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第11.5話
玄関の扉を乱暴に閉めると、バタンという大きな音が家の中に響いた。
先週から両親は出張でいない。
自分の中にくすぶる気持ちを、どうしたらいいのか分からない。
制服を脱いで普段着に着替え、落ち着くためにコーヒーを淹れる。
あまり飲まないが、こういう時は飲みたくなる。
コーヒーを一口飲んで、テーブルにカップを置いた。
それから、知り得る情報を頭の中で順番に整理していく。
先生は「突然だった」と言っていた。
いくら突然でも、昨日今日で決まった話じゃないはずだ。
その前から話があったとしても、冬真さんたちが動いたのは先週より前だろう。
蓮の転校、引っ越しが確定したタイミングで、両親にも話がいっているはずだ。
そのタイミングが、幸か不幸か、両親の出張中だったということ。
――そのタイミングを狙ったか?
うちの両親を介入させることなく行動に移した。
たしかに蓮の家の問題ではある。
でも、ほんの少しでも僕が絡んでいるのであれば、うちの両親は絶対に動く。
「……そういうこと」
頭の中が、だんだんとクリアになってくる。
ポケットに入っているスマホを取り出し、発信履歴から番号を選んだ。
「……時差があるのにごめん。――うん、湊」
電話の向こうで少し眠たげな声が、まずは落ち着けと言う。
帰るまで動くな、とも。
「……うん、事実確認をしたかっただけ。僕も学校の先生の話で、今日知った」
僕の言葉に相手が息を呑む音と、小さな舌打ちが聞こえる。
その苛立った様子に電話の向こうから、お前も落ち着け、と宥めるような声が重なった。
「僕は僕で動かさせてもらうよ。帰ったら連携はする。――うん、ごめんね」
まだ何か言っている相手の声を、途中で遮るように通話を切った。
スマホをポケットに戻す。
立ち上がり、腰に手を当てて、肺の中の空気を全て出すように深呼吸する。
どうせ外側にいるなら、外側からアプローチをするしかない。
蓮のことを、僕たちのことを、せめて当事者として話をさせてほしい。
そう思いながら、帰った時とは違い、蓮の家に向かうために静かに玄関の扉を閉めた。
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