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第3話
そこは、家の最寄り駅近くにあって、ひっそりと建っていた。所謂、ラブホテルだ。
706号室
俺は目隠しをして待つ。
3回ノックの後、その人は入ってきた。
「本日は、ご予約いただきありがとうございます。私は、リョウと申します。澤田南さんで間違い無いですか?」
「はい。」
「わかりました。早速、今日のプレイについて確認ですが、ご希望は特になく、お任せでよろしいですか?」
「あ、はい…あ、あの…あ、やっぱりいいです」
「なんですか?どんなことでも言っていただいた方がいいですよ?」
「じゃあ…目隠しはしたままで、ただひたすら責めていただきたいです。」
「わかりました。NGはありますか?」
「今のところ、思いつきませんが、多少きついことでもしていただいて構いません。ここは宿泊でとっているので、プレイの後、そのまま眠れるほどにして欲しいです。って、全然、お任せじゃないですね…今言ったことは気にせずしてください。お願いします。」
「わかりました。」
***
ギシっと、音を立ててベッドに上がってくるリョウの気配を感じ、緊張で胸の鼓動が早くなるのがわかる。
体操座りで座る俺を後ろから包み込んで、ギュッと縮こまった俺をほぐしてくれる。
何も話さず指を絡めて、時々首にキスをする。
淳平とのセックスは少し乱暴でガツガツしたものだった。女性にすると嫌われる様な…そんなセックス。今思えば、女性の様に大切に扱わなくていいと思われていたのかもしれない。それは、淳平だけに限らず、その前に付き合った人もそうだった。
だから、時間をかけて前戯をされたり、自分の要望を言うこともほとんど…いや、全くなかった。
「あの、いいですよ?もっとガツガツ乱暴にしてもらっても」
「…SMプレイが好きなんですか?」
「…そう言う訳では無いです。ただ、こんなふうに抱かれるのは慣れていなくて」
「そうなんですね。嫌ですか?」
「……」
嫌と言う訳では無い。これまで、ガツガツしたセックスで気持ちよくなっていたのも事実で、ひどく扱われて生きている実感が欲しかったのかもしれない。
返事をしない俺にリョウは、『嫌だけど嫌と言えない』と判断した様で、ベッドから降りる様言われた。
「嫌なこと、無理なことがあったら言ってくださいね」
少しだけ、リョウの声のトーンや空気が変わった。
ベッドに座り直したリョウは、頬を撫でながら言う。
「上手に舐められるかな?」
「頑張ります」
「んっ…気持ちい…上手だね」
相手を気持ちよくすることは嫌いじゃないし、むしろ好きだった。自分が、この快感を与えてると思えば、多少乱暴に扱われても、そこに存在意義を生み出せたのだ。
「喉で気持ちよくなれる様に、もっと奥までいれてみようか」
そう言って、頭を抑えるリョウの手に力が入る。
無理やり頭を上下に動かされ苦しくなる。だけど、すごく興奮してる。
こんな風に、扱われて勃起する体に嫌気さえするが、今は、上手く息ができずに、ただただ苦しい。それがよかった。
「おいで。ベッドに横になって」
ベッドの淵に頭を置き、上からそれを口に入れられると、更に奥まで入ってくる。酸欠状態になると、他のことを考える余裕がなくて、それでいて、その苦しさが快楽になり、もっともっと欲しくなる。
夢中でしゃぶりついていた。
「そんなに美味しそうに咥えてくれて嬉しいよ。可愛いね。」
口からズルっと出すと、胃液混じりの唾液が糸を引いているだろう。
頭が惚ける。
「じゃあ、次は僕の番だね。」
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