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第24話─蓮─
「紅ショウガは最初から乗せる派?」
目の前で晴臣さんが嬉しそうな顔をして、自分の牛丼に紅ショウガを乗せていく。
「乗せないです」
紅ショウガの入った小袋を受け取り、置いていると、あからさまに残念そうな顔をして俺を見る。
「人生損してんなぁ」
残念……というより、呆れた表情になり、俺が除けていた紅ショウガの小袋を取り、
袋を破いて俺の牛丼の上に、有無を言わさず乗せていく。
「ちょ、乗せないでください。自分のタイミングで食べたい派なんで」
突然の行動に驚き、自分の牛丼を死守するように手で隠す。
「いいじゃねぇか」
「よくない!」
「何事も経験だ!」
手をどかせて、俺の牛丼の頂上には紅ショウガがこんもりと乗せられてしまった。
「なんてことしてくれてるんですか」
「どうせ食うだろ。一緒に混ぜて食っても美味いぞ」
悪びれることなく言う晴臣さんが、牛丼をかきこむ。
それを見ながら、意外と美味いと感じてしまう牛丼を俺もかきこんだ。
部屋に戻ると、机の上に伏せたままのスマホが目に入った。
――ああ、スマホを持たずにメシを食ったんだっけ――
スマホを手に取るとメッセージ受信のマーク。
画面のロックを解除すると「湊」の文字が浮かんでいた。
一度、大きく息を吸ってから、おそるおそる画面を開く。
「久しぶり。元気だった?」
たったそれだけなのに胸が締めつけられる思いがした。
「……ごめん」
誰に言うでもない言葉をつぶやく。
嬉しそうな、悲しそうな表情をしている湊が脳裏に浮かんだ。
「……本当にごめん」
返事が来て嬉しい。
でも、それ以上にあいつに対しての罪悪感に押しつぶされそうになる。
指先が感情に追いつけずに震えていた。
返事をしようとして、画面を叩くがうまく打てない。
『元気だよ』
消す。
そんなことを言いたいわけじゃない。
『ごめん』
色々なことが重なったからといって、あいつにしたことはこんなことで済むことじゃない。
謝ればいいと思っているみたいで、嫌だった。
震える指先で何度も打っては消す。
画面の中で、短い言葉だけが行き場をなくして消えていく。
分かっている。自分勝手な思いだ。
また、勝手に走ってあいつを傷つけるかもしれない。
目は通話ボタンから離せなくなっていた。
押したらダメだ。
今じゃない。
落ち着くためにもう一度、湊のメッセージを見た。
『久しぶり。元気だった?』
この言葉の奥に、あいつがどんな顔で送ってくれたのかを考えてしまう。
声が聴きたい。
気がついた時には、コール音が鳴っていた。
一回、二回、三回……
何をしているんだ、俺は。
相手の事も気遣わずに。
電話を切ろうしたと瞬間だった。
「……蓮?」
戸惑う声がスマホの向こうから聞こえてきた。
「……湊」
「……電話……してくるなんて……どうしたの?」
「ごめん……お前に謝りたくて……」
少しの沈黙の後、湊が小さく息を吸う音がした。
「……そうだね。君は僕に謝罪をしなくてはならないね」
湊の声が震えていた。
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