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第十二章『僕は……ほんとにほんとに幸せでした……っ!(大号泣)』ー10
(陸郎……っ!)
陸郎はずっと優雅のことが好きだった。告白して玉砕したのだ。
今彼はどんな顔をしているのだろうか。僕に背を向けている彼の表情は見えない。
怖くて声をかけることもできない。
「な……に言ってんだ、優」
その声にもなんの感情も滲んでいないように思えた。
「お前、俺のことそんなふうにみることはできないって、振っただろ?」
「……そうだよ? だって男同士なんて誰も認めてなんかくれない。おれは普通に女の子と恋愛して、いつか結婚して、子どもを作って……そんなあたりまえの将来を描いていた。おまえとつき合うなんて、ありえないだろ?」
さっき言ったことと違いすぎて、優雅のことが理解できない。
「だけど、おまえ、温と……。そんなことが許されるなら……」
きゅっと唇を噛みしめてから、泣き笑いのような顔をする。
「おれ、本当は嬉しかったんだ。おまえに告白されて。おれもおまえのこと好きだったから……恋愛として」
「ゆう……が……」
優雅の名を呼ぶ陸郎の声は掠れていた。
今この瞬間、僕の存在は消えたような気がした。
優雅はくるっと踵を返し、部屋の外へと消えていく。バタバタと階段を下りる音が聞こえた。
陸郎は追いかけなかった。
追いかけずに僕を振り返った。
「!」
その表情は複雑でさっきまで僕を愛してくれた陸郎とは違うように見えた。
「陸郎さん……」
僕もまた片思いのころに戻ったような気がして、『陸郎』と呼べなかった。
そして、くいっと顎でドアのほうを指し示すと、一瞬戸惑ったようだが、陸郎は走って部屋を出ていった。
部屋には僕一人が残された。
ローテーブルの上で何かが煌めいているのに気づいた。それはスマホの通知で、そういえば全然見ていなかったなぁと呑気に考えた。
人間悲しすぎると何も感じなくなるらしい。
僕はベッドから下りてスマホを開いた。ラインの通知だった。
『優雅が急に用事ができたとかで、家に戻ったよ』
『お母さんたちは予定通りに泊まっていくから!』
『まったく二人とも』
最後は一言愚痴っている。
送信時間は午後七時二十八分。
優雅は一人電車で帰ってきたのだ。
なんで気づかなかったんだろう。
先にこのメッセージを見ていれば。
(見ていたら、どうしてた?)
陸郎に家に帰ってもらうか、もしくは二人で家を出てラブホにでも泊まるか。
しかし、そんなこと今さら思っても後の祭りだ。
僕は小さく溜息をつき、再びベッドに戻った。
顔をシーツに埋める。次第にシーツが濡れていくのを感じた。
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