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第十二章『僕は……ほんとにほんとに幸せでした……っ!(大号泣)』ー14
いつ取りに来てもいいように、陸郎の荷物はまとめて僕の自室に置いた。それがなくなったことに気づいたのは、一月三日、バイトから帰ってきた後だった。
陸郎は僕がこの日、朝から夕方までのシフトだということを知っていた。優雅と一緒に帰ってきて持っていったのだろう。あくまで僕には会わないつもりなのか。
あの後どこでどうしていたのか、僕との関係はどうするつもりなのか。聞きたいことは山ほどある。しかし陸郎はその機会を与えてくれないし、僕は僕ではっきり聞くことができない。
怖いんだ。
『別れよう。俺はやっぱり優のほうが好きなんだ。優とつき合うことにしたんだ』
そんな言葉を聞くのが怖い。
聞くための方法はなくはない。ラインするか、陸郎の家まで行くか。でも僕はそれをしなかった。
二人はつき合い始めたのだろうか。
優雅の陸郎に対するある種の執着はあると、ずっと思っていた。でもそれが恋愛であったとしても、優雅は認めたくないだろうし、彼の中の常識が『陸郎と恋人になる』という選択肢をぜったいに拒むと思っていた。
二人がつき合うことなどぜったいないと思っていた。
しかしもう優雅は認めてしまったのだ。自分は恋愛として陸郎のことが好きだと。だったら恋人としてつき合う選択肢もあるのだ。
同じ家に住んでいながらこのひと月半ほど優雅をまともに見ていない。彼がまた留守がちになったこともあるが、いる気配を感じるとそれを避けるようになった。
優雅も話をするために僕の自室に来ることもなかった。
ある日、偶然自室の窓から外を覗いていたら、ちょうど優雅が帰宅したところだった。
そして、隣には――陸郎が立っていた。
彼らが高校生の頃を思い出す。
毎日優雅を家の前まで送ってくる陸郎。仲よさげな二人。
それを見ている中学生の僕。
彼らを見かけた日から、本当は一緒にいるところなんて見たくもないのに、外を覗いてしまう。今日までに二人がいるところを数回見かけた。
二人はやっぱりつき合い始めたのだと思った。
「――お前、それ、もっと怒っていいよ」
洸は僕以上に怒りを顕にしていた。
「はっきりした言葉もないまま、会わなくなっておしまいって酷すぎるだろ」
「ですよねぇ……」
でも僕は怒る気力もないほど疲れてて、落ち込んでて、悲しかったのだ。
「温くん」
項垂れている僕の頭を撫でる。
「――前に言っていたこと、まだ有効だから」
「前に言ってたこと?」
顔を上げて洸を見た。
「だから……オレにしなよってヤツ」
僕は目を瞬 かせた。
いまだに彼が僕のことを想っていてくれたことに驚かされる。
「……そんなに、洸くんに甘えられませんよ」
「甘えちゃえよ」
最初からイケメンだったけど、今めちゃくちゃかっこいいと思った。
だけど。
しばらく黙り込んでからぽつりと言った。
「……僕は……陸郎さんが僕を選んでくれると思ったんです……でも優雅に敵わなかった…………」
その言葉を洸はどう受け止めたのかはわからない。
「よーし、歌うぞー」
急にアップテンポな曲が流れ出す。
洸がこの場の雰囲気に合わない曲を歌い出したのは僕の目に涙が溜まり始めたからだろう。
(ほんと、かっこいいよ。僕にはもったいない)
そう思いながら、少しだけ声を上げて泣いた。
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