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第14話 イヴの夜【R18】
玄関のドアを閉じた瞬間から、それまで抑えていた欲望が一気に爆ぜた。
二人とも、示し合わせたように唇を貪り合う。何か言葉を交わした訳でもないのに、お互いがお互いを欲して止まない。玄関先できつく抱き合って肌に触れ合えば、緊張と昂りに震える心臓からじわじわと温かい血が押し流されて、外の空気ですっかり冷えた身体にじんわり温かい体温が戻ってくるのを感じる。
もう、一瞬でも離れたくない――
もつれ合うようにしながらバタバタと靴を脱ぐと、互いに着ていた服を剥ぎ取り合って廊下に脱ぎ散らかす。ベッドの上に傾れ込むと、リョウは唇を離して押し倒した崇人の顔をじっと見つめた。
リョウの荒んだ呼吸と艶めいた眼差しに、崇人の下半身はゾクゾクッと過敏に反応した。
自分が今、どんな表情をしているかなんて分からない。きっと、とんでもなくいやらしくて、物凄く飢えた顔をしているはずだ。そんなにまじまじと見ないでよ。でも、早く触って抱きしめて。リョウでいっぱいに満たして――
僅かに残る羞恥心が崇人の頬を蒸気させて、潤む瞳で訴えた。小さく震える閉じた唇を、リョウは無理にこじ開けて舌を勢いよく捻じ込んできた。熱くて柔い粘膜同士が擦れて、トロトロに蕩けそうになる。口内を執拗になぞられて吸われ、だんだんと崇人の瞳が惚けて目の前が霞んできた。
頭の芯がクラクラしてぼんやりする。けれど、ペニスはガチガチに硬く勃起してる。先端から甘い期待に興奮した体液がぬるっと溢れて、触って確かめなくとも履いているボクサーパンツを濡らしているのがわかる。夢中で唇を欲しがる崇人の、苦しそうにしている膨らんだ下着を一気に剥ぎ取ってしまうと、リョウは屹立するペニスを片手で包んで上下に扱いた。
「あっ……はっ。ん、ああっ……!」
リョウの温い手のひらの体温が、皮膚にじんわり熱を伝える。握っているのは明らかに自分の手じゃない、目の前にいるリョウなのだとシラフの今夜は否が応でも強く意識させられる。
「崇人、これ好きだよな」
そう言って、リョウは親指を立てて先端をグリグリ刺激してくる。
「あっ!な、何で……知って……」
驚きと恥ずかしさ両方の感情が入り混じりながら、リョウの弄る指先に視線を向けた。与えられる快楽の刺激に、崇人の腰は沿って自然にヘコヘコ動いてしまう。
鈴口をクニュッと押し分けて親指を滑りこませると、プクッと興奮した露が次から次へと溢れ出して来た。
「うっ、はぁ。ダメだ。そこ、そんな……」
ピンポイントに攻められて、快感に抗えず崇人は全身を震わせて善がった。リョウはその様子を嬉しそうに見つめながら、崇人の耳輪に舌を這わせて舐めた。ヌルッと舌が這って、唾液の弾む音がチュクチュクと、小さく耳元に響いた。
ペニスと耳を一緒に弄られて堪らなくなった崇人は、ジンジン疼く後ろをシーツへ擦り付ける様にしてモジモジしていた。
「後ろ、触って欲しい?」
へこへこと浮いた腰を、愛おしげになぞりながらリョウが聞いた。
「あっ、あのさ……」
思わず口がまごついてしまう。
一瞬だけ躊躇しつつも、崇人は思い切って脚を広げて、窄まった後ろの孔を恥ずかしそうに開いて見せた。
「準備……してきたんだ……」
顔を真っ赤にして、羞恥に震える。でも繋がれずにこのまま終わるなんて、そんなのは嫌だ。
リョウは目を見開いて少し驚く。照れながら秘部を見せつける崇人の姿を目の前にして、湧き出て溢れる感情を隠す様に一瞬黙って下を向いた。それからゴクリと唾を飲み込んで顔を上げた。
「今日、そのつもりで来てくれたんだ」
「だって、クリスマスじゃん。……期待するよ。リョウと、そうなりたいって」
崇人のペニスが素直にピクピクと動いた。言葉にするとより現実味が増して、早く二人で気持ち良くなりたい想いが増す。期待に膨らむ崇人のペニスを再びそっと右手で掴む。リョウは体を寄せてデニムのジッパーを下ろすと、自分の硬く反り勃ったペニスを取り出して擦り合わせた。我慢に溢れていたお互いの蜜がネチャネチャッと絡まって、鈍い音を奏でだす。崇人の唇をぺろりと悪戯っぽく舐めてから、ゆっくり舌を絡ませて深くキスをした。
大きく広げられた脚。露わにされた秘部。
こんなにあられもない恰好を自分以外の誰かへ曝け出しているなんて信じられない。でも、リョウの体温と触れた肌と肌の心地良さに、理性なんてとっくに何処かへ飛んで行ってしまっていた。生温かな剝き出しの素肌を触れあう事に、今は無我夢中で溺れるだけだ。
お互いの気持ち悦い場所を好きなだけ触れて、擦り合う。そのうち、しっとりと蜜液が溢れ出した後ろに、リョウの中指がつぷぷっと、ゆっくりねじ込んできた。蜜が指と絡まってヌチヌチいやらしい音と一緒に、胎の中が熱くなる。関節を曲げて、崇人の悦いところを探して掻き混ぜながら奥へと進む。
「っつ!……ああっ!」
体の奥でビリビリッと衝撃が走って、思わず身を捩らせた。
「ここ、気持ちいい?」
「あっ!はぁ……そこ、何か変っ……」
「そっか。じゃ、もっと弄ろうな」
リョウって、意地悪だ。押し寄せる快楽の波に、こんなにも息を切らせて耐えているのに、何て嬉しそうな顔するんだ。敏感にすぐ反応してしまう僕を眺めて楽しんでる。もうダメだ。リョウの指が僕の一番弱くて悦い場所を刺激しすぎる。これ以上探られたら理性も意識も失って、きっと気絶してしまう。
「リョウ……もう、大丈夫だから……」
確認しなくても分かる。ドロドロに溶かされて、散々、愛でられた蜜穴からトロリと愛液が流れ伝った。リョウが欲しくて欲しくて堪らない。懇願する眼差しを向けて、早く貫いて欲しいと期待した。
ぐんっと脚を持ち上げられると、リョウのガチガチに硬く屹立した熱杭が、秘部にぴたりと当たってゆっくり挿入してくる。抑えきれない劣情が満ち満ちと崇人の熱い胎の中を満たしてゆく。
「っリ、リョウ!キス……して……」
こじ開けられながら、崇人は手を伸ばして震える指先でリョウの髪に触れた。手櫛で髪をひと撫でしながら彼を強く求めた。
「崇人――」
低くて甘い声が、耳元に響いて疼く。優しく唇に触れると同時に、リョウの激しさが堰を切ったように溢れ出してきた。呼吸もままならないほどの深いキス。
リョウ、リョウ――心の中で何度も何度も、彼の名前を反芻して呼んだ。やっとリョウに触れられた。このまま溶け合って、二人一緒に同化してしまいたい。幸せで、嬉しくて、胸がいっぱいで苦しい――
リョウの熱に翻弄されながら、崇人は胸の内でそんな想いを強く噛み締めていた。
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