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第12話
「ほらっ、しっかり歩いて下さい。」
「どこだ?」
「家の玄関ですよ覚えてないんですか?いきなり帰ると言ってお店を出たんですからね。」
千紘の肩を借りて立って歩くのが精一杯の状態まで俺は酔い潰れているのか?
座らされて俺は千紘に靴を脱がして貰っている。
部下にこんな事をさせるなんて俺は何をしてるんだろう?
「はい。脱げましたよ。立てますか?」
「立てる。」
フラフラと壁に寄りかかりながら立ち上がり寝室へ向かおうとしたが上手く歩けずに床に座り込んでしまった。
「ほらっ、しっかりして下さいよ。お店を出た時はしっかりと歩いてたじゃないですか向野課長。」
「そうだな・・・すまない。」
「あっ、えっ?どうしたんですか?」
「すまない千紘。」
分からないが自然と涙が出て来て千紘の腕を掴み声を出して泣いていた。
いい歳をしたおっさんがカッコ悪すぎる。
「仕方ないですね。僕の胸貸しますよ。あの時向野課長も黙って僕を泣かせてくれました。」
千紘は俺の隣に座ると掴んでいた手を引き自分の胸へと俺を引き寄せた。
「好きなだけ泣いて下さい。そしていつものカッコイイ向野課長に戻って下さいね。」
そう言うと空いている手を俺の背中に回して優しくトントンとまるで小さい子供をあやす様にリズム良く叩いている。
本当にカッコ悪い。
けれど後少しだけお前の胸を貸してくれないかそうしたら俺は・・・・・。
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