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第8話
「携帯鳴ってるぞ、千紘。」
「すみません。マナーにするの忘れてました。あっ、警察からです。」
「なら、早く出ろよ。」
「はい。」
千紘は、携帯電話に出ながらリビングのソファに座って話し始めた。
始めは不安そうに話しをしていたが終わる頃には少し笑顔になっていた。
俺も気になり箸を止めて千紘の隣にゆっくりと座る俺に気づいてチラッと視線を向けると微笑んでいたが涙目になっている様に見えた。
「はい、ありがとうございます。それじゃあ、失礼します。」
携帯電話を切り胸の辺りでギュッと携帯電話を握り締めて目に涙を溜めながら少し身体を震わせている。
俺はそんな千紘が心配で声を掛けた。
「千紘?大丈夫なのか?何かあったのか?」
「あっ、すみません。ストーカーが捕まりました。」
目に涙を溜めて無理に笑おうとする千紘を見ると胸が熱くなる。
泣かせたくない千紘には笑っていて欲しい。
「泣きたいなら胸貸してやるぞ千紘。」
「泣きませんよ。あれっ?」
「我慢するな千紘。」
千紘の腕を掴み引き寄せると俺の胸に顔を埋めて泣き始めた。
我慢するなよ千紘が笑顔になるなら俺は何でもしてやるから甘えて来いと言いたかったが言葉をグッと飲み込んだ。
千紘と俺は上司と部下で歳の差は16歳。
どう考えても釣り合わないし男同士なのだから甘い期待はしないでおいた方が傷つかなくて済むからと千紘の頭を撫でながら考えていた。
もう辛い思いはしたくないのだ。
だから千紘を好きになってはいけない。
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