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第6話 【ヨギ視点】おれは、セイリューさまを幸せにしたい
私がヨギを保護した経緯を話すと、二人はヨギにとても同情してくれた。なんと二人も孤児だったらしい。彼らの場合は親を亡くして孤児院に引き取られたとの事だったが、まだ育ててくれる孤児院に引き取られただけでも幸運だろう。
ヨギが死ぬことを前提にここに捨てられたように、もっと残酷な話はいくらでもあるのだ。
「なんか協力できることがあったらいつでも言ってください」
「うんうん、だよな。門番のおっちゃん達に言付けてくれれば、オレたちいつでも助けに来るし」
ライアが真剣な顔で言えば、カーマインも朗らかに笑って同意する。とてもありがたい。いい子達に出会えて良かった。ヨギが外の世界に行きたいと願えば、この子らがきっと助けてくれるだろう。
心配事がひとつ減って安堵する私に、カーマインとライアが菓子をすすめてくれる。
「さ、聖龍様も食ってくれよ。マジで美味いから」
「どれがいいですか?」
「うむ、ありがとう」
すすめに従い菓子を見つめるが、色とりどりで形状も様々、香りもどれもこれも素晴らしく、塔では見ることがない鮮やかで美しい菓子たち前をに迷ってしまった。
「セイリューさま!」
私が菓子を選び始めると、ヨギがバッと顔をあげて私を見る。
「うん?」
「これ! これが一番美味しい匂いがするから、セイリューさまのためにとっといた!」
私は呆気に取られてしまった。こんなに美味しそうな菓子が並んでいるというのに、一番美味しそうだと思ったものを私のために食べずにとっておいてくれたのいうのか。
「ヨギ……!」
なんといじらしい。
幼な子が見せる気遣いに、私は感動してしまった。つい、二人がいることも忘れてヨギをぎゅうぎゅうに抱きしめて「ありがとう」と耳元で囁いたら、ヨギのしっぽがめちゃくちゃに暴れ出した。
「うっわ満足そうな顔!」
「しっぽ可愛い」
二人に笑われてしまっているが、こんなに愛らしいことをされては抱きしめざるを得ない。
「おー、アップルパイか。店主が焼きたてだって言ってたもんな」
「ヨギは優しいね」
二人がヨギの頭をクシャクシャと撫でている。その手を気持ち良さそうに受け入れて、ヨギはとても嬉しそうに笑っていた。
「では、ヨギも一緒に食べよう。大きいから分けても充分に味わえるだろう」
「いいの!?」
「ああ、一緒に食べればきっともっと美味しい」
ナイフで切り分けてやったら、ヨギは勢いよく食いついて、心底幸せそうに「美味しい~!!!」と叫んでいた。口の端に屑をつけて笑う子供の様は、こちらまで幸せにさせてくれる。
アップルパイ、すっごくウマい!!!!
口の中が甘くて、シャキシャキして、サクサクしてるとこもあって、トロッとしてるとこもある。匂いまでウマい! セイリューさまを見上げたら、おれを見ながら嬉しそうに幸せそうにモグモグしてるから、セイリューさまもきっと、すっごく気に入ってくれたんだ。
その顔を見たら、おれまで幸せな気持ちになって、ウマいがもっと、ウマい!!! になった。
おれ、食べないでとっといて良かった。
「セイリューさま、おかし、好き?」
「うん、好きだよ。甘くてとても美味しい」
「そっかぁ」
嬉しくって、えへへ、って笑っちゃう。
セイリューさまはおかしが好き。セイリューさまが好きなものがまたひとつ分かって嬉しい。おれがおかしをあげたら、セイリューさまは喜んでくれるのかな。
セイリューさまに会えて、おれは今すっごく幸せだ。ぶたれないし、ひもじくもない。酒のんでケッてきたりしないし、しっぽを引っ張られたりもしない。頑張ったら褒めてもらえて、あったかいお風呂に毎日入れて、ふかふかのおふとんで手も足ものばしたまま寝たって怒られない。
ごはん、すっごくウマいし、サクねーちゃんとロンは色んなことを教えてくれる。セイリューさまは優しくていいニオイがしてキラキラで、いっしょにいられるだけですっごく幸せな気持ちになる。
たっくさん幸せな気持ちを貰ったから、今度はおれがセイリューさまやみんなを幸せにしたいんだ。
「ねぇ、おかしって、どこでつかまえればいい?」
ライアとカーマインにきいたら、二人は困ったみたいにうーんってうなった。
「お菓子はね、魔物みたいに狩で捕まえたりはできないんだ」
「そうそう、町にはこういうお菓子を売ってる店があってさ、金だして買うんだよ。お前、店いったことある?」
「お店には、行ったことある。お金は自分で使ったこと、ない……」
使い方、わかんない……。ちょっと悲しくなったけど、おれはポッケの中を思い出して耳がピンってなった。
「でも、おれ、お金もってる」
ポッケの中からちっちゃなフクロを取り出してみんなに見せる。「おサイフにしなさいね」ってサクねーちゃんがくれたフクロの中には、ジャラジャラなお金が入っていた。
「マモノを狩って持って帰ったら、サクねーちゃんがくれるんだ。この前ヤク鹿狩って帰ったら、それまでよりもいっぱいくれた」
「へぇ、お小遣いももらってるんだ」
ライアがビックリしたみたいに言ったら、カーマインが笑う。
「今の話で行くと、お小遣いっていうより報酬として支払ってるんだろ。ちゃんとしてるなぁ」
「ああ、なるほど」
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