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第5話
「こっちです!」
「早く、お巡りさん!!」
この声は千紘の連れだよな?
表通りからこちらの通路を見ながら叫んでいる2人の男性は千紘の連れだと思われる。
警察に連絡をしたのだろうか?
2人の姿を見た男はナイフをポケットにしまうと千紘を突き飛ばし俺を押し退ける様にして表通りとは逆の方に走り去って行った。
「大丈夫か?」
「はい、すみません。助かり・・・えっ?向野課長?どうして?」
お互いさっき迄背中を見ていたのだから向き合って初めてそれがよく知っている人物だと知ったのだ。
「千紘って言うのはやっぱり瀬名君だったんだな。そこのバーで私も呑んでいたんだよ。それより怪我はしてないのか?」
「あっ、カウンターにいらしたのは向野課長だったんですね。怪我は大丈夫です。助けて頂きありがとうございます。」
「手、血が出てるぞ瀬名。」
「この位は大した事ありません。」
手の外側から内側の辺りを突き飛ばされた時に地面で擦り付けてしまい薄皮が捲れて血が流れ出ていた。
見るからに痛そうだが瀬名は痛くないと言い張る。
「千紘!大丈夫だったか?」
「心配したんだぞ!なかなか来ないから怪我ないのかよ。」
「ありがとう。かすり傷程度だから大丈夫だ。」
瀬名の友人は駆け寄り息を切らしながら心配そうに瀬名を見ている。
「千紘が大丈夫だから話をつけるとか言ってたけどずっと来ないから心配で見に来たんだよ。来て正解だったな!」
「ありがとう。心配かけてすまない。所でお巡りさんは?」
「あれは、コイツの嘘だよ。」
「それしか思いつかなくてすまない。」
2人の判断で俺も瀬名も助けられたんだから謝る必要はないのにと思いながら見ていた。
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