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第五章 ショコラを作る手、甘味店《ショコラトリエ・アルセリア》、開店!7

***  騎士団の皆さんに手土産持参がてら、少し挨拶するだけのつもりだったのに――入口から中に入った瞬間、団員みんなの目がギラッと光った。 「あっ! 真琴殿だ!!」 「副団長の……!」 「今日の議題の中心人物!」 (えっ、議題に僕の名前が出るって、いったい!?)  嫌な予感しかしない。そのことに僕がそわそわしていると、目の前の階段から降りてきたラディス団長が優雅に手を振った。 「真琴殿、ようこそ。さ、こちらへ。昨日は、うちの副団長が大変失礼した」 「い、いえ! リオンは、いつもすごく優しいので!」 (――あ、言いすぎたかな)  その場にいた団員たちがざわめく。 「優しい? あの副団長が?」 「仕事の時は氷なのに……」 「恋ってすげぇ……」  団長は、口の端を楽しそうに上げた。 「真琴殿。彼の“どんなところ”が優しいと思うんだい?」  僕は思いついたまま、正直に答える。 「毎日なんですけど――」  顎に手を当てて考えていると、なぜか団員全員が身を乗り出す。 「僕が仕事をしていたら、何も言わずに後ろで見守ってくるんです。気配だけ傍にある感じで……落ち着くというか」 「「「毎日!」」」 (――え、そんな大袈裟になる?)  団長は頷きながら、僕の言葉をゆっくり復唱した。 「つまり副団長は“真琴殿の後ろに、毎日欠かさず張り付いて見守っている”と?」 「えっと……はい。気づいたらいます」 「「「スト――!」」」 「真琴!」  僕が振り返ると、いつの間にかリオンが団員たちの後ろに立っていた。顔は真っ赤なのに、威圧感がすごい。 「ま、真琴……何を……言って……」 「え? 本当のことだけど?」  団員たちが“やっぱり!”という叫びをあげる。 「副団長は四六時中、真琴殿の護衛をしてんのか!」 「それ、恋人以上の過保護では!」 「距離感ゼロじゃん!」 「いいぞ、もっと聞かせろ!」  団員たちのセリフに、耳まで真っ赤になったリオン。 「違う、私は……真琴が危ない目に……遭わないよう……」 「うん、知ってるよ? 僕、すごく安心だし」  率直に答えたら、リオンは顔を覆ってその場にしゃがみ込む。 (――え、なんでそんなに⁉)  団長が笑いながら、さらに僕に訊ねる。 「真琴殿。他にも何か“副団長の優しいところ”を?」 「え……たくさんありますけど……」 『全部言って!』  声を揃えた団員たちの迫力に驚きつつ、少し恥ずかしいけど思いつくままに話した。 「えっと夜、僕が寒そうにしてたら、いつの間にか上着をかけてくれたり」 「優しい!」  絶妙な合の手を入れる団員たちとは裏腹に、リオンはどんどん小さくなっていく。 「忙しいのに、帰る時は必ず店の前まで来てくれたり」 「副団長、完全に惚れてる!」 「僕が眠そうにしてると、“肩貸すか?”って……」 「肩っ⁉」 「ま、真琴、ストップだ!」 「あと……僕が困ってると、すぐ頭を撫でてくれて」 「撫でるんかい!」  リオンは、ついに崩れた。 「も、もう無理だ……真琴……これ以上は私の……生命力が尽きる」 (あれ、なんか僕、悪いことしてる……?)  団長が最後に、意味深な笑みを浮かべて聞いてきた。 「では真琴殿。副団長は君にとって、どういう存在だと思う?」 「そうですね……隣にいてくれたら、嬉しい人です」  考えるより先に、口がそう動いていた。 「「「プロポーズか!」」」 「くっ!」  リオンの顔が、赤を通り越して真っ白になった。そんな彼の肩を、団長が優しく叩く。 「副団長……これは、もう責任を取るべきだね」 「な、何を⁉」  団長は、僕に向かって軽く微笑んだ。 「真琴殿、君は今日、騎士団にとって大変貴重な“資料”を提供してくれたよ」 「資料ですか?」 「“副団長リオン、重度の恋患い”という確実な証拠だ」 「団長おおおおおおおお!」  この瞬間、大広間が爆笑で揺れた。そしてその日、議題が一つ追加されたそう。 《第四議題:副団長リオンと真琴殿の関係進捗について、週次報告体制を構築すること》 (※団長が昨夜のうちに追記)  その場で崩れ落ちたリオンに、僕は慌てて駆け寄った。 「リオン、 大丈夫?」 「真琴……もう……私を……これ以上……殺さないでくれ」 (――なんで? 僕、ただ事実を言っただけなのに?)

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