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第9話 【ヨギ視点】知らない魔物ばっかりだ!!!

ギルドで受付して、ギルドカードってのを貰った。これがあればダンジョンにも入れるし、違う街に行って身分証明にもなるし、倒した魔物もこれがない時よりも高く買い取って貰えるんだって。 ギルドで依頼ってのを受けて誰かのお願いを聞いてお金を貰う事もできるらしい。 すごいカードなんだなって思ってじっくり見るオレに、ライアは丁寧にカードの見方を教えてくれた。ステータスっていってオレの強さとかもここに書かれるんだってさ。 宿屋の手伝いをするためにロンから文字や数字は習ったから、オレでも読める。 ライアとカーマインのも見せて貰ったらオレとは桁が違って、オレはピヨピヨのヒヨッコなんだって思い知った。悔しいけど、今は仕方ない。 「へー、ヨギは拳闘士なのか」 オレのカードを覗き込んだカーマインがちょっとびっくりしたみたいに言う。 「へぇ、珍しいね。武器はどんなの使ってるんだ?」 「えっと……これ。あと、ナイフも時々使う」 オレは拳に巻いてあるナックルを見せた。ほとんど手袋にしか見えないけど、聖龍様は薄いけど丈夫な素材だって言ってた。確かにこのナックルをつけてから、魔物をぶん殴ってもあんまり痛くないし、パンチ力がかなり上がった気がする。 子供の頃は剣とか槍とか色々使ってみたけど、力がついてきたら結局は身軽に飛び回ってキックやパンチでぶっ飛ばした方が早いって思うようになってきた。ナイフは素手で戦うにはリスクが高すぎる魔物に使うための予備だ。 「へー、オレ拳闘士と一緒に戦うの初めてだな。楽しみ」 カーマインがそう言ってくれて、オレはちょっと鼻が高くなった。オレだってサク姉ちゃんたち以外と一緒に戦うのなんて初めてだ。すげえ楽しみ! ワクワクしながら入ったダンジョンは、一層目から面白いことの連続だった。 だって、『聖騎士の塔』にいる魔物と、全然違う! 知らない魔物ばっかりだ! ライアやカーマインに「これは焼くと美味い」「シチューならコレだな」なんて教えて貰いながら、オレはたくさんの魔物を狩った。 聖龍様に貰った『なんでも入るバッグ』に、食える魔物をジャンジャン狩っては入れていく。今日は色んな種類魔物を狩って帰って、聖龍様が好きなのが分かったらまたソイツを狩りにくればいい。サク姉ちゃん達だってきっと喜ぶ。 「一層は全然問題ないな」 「まぁ、『聖騎士の塔』で食料調達とかしてたみたいだから、4層くらいまではソロでも問題なさそうだな」 ライア達がそう言って褒めてくれる。オレは嬉しくって、しっぽをブンブンと振りまくった。 えへへ、オレ、聖龍様にいっぱい美味しいもの、持って帰れそうだ! 「聖龍様、ただいまー!!!」 その日の夜も遅く、日がとっぷりと暮れてからようやくヨギが帰ってきた。 「ヨギ!!! 無事だったか……!」 私は心底ホッとした。 いつになく落ち着かず部屋の中を熊のようにウロウロとしていた私は、崩れるようにソファへと沈む。こんなにも落ち着かぬ気持ちで過ごしたのはいつ以来だろうか。もはや思い出すことさえできぬほど昔なのは間違いない。 この塔の中にいる限り、私は戦闘時は見守ってやる事ができる。サクに叱られてしまうからこれまでついぞ手を貸したことはないが、いざ命を落としそうな程危ない場面がくれば助けてやれるという安心感があった。 しかしここではない何処かでは、さすがに私の遠見もかなわない。私にできることは、ヨギの力を信じて待つ事のみだ。ゆえにこんなにも落ち着かぬ気持ちで待つ羽目になったわけだが。 「聖龍様! オレね、すっごくすっごくいっぱい、美味しそうな肉捕まえた!」 「そうか、ケガはしていないのか?」 「そんなのしないよ! ダンジョンの一層って広いけど、この塔の魔物より全然弱かったぞ」 「そうか」 ホッとする私の前で、ヨギは渡しておいた収納バッグから、次々と魔物を取り出していく。巨大な収納庫と空間を繋げてあるそれは、滅多なことではいっぱいにならない。 ヨギも狩った魔物の中で食せるものはひと通り持ち帰ってきたようで、私の部屋はすぐに肉と認定された魔物が山積みになった。 「随分とたくさん狩ったものだねぇ」 感嘆の声を上げれば、ヨギはちょっと胸を逸らして得意げな顔をする。しっぽがファサファサと揺れて、とても可愛い。 「聖龍様のためにいーーーーーっぱい!!!狩ったんだ!」 「そうか、ありがとう。ヨギは優しい子だね」 ヨシヨシと頭を撫でてやれば、自ら擦り付けてくるような素振りさえ見せる。体も随分と大きくなって狩の腕前が上がっても、まだまだこんな子供らしいところもかいまみえるのがなんとも微笑ましい。 「先に厨房に持って行ってあげても良かったのだよ。これだけあればサクやロンが喜ぶ。きっと新鮮であればある程好まれるだろう」 「うん、そうなんだけどさ。オレは聖龍様のために頑張って狩ってきたから、まずは聖龍様に見せたかったんだ。ねぇオレ、すごい?」 「うむ、ヨギは本当にすごい。たった一日で私のためにこんなにも大量の狩をしてくれたのだな、ありがとう。……とても嬉しいよ」 心から褒めたら、ヨギは私に飛びついてきた。

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