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第15話 【ヨギ視点】オレの戦果

前はどれだけ舐めても「こら、くすぐったいよ」なんて笑ってくれてたのに、このところ聖龍様はこんな風に困ったみたいにオレを止める。 そう相談したらカーマインは、「その方が脈がある」って言ってた。カーマインとライアみたいに、聖龍様と『恋人』になりたいんだって相談したら、カーマインとライアはオレに沢山アドバイスしてくれたんだ。 聖龍様には内緒にしてるけど、本当はロンにもいっぱい相談してる。聖龍様はいつまで経ってもオレを子供扱いしてるけど、オレだってもう立派なオスだ。まだ群れを率いるような力はなくても、番を食わせていけるくらいの甲斐性はある。 獣人的には立派な大人だよってロンも言ってくれたんだから。 そう、立派な大人だ。だって今日だって聖龍様のためにすっごくすっごくたくさん、獲物を狩ってきたんだ。 ああ、そういえば聖龍様の顔が見れたのが嬉しくって、獲物を見せるのを忘れてたな。聖龍様に喜んでもらって、いっぱいいっぱい褒めてもらうんだ。 オレは聖龍様の首から唇を離して起き上がる。跳ねるように聖龍様の上から飛び降りて、収納バッグからたっくさんの狩った魔物を取り出していく。この前そこそこの味だったものなんてもちろん今回は相手にもしていない。 「美味しいね」って聖龍様が笑ってくれて、オレも美味しいって思った厳選の魔物と、もっと上階でしか手に入らない初めて食べる魔物だけを持って帰ってきた。 「見て、聖龍様! ほらコレ、この前美味しいって言ってたランブルボア。あとね、これはダンジョンの地下五階にしかいないエアロフィッシュ。カーマインがね、肉がホロホロして美味いって言ってた」 ひとつひとつ説明しながら獲物を取り出すのを、聖龍様は嬉しそうに聞いてくれた。 「今回もまた、随分とたくさん狩ったものだねぇ」 目尻を下げた聖龍様がオレの頭をヨシヨシと撫でてくれて、オレのしっぽは我慢出来ずにブンブンと大きく揺れる。撫でてもらうの、ホント気持ちいいし幸せな気分になるんだよな。 「おお、これはまた巨大な。随分と食いでがありそうだ」 聖龍様が感心したみたいに言ってくれる。興味深そうに獲物を触って検分しているけど、さすがに聖龍様はカンがいい。それ、ライアがイチオシだって言ってたすっごい肉だ。コイツがゲットできたら、いったん冒険を中断して肉が新鮮な内に売り捌くために街に戻るくらい、美味しい肉なんだって。 「それはねぇ、ラルホーンブル……? だったかな。なんか、捨てるとこがないくらいどこもかしこも美味い、いい肉だって言ってた」 「ほう、それはまた美味そうだ」 「えっと、これは魔物だけど、コレに似たのが街では飼われてる? っても、言ってた……?」 「なるほど、食肉として流通しているのだな」 ちょっと情報が怪しくなってくる。だって今日はものすごくいっぱい狩をして、その分たっくさん魔物について教えて貰った。あんまりいっぱいだったから、ちょっと脳みそからこぼれ落ちちゃった情報もあるかも知れない。 それでも聖龍様は嬉しそうにオレの話を聞いてくれる。 「ヨギは随分と物知りになったのだな。狩の腕前も素晴らしいが、知識が増えていくのもとても素晴らしいことだ。頑張ったな」 にっこり笑って聖龍様が褒めてくれるから、嬉しくってニマニマするのを止められない。オレのしっぽはもう、ちぎれてどっかに飛んでっちゃうんじゃないかってくらいに暴れていた。 「えへへ、聖龍様、嬉しい?」 「ああ、本当に嬉しいよ。ヨギのおかげで毎日の食事が楽しみだ。色々な肉を食せるようになったからね」 「良かった!!! これ、ぜーんぶ聖龍様のために獲ってきたものだからね」 みんなで食べるけど、コレはあくまでも聖龍様……手に入れたい番候補への貢物なんだとハッキリと告げる。ロンも、ライアもカーマインも、コレでもかって言うくらいハッキリと伝えなきゃダメだって言ってたから。 「ありがとう、ヨギ。お前は本当に優しい子だね」 ふふ、と笑って聖龍様はオレの頭を愛しそうに撫でる。うーん……やっぱり、伝わってない気がするなぁ。ま、いいか。夜寝る時にでもまた、しっかり伝えればいいんだもんな。 「オレ、ロンに獲物渡してくる!」 「ああ、美味しく料理して貰おう」 幸せそうな聖龍様の笑顔を見ると、オレまで嬉しくなってくる。オレは一旦出した魔物たちを収納袋に押し込んで、元気よく部屋を飛び出した。 *** ご飯も食べてお風呂も入って、そろそろ寝ようか、ってなった。 オレはひとりで勝手にドキドキしていた。 そろそろ聖龍様に、オレを番候補として見てもらいたい、って本気で思ってるんだ。ロンやライアやカーマインに色々教えて貰ったから、オレ、今日は聖龍様にちゃんと自分の気持ちを言おうと思ってるんだ。 「ヨギ、まだ寝ないのかい?」 「ううん、すぐ行く!」 聖龍様はいつも通り、ベッドに座って布団を持ち上げてくれている。オレがチビだった頃から変わらない、聖龍様の優しい気遣いにほっこりする。やっぱりおれ、聖龍様の事が大好きだ。 持ち上げてくれている布団の中に体を滑り込ませ、オレは聖龍様の脚を跨いで向かい合わせに座った。

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