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第27話─湊─
あの電話から数日が経った。
蓮はあれから短いメッセージを送ってくれるようになった。
朝の挨拶や、勉強のこと、学校であったことなど。
返信することもあれば、しないこともある。
突然、連絡が取れなくなったあの日。
何度もメッセージを送り、鳴らないスマホを握りしめた夜。
DMですら、蓮からの返信だと期待していた日々。
届くメッセージに一喜一憂することに、少し疲れていた。
それでも、蓮からのメッセージが途切れることはなかった。
―おはよう。今日は英語の小テストがある―
『おはよう、君は英語苦手だったよね』
―学校で友達がアイドルグループの話をしてたんだけど、全然分からなかった―
蓮はそういうの、興味ないもんね。
―晴臣さんが卵焼きを作って真っ黒に焦がしてた―
晴臣さんともうまくやれているんだね。
挨拶なんかは、まだすんなりと返信が打てる。
それ以外は、画面をなぞっては指が動かなくなってしまう。
それでも翌日には――
―おはよう。昨日の夜シャンプーと間違えてボディーソープで頭を洗ってた―
蓮からメッセージが届く。
蓮、君はそこにいる?
遠く離れていてもそこにいてくれる?
『おはよう。髪の毛が大変になったんじゃない?』
少しだけ、少しだけ蓮の傍に行きたい。
君のその姿を見てみたいよ。
そんな他愛のないやりとりが何日も続いた。
気がつけば、蓮からのメッセージを待つことへの恐怖が薄れてきた頃だった。
―進路についてはそっちの大学を受験しようと思っているんだ―
そんなメッセージが飛び込んできた。
『……そうなんだ』
なかなか返信できず、彼のメッセージに対してこう返すのが精一杯だった。
―第一志望にいけるかどうかギリギリなんだけど、頑張るよ―
『……君ならできると思うよ。応援してる』
どこの大学?
あの家から通うの?
部屋を借りるつもりなの?
そんな思いが頭を巡るなか、絞りだした言葉だった。
―湊は?―
『僕も絶賛勉強中だよ。お互い頑張ろう』
―もし、受かったら……―
蓮のメッセージが止まった。
スマホを持つ手が、震えた。
―お前に会ってもいいか?―
すぐに返信することができなかった。
呼吸が、わずかに乱れた。
幻影から君は逃れられたの?
そのうえで僕に会いたいと思ってくれている?
君に言った憧れの残滓のままではない?
『僕』を見ると言った君に会うのが怖い。
でも……君がその影を抱きしめたとしても、
僕は受け入れてしまうのかもしれない。
寂しさと喜びを抱いたまま、君の胸に抱かれることを選ぶのだろう。
そんな未来を想像してしまう。
『いつか、笑って会えるといいね』
蓮に返信ができたのは、翌日の朝になってからだった。
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