3 / 9

第3話

そこは、家の最寄り駅近くにあって、ひっそりと建っていた。所謂、ラブホテルだ。 706号室 俺は目隠しをして待つ。 3回ノックの後、その人は入ってきた。 「本日は、ご予約いただきありがとうございます。私は、リョウと申します。澤田南さんで間違い無いですか?」 「はい。」 「わかりました。早速、今日のプレイについて確認ですが、ご希望は特になく、お任せでよろしいですか?」 「あ、はい…あ、あの…あ、やっぱりいいです」 「なんですか?どんなことでも言っていただいた方がいいですよ?」 「じゃあ…目隠しはしたままで、ただひたすら責めていただきたいです。」 「わかりました。NGはありますか?」 「今のところ、思いつきませんが、多少きついことでもしていただいて構いません。ここは宿泊でとっているので、プレイの後、そのまま眠れるほどにして欲しいです。って、全然、お任せじゃないですね…今言ったことは気にせずしてください。お願いします。」 「わかりました。」 *** ギシっと、音を立ててベッドに上がってくるリョウの気配を感じ、緊張で胸の鼓動が早くなるのがわかる。 体操座りで座る俺を後ろから包み込んで、ギュッと縮こまった俺をほぐしてくれる。 何も話さず指を絡めて、時々首にキスをする。 淳平とのセックスは少し乱暴でガツガツしたものだった。女性にすると嫌われる様な…そんなセックス。今思えば、女性の様に大切に扱わなくていいと思われていたのかもしれない。それは、淳平だけに限らず、その前に付き合った人もそうだった。 だから、時間をかけて前戯をされたり、自分の要望を言うこともほとんど…いや、全くなかった。 「あの、いいですよ?もっとガツガツ乱暴にしてもらっても」 「…SMプレイが好きなんですか?」 「…そう言う訳では無いです。ただ、こんなふうに抱かれるのは慣れていなくて」 「そうなんですね。嫌ですか?」 「……」 嫌と言う訳では無い。これまで、ガツガツしたセックスで気持ちよくなっていたのも事実で、ひどく扱われて生きている実感が欲しかったのかもしれない。 返事をしない俺にリョウは、『嫌だけど嫌と言えない』と判断した様で、ベッドから降りる様言われた。 「嫌なこと、無理なことがあったら言ってくださいね」 少しだけ、リョウの声のトーンや空気が変わった。 ベッドに座り直したリョウは、頬を撫でながら言う。 「上手に舐められるかな?」 「頑張ります」 「んっ…気持ちい…上手だね」 相手を気持ちよくすることは嫌いじゃないし、むしろ好きだった。自分が、この快感を与えてると思えば、多少乱暴に扱われても、そこに存在意義を生み出せたのだ。 「喉で気持ちよくなれる様に、もっと奥までいれてみようか」 そう言って、頭を抑えるリョウの手に力が入る。 無理やり頭を上下に動かされ苦しくなる。だけど、すごく興奮してる。 こんな風に、扱われて勃起する体に嫌気さえするが、今は、上手く息ができずに、ただただ苦しい。それがよかった。 「おいで。ベッドに横になって」 ベッドの淵に頭を置き、上からそれを口に入れられると、更に奥まで入ってくる。酸欠状態になると、他のことを考える余裕がなくて、それでいて、その苦しさが快楽になり、もっともっと欲しくなる。 夢中でしゃぶりついていた。 「そんなに美味しそうに咥えてくれて嬉しいよ。可愛いね。」 口からズルっと出すと、胃液混じりの唾液が糸を引いているだろう。 頭が惚ける。 「じゃあ、次は僕の番だね。」

ともだちにシェアしよう!