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第十二章『僕は……ほんとにほんとに幸せでした……っ!(大号泣)』ー11
(優雅は気づいていたんだ、もうきっとだいぶ前から)
まだ『恋人ごっこ』だった頃から、僕が頻繁に会っている相手が陸郎だってことを。誕生日……は違ったけど、クリスマスと今回の家族旅行のキャンセルも。
僕は『友だち』とだって言った。仮に今日本当に優雅に急用ができて家に戻ってきたとしよう。僕が今日家で過ごす相手が陸郎ではなく、本当に『友だち』だったとしよう。
(いくら兄弟だからって友だちがいるって分かっているところに、いきなりバーンなんてドア開けるかー? 開けないだろー)
陸郎だって分かってたからドアを開けたんだ。僕らが本当に自分の想像通りの関係だと確かめるために。実際に確かめてみたらやっぱり自分の想像通りで、そして、思いの外衝撃を受けてしまった。本当は自分では気づいてはいけない欲望を吐露してしまった。
というのが、僕の推理だ。
それは、まあ、それとして。
陸郎には僕を選んで欲しかった。
僕を振り返った顔は明らかに迷っていて、僕が少し道を示したら優雅のほうを選んでしまった。
『好きだ』って言ってくれたのに。
あんなに身体を熱くしていたのに。
(やっぱり……僕らの関係は『恋人ごっこ』のままだったのかも……)
時折ちくちくと胸が痛むのは、最初からずっと棘が刺さっていたからなんだ。
それでも。
僕は忘れない。
ほんの二か月の間だったけど。
本当の恋人同士としてつき合えた。
心も身体も繋がり合えた。
(幸せだった……)
「陸郎……」
去っていった男の名を口にする。
切なくて愛おしい。
僕はガバっと起き上がった。
「僕は……ほんとにほんとに幸せでした……っ!」
僕の涙腺は決壊した。
近年こんなに泣いたことはないだろうというくらいに、涙はあとからあとから溢れ出る。
再びシーツの上に突っ伏して泣き続け、シーツをびしょ濡れにしていく。
小康状態と滂沱の涙を繰り返し、それは一晩中続いたのだった。
* *
二月十四日。
世間はバレンタインで、僕のバイト先のファミレスもそういう雰囲気の二人連れも少なくない。
でも僕にはまったく関係ないイベントだ。
(もし、陸郎さんとあのまま恋人同士だったら今日は……)
手の空いた瞬間に何度もそんなことが浮かんでくる。
「温くん、温くん!」
名前を呼ばれてはっと我に返る。
「なにぼーっとしてんの、これ運んで」
「はい、すみません!」
いかんいかんと、頭を振って切り替えた。
大学は春休みに入り、今まで週三回入っていたバイトの回数を増やした。特に曜日も休みたい日も入れず、適当に組んでもらうことにした。もう誰かに合わせて休みを取ることもないから。
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