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最終章『そして、春――愚か者どもの愚かな真実』ー6
「そんなわけないじゃないか」
即答だった。顔を見る限り、嘘やごまかしではないようだが、もともとポーカーフェイスなので確信はできない。
「そうじゃない、俺は温のことが好きなんだ。確かに最初はお前を重ねていたけど、今は違う。優のことは友だち以上には思えない――俺はそう言ったよ」
意外だった。そこまで本気できた優雅に対してもはっきり僕のことが好きだと言ってくれたことが。
素直に喜べるような状況ではないけれど、その言葉自体は嬉しくてちょっとだけテンションが上がる。ぽっと頬が赤らんだ気がした。
(やっぱり、僕ってチョロい)
「それで、優雅はなんて?」
「だったら試してみようか? って。おまえのその気持ちが本物か。しばらくおれを恋人として扱ってくれよ――『恋人ごっこ』するってことだな」
自信家の優雅らしいと思った。たぶん彼はそうすることで、やっぱり陸郎が僕ではなく自分を好きなのだと自覚する、そう思ったのではないだろうか。
『恋人ごっこ』は僕の耳に痛い。僕も同じ提案をしたからだ。でも優雅のように自信があってのことではなく、少しの間だけでも陸郎と近づきたかったからだ。それに陸郎に本当の恋人がいたわけではない。状況はまったく違う。
「俺は馬鹿なことを言うな、そんなことはしない、と断ったんだが」
陸郎は断った。でも実際には『恋人ごっこ』していたわけだ。一気に話さないことにじりじりしてくる。
「じゃあ、なんで『恋人ごっこ』することになったんですか?」
「……親に言うと脅された」
「優雅のやつぅ~」
思わずちっと舌打ちをしてしまった。これは単なる脅しではない。優雅なら絶対やる。
「そっちの親にもうちの親にもバラすと言った――俺もいずれはカミングアウトしようとは思っていたけど、今言われては引き離される、それが嫌だった。俺たちまだ始まったばかりだ」
確かにそれは困る。
陸郎の両親がどういう考えを持っているかはわからないが、僕の両親に関しては猛反対するに違いない。僕のことがどうというよりは世間体だ。
「情けないだろ」
「そんなことないですよ。僕とのことをちゃんと考えてくれてるんだなぁって、嬉しくなりました」
「温……」
二人の間にあった距離が少し縮まる。
「それで……その『しばらく』という期間が卒業式まで、ということだったんですか?」
「ああ。あとその他にも条件があった」
「条件?」
「その間、温とは会わないこと。連絡を取らないこと」
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