一口だけ』と言いつつ、しかし、彼はまったく動こうとしない。   不思議に思ってそのまま動向を見ていると、徐に口を開いた。 (え? ちょっと待って。なにっその口は?)  そのまま僕の顔をじっと見ている。 (これは『あーん』をやれってこと?)  そういえば前にサンドイッチを彼の目の前に差し出したことがあった。でもあの時は本当に陸郎が僕の手から食べるとは思わなかったし、そういうことをするキャラを演じていたからできたのだ。  本当の恋人同士になった今、この『あーん』はかなり照れくさい。  陸郎の皿から一口すくい、軽く開けられた口の前に差し出す。フォークを持つ手がぷるぷる震えてしまう。  陸郎がぱくっとケーキを口に入れて咀嚼する。僕はそれに見惚れていた。 (陸郎って……こういうことする人だったんだ。くっ可愛いかーっ)  手であげるものじゃなくてよかった。あの時は僕の指先にまで触れた。今やったらそれだけじゃすまない気がする。想像するだけで爆発しそうだ。 「やっぱ、甘いなーー温の顔も」 「え?」 「真っ赤になって、可愛い顔してる。こっちも食べようか」  自分はそんな顔をしていたのかと、余計に顔に熱が集まる。 (しかも、なに? そのセリフ。イケメンがイケボでかっこいいこと言ってっ。メロすぎるっ)  なんだか負けたような気分になって、悔し紛れに言い返す。 「陸郎こそっ可愛いじゃないですかっ。『あーん』してほしいなんてっ」  でも彼はめちゃくちゃ余裕の、そして少し悪い顔をする。

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