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第4話
1人になった部屋で、先ほどの事を思い出した
美風と宮本は、しばらくしてから部屋を出て行った
それは重い空気に耐えられなくなったわけではなく、晶に考える時間を与えるための行動だった
静かな部屋では嫌というほど考え事をしてしまう
だから先ほどの美風の言葉が離れない
話し合うって、一体何を?
何もない。
ただ晶が奏斗に執着していて、奏斗は晶に囚われている。それだけだ
確かにあの日旅館で、奏斗は晶を家族として許してくれた
だが、それは仕方なくしたことで、決して晶のためじゃない
ただ女々しく嘆く晶が鬱陶しかっただけだろう
そしてそれはあくまで、家族としてだ
———セックスとかすんの?
先の美風の言葉が頭に残る
そしてその質問の答えとしては、首を横に振るしかない
奏斗が許すのは家族としての触れ合いのみで、恋人のようなことはしない
その一線は酷く曖昧だが、わかっているのは、奏斗はそういう行為が嫌いだということ
大前提、奏斗の嫌がることはしたくない
そして晶は、奏斗のためだけに存在しているのだ
だが確かに、美風の言う通り最近は我慢が効かない
限界というものが、近いのだろうか
少し頭を冷やそうと、気分転換のためにベランダに出る
こちらのテラスドアにも、奏斗が勝手に出れないよう頑丈な鍵をかけている
今となってはこれが必要なのかわからないが、騒音が嫌いな奏斗は自ら出たがることはなく、今の所困ってはいない
だが、こういうところに晶の押し付けが表れているんだろう
ベランダに出て閉めようとした鍵から、そっと手を離した
「……さむっ」
外は凍えそうなほど寒く、上着を羽織っていない晶の体は一度ふるりと震えたが、このくらいがちょうどいい
心地よい雑音と共に、風が耳を掠めていく
高いビルから覗く風景は、特に何もなく灰色一色だが、今はそれが何より落ち着く景色だった
コン…
不意に、背後から控えめなノック音が聞こえて振り返る
見るとそこには、寝起きであろう奏斗が目をこすりながら立っていた
「開いてるよ」
ガラス越しに言ってやると、少し驚いた表情を見せたが、何事もなかったようにテラスドアを引いた
「ミカは」
「宮本さんと帰った」
「…」
それを聞いた奏斗は落胆したように黙るが、しばらくするとスリッパを履いて晶の隣までやってきた
奏斗の方から近寄ってくるのが珍しいが、場所が場所だ
それよりも、奏斗の行動一つ一つに気を向けることに必死だった
奏斗は手すりに手をかけると、徐に下を覗き込む
晶はその動作にびくりと肩を震わすが、そんな晶に奏斗は大袈裟だ、と言いたげにじとりとした目線を向けた
「なに」
「お、落ちるかと」
「子供じゃ、あるまいし」
そう言って奏斗は再び下を見下ろす
それをバクバクと心臓を鳴らしながら、じっと見つめていた
「ここ、何階」
「…29だよ」
「即死だ」
「ダメだよ、絶対」
「………冗談」
下を覗き込みながら言われた言葉に、晶は強く反応する
冗談と言えど、奏斗が言うと洒落にならない
「寒いから、中入ろう」
これ以上奏斗をベランダに置いては、晶の心が持たないだろうと、適当な理由をつけて奏斗を部屋へ入れた
奏斗は言われるがまま晶に手を繋がられ、部屋に連れられる
その場しのぎの理由をつけたつもりだったが、確かに奏斗の手は冷たく、体も冷えているようだった
「冷たい…お風呂沸いてるから、入ってきな」
「ん」
言ってやると、奏斗はノロノロと風呂場へ歩いて行った
再び1人になった晶は、小さくため息を吐いた
奏斗の後、晶も続けて風呂に入った
冬風に晒された体は思ったよりも冷えていて、肩まで湯に浸かった時はとても気持ちよかった
サッパリした気で、リビングに戻ると、奏斗は濡れた髪のままソファに寝転がり、テレビをぼーっと眺めているところだった
「風邪引くよ」
奏斗を起こして髪にタオルを被せる
奏斗はされるがままに晶に髪を拭かれていた
伸びたな、そろそろ切らないと
そんなことを思いながら、持ってきたドライヤーで奏斗の髪を流す
真っ直ぐだった髪が、いつものくりくりの癖毛に戻るころ、晶はおもむろに奏斗を後ろから抱きしめた
「………」
「…今日、楽しそうだったよね。ミカさんと、すごく仲が良さそうだった」
突然何を言い出すんだと、奏斗は訝しげに晶を見るが、晶は構わず奏斗の首元に顔を埋めた
——話し合わなきゃね。手遅れになる前に——
先ほどの美風の言葉が頭をよぎる
今までそんなこと考えもしなかった
これ以上奏斗に嫌われたくない一心で、必死に塞ぎ込んでいたものを、今日あったばかりの赤の他人に言われたくらいで、溢れ出してしまうほど、晶は弱かっただろうか
悩みはしたがやはり、晶も本心では限界を感じていたのだろう
「俺…俺、今日、ずっと我慢してた…」
小さく呟くような声でも、耳元で息を詰まらせる音は、しっかりと奏斗にも聞こえたはずだ
奏斗は眉を顰めて晶の顔を覗こうとするが、後ろから抱き込む腕の力がぎゅぅっと強まって敵わなかった
「…ほんとは、もう、俺以外に触れないで欲しい、話さないで欲しい」
栓を外してしまえば、止めどなく溢れてくる言葉は、異常と言えるだろう
わかっているが、これまで我慢した分が、一気に溢れ出てしまって、晶も止めることができなかった
「ねえ兄さん。兄さんは俺のこと、どう思ってるの?」
奏斗の顔が見れない
同様に、自分の顔も見せられない
きっと奏斗は晶に軽蔑の目を向けるだろう
呆れた声で、鬱陶しい、と言われるのだろうと晶は思っていた
だが、晶に返ってきた言葉は、予想外のものだった
「…わからない」
しばしの空白のあと、奏斗は続けた
「でも、嫌いでは…ない…」
晶は思わず顔を上げる
拒絶されると思っていた
奏斗にはその権利がある
罵倒されようと、侮辱されようと、晶は奏斗に何も言えない
それが普通だからだ
それでも奏斗が嫌いじゃないと言ったのは、少しでも晶を気にしてくれているということだろうか
普通じゃない晶を、認めてくれると言うのか
そう気づいた途端、晶はとても嬉しくなった
目の奥がつんと痛くなり、大きくなる心音とともに勝手に口から音が漏れる
「好き。俺は兄さんが、1番好きなんだ」
上げた顔を、再び奏斗の肩に埋める
奏斗は少しくすぐったそうに身をよじるが、晶は離さまいと抱く腕に力を入れた
しばしその体制のまま時間が過ぎたが、満足したのか晶は、ゆっくりと体を離した
「…ごめん、さっきは変なこと言って。少し、寂しかったんだ…」
眉を下げながらそう言うと、晶は立ち上がってその場を離れようとした
が、奏斗はそんな晶の袖を、少しばかりの力でくんと引いた
晶は慌てて振り返り、奏斗を見る
いつもの伏せがちな奏斗の目は、しっかりと晶を捉えていた
「じゃあどうすりゃ、アンタは寂しくなくなんの」
そう言った奏斗の表情は少し不機嫌そうに歪められていた
言葉の意図がわからず、晶は固まってしまう
彼の表情だけでは、何を考えているかわかりにくい
晶が答えられずにいると、奏斗は再び、くんと軽く袖を引いた
晶は、少し狼狽えるが、触れた奏斗の指先に、自身の熱が集まるのを揚々と感じた
「…触らせて、ほしい」
「好きにすれば」
そう言って奏斗はぷいと顔を背けてしまった
冷ややかに言い放つ
奏斗は、いつも話す事さえ億劫に返事をする
そんな彼が、晶を気にしてくれたのだと、それだけで気持ちが浮き立ってしまう
未だ素っ気ない態度の奏斗の手に、晶の指を絡ませる
奏斗の手は冷たく、彼の体温が低いのか、はたまた自分の熱が集まったせいか
少しだけ、触れるだけ。
募る欲を理性で無理矢理抑えて、奏斗の手をそっと自分の唇に寄せた
控えめにちゅ、と手の甲に口付けると、奏斗はぴくりと肩を揺らすが、ただじっと見つめるだけで何も言ってこない
続けてもいいのだろうかと、おずおずとしながらも、今度は手のひらに唇を押し付けた
ちゅ…ちゅ…
晶はそこからは遠慮が消え、次々と奏斗の体に口付ける
美風が触れた手や腕、肩になぞるように唇を落とす
しっかりと跡が残るように
美風が嫌いなわけではないが、奏斗の体に他人が触れたと思うと、本当は気が気じゃなかった
そんな自分の気持ちを落ち着かせるように、丁寧に、口付けるのだ
「…っん…」
奏斗をソファの背もたれに押さえつけるように、覆い被さる
体重が重いのか、ときどき空気が漏れたような声が響いた
晶はゆっくりと唇を這わして、その流れで奏斗の両頬を手で覆う
整った顔についている、より一層色づいた、奏斗の唇。
晶の視線はそこに釘付けだった
「………っ」
ダメだ。キスはできない。
そこに、ゆっくりと顔を近づけた晶だったが、あと少し、というところで押し留まった
奏斗が許すのは、家族の範囲。
普通の家族は、キスはしない
そう思い直した晶は、名残惜しそうに奏斗の顔を見つめる
まるで子犬が主人にねだるように、奏斗を見つめた
伸びた前髪から、奏斗の目が覗く
やはりその瞳に温かさなどない
それでも欲に悶える晶をまっすぐ見つめるのだ
傷つけてはいけない
そう己に言い聞かし、親指で奏斗の唇を撫でるだけに抑える
端から端へ優しく撫でる
それで、終わり
と、親指を離そうとした時、奏斗がかぱり、と口を開けた
突然のことに晶は固まる
艶やかな赤い舌が見え、目が離せなくなる
そんな晶を他所に、奏斗は開いた口からチラリと舌を覗かすと、何を思ったのか、口端に残る晶の親指を咥え舐めた
「…ん…」
「…っにいさん?」
それはとても控えめで、いじらしい
これを見て我慢しろとは、とてもじゃないが無理がある
晶は途端に頭が空っぽになる
押し寄せる欲情に負け、晶は噛み付くように奏斗の唇にキスをした
「ずるいっ、それはずるいよ…」
「んっ、ふぁ…」
晶は苦言を漏らしながらも奏斗の唇を貪り食う
奏斗はそんな晶を受け入れ、目をそっと閉じた
その動作を同意だと受け取った晶は、ついに歯止めが効かなくなってしまった
「んく…あぅっ、んんっ」
奏斗の口から小さな吐息が漏れる
もっと、もっとその音が聞きたいと、晶は奏斗の口内を蹂躙した
舌を入れ、上顎をなぞり、奏斗の舌に絡ませる
奏斗は息苦しさから眉を顰め、閉じれぬ口からはしきりに唾液が垂れ、奏斗の鎖骨に落ちる
それすらも無駄にしたくなくて、晶は今度は鎖骨から顎にかけてぬらりと舐めとった
「はぅっ、さいっ、あく」
「んぐっ」
その感覚に、奏斗はふるりと体を震わせる
流石にやり過ぎたか、一心に舐め回す晶の顔を押し除けた
はっとした晶はすかさず奏斗の顔を見るが、奏斗は激しい口付けにより息がままならず、顔を赤くし涙目で、必死に肩を上下させていた
…えろ…
出そうになった言葉を咄嗟に飲み込む
ごくりと喉を鳴らしたあと、奏斗の体を抱き上げる
奏斗は驚き、落ちない様にと慌てて晶の首に腕を回した
連れていくのは、もちろん寝室
前は別々に寝ていたが最近は共に寝ることが日常となっていた
そんな2人のベッドに奏斗の体を下ろす
奏斗は暴走気味の晶を前に後ずさるが、もちろん晶が逃すわけもなく、奏斗の服に手をかけると、勢いよく捲った
「っ、おいっ」
「汚れちゃったから、脱がすだけ、ね?」
先ほど垂れた奏斗の唾液のシミを指さす
ちっぽけなシミだった
それでも晶はそれを口実に奏斗の服に手を差し入れる
止めようとする奏斗の体をシーツに押し付けて、堪能するように薄い腹を撫でた
ビクッと体が震えて、その反応が楽しくて、ついに服を全て剥ぎ取ると、露わになった肌色に再び唇を落とす
「ちょっ、まっあぅ」
「はあ…俺の、おれの…」
譫言を言いながら奏斗の体に夢中な晶に、制止の声は届かない
必死に身じろいでもがいてみたが、その度に手首を掴む力が強くなる
「あきっ、ら、やめっ、んぅう!」
奏斗はやめてもらおうと彼の名前を呼んだ
怖い、怖い、怖い。
奏斗の思考に、かつて父に強要されてきた行為がフラッシュバックする
痛く、苦しく
人として扱っていないような力任せの父の姿が、晶の姿と重なる
気色悪い、拷問のような行為。
晶とは、そうなりたくないのに
自分なりに晶を理解しようと、歩み寄った矢先の行動を早々に後悔した
嫌になって、やっぱりあんな事しなきゃよかったって
気づけばしゃくり上げるような嗚咽が、奏斗の口から漏れ出ていた
「…っ、…っ」
「…にいさ…?」
「ひっ、…うぅ…」
「………あ…おれ、なにして…ご、ごめん、ごめんなさい兄さん…そんな、そんなつもりじゃなくて…」
嗚咽を聞いた晶はようやっと動きを止める
見ると奏斗の手足は小刻みに震えており、顔を蒼白させて、喉からひゅっ、ひゅっと音を鳴らしていた
それを見た晶は慌てて奏斗から距離を取る
晶自身も、自分のしたことにショックを受けているようだ
最愛の人を怖がらせてしまった
後悔と、罪悪感が一気に押し寄せてきて、まるで命乞いでもするように、ひどく青ざめて謝り始めた
「あ、ああっ、ごめんなさい、泣かないで…もう、もうしないから、本当にごめんなさい…」
「んくっ、…やめろって言ったら、すぐやめろよ…」
「ごめっ、ごめんなさい、俺は…」
奏斗はやっと振り絞った声で、晶を叱責する
晶は先ほどの勢いはどこへやら、可哀想なほど縮こまって奏斗から距離を取る
そんな晶の様子を見ては、自分はこんな奴に怯えていたのかと、だんだんと奏斗の気持ちも落ち着いてくる
いつの間にか震えも呼吸も、通常に戻っていた
「もうしない、兄さん、嫌いにならないで…」
「…わかったから、ゆっくり、やれ」
「え…でも、これ以上は…」
「いいから、続けろよ…」
奏斗は意外にも、次の行為を促すように言った
晶は眉を顰めて奏斗を見る
泣いた目元は赤く、恥ずかしげに顔が伏せられて、とてもじゃないがこれ以上続けられないと思った
だが同時に、このチャンスを逃して良いのかと、決して健全じゃない考えが頭に過ぎる
奏斗が晶を受け止めようとしてくれている
こんなこと今後はないかもしれない
いやしかし、奏斗を傷つけるわけには…
そんな葛藤が脳内で渦巻くが、晶は結局、目の前のご馳走様を放っておくことはできなかった
「嫌だったら…言って?」
「………」
散々迷った末に、晶は再び奏斗に覆い被さる
今度は優しく、丁寧に手を這わすと、くすぐったいのか奏斗は身をよじる
成人男性にしては細い腰が揺れる様を見ては、晶はやはり喉を鳴らすしかなかった
「んくっ…ふっ…」
「兄さん、ここ…」
「あぅっ…!」
晶はおもむろに奏斗の局部に手を伸ばす
奏斗のそこは、快感を拾ってしまい、控えめに立ち上がっていた
「触って、いい?」
「………っ」
今度こそ許可を得てからと、晶は奏斗に聞く
奏斗はもう触っているじゃないか、と言いたげに晶を睨むが、拒もうとはしなかった
それを見た晶は、ゆっくり奏斗の下着を脱がす
ついに全ての布が剥ぎ取られ、奏斗の恥部が露わになった
晶は奏斗の姿を見るなり目を細める
艶かしい体を隅から隅まで睨め回し、満足すれば今度は奏斗の恥部に目をやった
奏斗のそれは恥ずかしさからか、小さく震えている
晶はゆっくりそれを握り込むと、奏斗の体がびくりと跳ねた
「あっ…ふぅっ」
「……っ」
晶は握り込んだ手を優しく上下に動かすと、奏斗の口から嬌声が漏れ、ガクガクと腰が揺れた
晶は膨れ上がる欲望を必死に抑えながらも、奏斗の反応を存分に見やる
いつぞやに風呂場でもこんな事をしたと思い出す
その時も奏斗は恥ずかしそうに顔を赤らめていた
奏斗の反応を伺いながらも、晶はそれを優しく包み、先端を軽く刺激してやると、途端に奏斗の体が跳ねだし、快感で漏れる声を必死に手で抑えていた
「んっ…くっ…」
「…声、我慢しないで…」
晶は我慢する奏斗を見ていると胸が苦しくなる
見せて、聞かせて、曝け出して欲しい
そんな思いから懇願するように呟くと、奏斗の口を抑える手をそっと払いのけ、硬く結ばれた唇に、自分の唇を押し付けた
それまで閉ざされていた唇が小さく開く
晶はその瞬間を見逃さぬよう、小さな隙間に舌を滑り込ませた
「んあっ、んむっ、んんぁ…」
やっと聞こえてきた奏斗の甘い声
それはまるで歌を歌っているかのように美しかった
もっと聞きたいと、握る手の動きを早め、奏斗の胸にある突起を、きゅっと指で摘んだ
奏斗はより一層艶やかな声を漏らした
しばらく刺激していたが、奏斗は体を震わせるだけでなかなか絶頂には及ばなかった
晶の手に握られたそれはすぐにでも欲を出したいはずなのに、後一歩の快感が足りないようだった
まさかと思い、晶は握ったそれよりも後ろの窄まりに手を伸ばす
前から垂れた愛液で、そこはしっとり濡れていた
「…あっ…ん…」
「……ここ、触っていい?」
つんと指で叩くと、奏斗の視線がそこに向く
苦しげに眉は潜められ、今すぐにでも解放されたいと、まるで待ち侘びるかのように視線が注がれる
奏斗は恥ずかしそうに、顔を手で隠しながらも、小さくコクリと頷いた
それを見て晶はゆっくりその蕾に指を入れていく
長らく使っていなかったそこは晶の細い指をきゅうと締め付ける
晶は何度も固唾を飲み下す
ゆっくり、丁寧に。
じゃないと奏斗が傷つけてしまうと己に言い聞かせながら、中を解していった
撫でるように指を動かすと、奏斗の前が反応する
だが、まだ充分じゃない
晶はしっかり蕾を解すと、二本目の指を入れた
増えた圧迫感に奏斗は喘ぐが、止めはしない
二本の指で優しく愛撫してやる
しばらく中で動かしていると、柔らかな膨らみに触れた
ここだ
「はっ、う、ああ———っ!」
晶はそれをトントンと指で叩く
途端に奏斗の腰が浮く
仰け反った喉仏から、声にならない悲鳴が上がった
だがほぼ焦らされていたようなもので、突然の快感はその分強すぎたようだった
蜜が出なくなってもしばらく体がビクビクと震える
ぎゅっとシーツを握り、開けっぱなしの口からはいじらしい吐息が漏れていた
「あっ…はあっ…はあ…」
「………うっ」
息を整え、震えを落ち着かせようと奏斗が足を動かす
その際、奏斗の足先に硬いものが当たり、視線を向けた
それは晶のズボンを押し上げ、暗い部屋でもわかるくらい強く主張していた
奏斗の足が当たってしまい、晶も苦しげな声を漏らす
奏斗はそれに気づいた途端に固まった
スッと視線を上に向けると、恐ろしいほど鋭い視線の晶と目が合う
じっと奏斗を見つめ、いつ喰らおうかと隙を伺う獣のように、鋭い目
だが不思議と奏斗は恐怖を感じなかった
ただ彼も可哀想だと、我慢するのは辛いだろうと、快楽に弱くなった頭でぼーっと考える
同時に奏斗の腹の奥が疼く
浅い場所ではない、もっと深いところで。
耐えるように荒い呼吸を繰り返す晶の目の前で、ゆっくりと足を開く
彼に見せつけるように、恥ずかしげにも自分で広げて見せた
「…はっ、はは…にい、さん…」
「ん…」
獣の目が細められ、口元がニヤリと釣り上がる
ゆっくり近づいてくる彼の欲が、奏斗の蕾に当たる
これから来るであろう快楽を想像して、腹がきゅんと締まった
「…挿れるよ」
「ふっ…んぁ」
「…大丈夫、ゆっくり、ゆっくり…」
まるで自分に言い聞かせるように呟く晶は、ゆっくり奏斗の蕾を押し広げていく
指とは比べものにならないくらいの圧迫感を感じた奏斗は、思わず身を捩るが、晶はその腰をガッチリと掴んだ
そっちが誘ってきたのだ
もう、逃がす気はない
晶は掴んだ腰を思いっきり自身の方に引く
入り口で詰まっていた欲は、勢いのまま奏斗の奥を突いた
「はっ、ぅああ"っ!!」
「…くっ、ふっ」
一気に攻めてくる圧に、奏斗の体はビクビクと跳ねる
晶も、あまりの狭さに息を漏らすが、大人しく止まっているわけにはいかなかった
「動くよ…」
「んっ!ああっ、はぅう」
晶はゆっくりと腰を動かす
ギリギリまで引き抜いて、肌同士がぶつかるまで奥に挿れる
奏斗はその度に甘い声を漏らし、背を仰け反らせる
あまりの強い快感に、奏斗は耐えるよるに目をぎゅっと瞑った
瞳が見れないと、少し残念に思った晶は、空いている手で奏斗の頬を撫でた
すると奏斗の長いまつ毛から、ゆっくりと瞳が覗く
それは、いつも見ていた気怠げで、正気のない目ではなく、はたまた睨みつけるような冷たい目でもなかった
快楽の涙で潤んだ、人間味のある瞳。
今まで何度も人形のように思えていた奏斗
極端に口数も少なく、動かず、ただ時が過ぎるのを待っているように生きてきた彼の、初めてみる表情
息もしてるし、心臓だって動いてる
そんな当たり前なこと、ずいぶん前からわかっていたはずなのに、不思議となぜか、たった今初めて晶は実感できたのだ
兄は、奏斗は、生きているのだと。
そこからはもう、歯止めが効かなかった
「ああ"っ、まっ、あぅう!」
「にいさっ、ああ、兄さんっ!」
快楽に悶える腰を何度も自分に引き寄せる
ひっきりなしに聞こえてくる嬌声に応えるように、首や肩、いろんなところに跡をつけてやった
愛しい、愛しい、俺の兄。
細める目も、シーツに縋る姿も、歌声のような喘ぎも、全て誰にも奪われないよう、印をつけておかなければ。
この光景をどれほど強く望んだことか
花が散ったように跡がついた奏斗の体を眺めて、晶はようやく満たされた気がした
「…ごめん、兄さん」
「…うるさい…」
疲れ果てて動かなくなった兄を抱きしめ晶は頬ずる
奏斗の出した声は、ひどく掠れていた
それもそのはず、奏斗は日が沈んでから登るまで、何時間もの間休みなく、ベッドで揺さぶられていたのだから
流石にやりすぎてしまったと、晶は少し反省した
謝る代わりにふわふわの癖毛を撫でてやると、涙で濡れたまつ毛をふるりと震わせる
赤くなった目元をそっと撫でると、奏斗は薄ら目を開く
その瞳はいつもの冷たく睨む目だったが、晶はがっかりすることもなかった
見たくなったら、またベッドの上で見せてもらえばいい
そう口元に笑みを浮かべる晶を見て、何か悪い勘でも拾ったのか、奏斗は晶に背を向けてしまった
「…もう、しない…」
「シないの?」
「つかれる…」
「でも兄さん、すごく気持ちよさそうだったよ」
「…」
黙る背中に晶はそっと近づいて、晒された首筋にキスをする
奏斗はもう、拒むことはしない
それに気づいてしまっては、晶の遠慮はなくなった
遠慮がちなのか、図々しいのか、ハッキリしろよ
奏斗は心の中でそんな悪態をついたことを、晶は知る由もないだろう
晶は体を起こすと、反応のない奏斗を覗き込む
伸びた前髪をどかして、その顔に触れた
奏斗は面倒くさそうに、わかりやすくため息を吐いた
もう疲れすぎて、苛立ちよりも眠気が勝つ
「お昼ごろにまた起こすよ。起きたらミカさんに挨拶しに行こう」
そんな奏斗の目尻に、晶は優しくキスを落とす
反射で閉じた目は、そのまま開けることができなくなってしまった
「おやすみ。俺の兄さん」
お前のものになった覚えはないが。
そんなことを言いたかったが、実際に奏斗の口から出ることはなかった
代わりに小さな寝息が、奏斗の薄い口から漏れ出る
きっと、夢も見ぬほど深い眠りにつくだろう
晶は奏斗が風邪をひかないよう、暖かな毛布を肩までしっかりかけてやった
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