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6.淫らな剣聖(☆)※レイ視点
「やるじゃねえか」
恐ろしく綺麗な傷だ。僅かな歪みもねえ。
……流石は剣聖様ってとこか。
「しっかし……何にイラついてんだ?」
善意で魔物狩りをしているようには見えねえ。
ほぼ無害の低級の魔物まで、執拗に切り刻んでやがる。
これじゃ狩りっつーか……『八つ当たり』だ。
「……自衛か」
あのガキと同じだな。
自責の念に苛まれて、じっとしていられねえんだろう。
無理もねえ。
アイツもまだ、20歳のガキなんだ。
「……ったく、しょーがねーな」
魔物の死骸を道しるべに、ウィリアムの後を追う。
更に5分ほど進んだところで、ようやくヤツの姿を見つけた。だが――。
「……おいおい、マジかよ」
嫌な汗が背を伝う。
ヤツは魔物と対峙していた。
それも並の魔物じゃねえ。
『千人殺しの黒獅子』だ。
体長は10メートル以上。
ゴリラばりの筋骨隆々なボディに、ライオンみてえな鬣 。
背中からは、ドラゴンみてえな黒皮の翼を生やしている。
ヤツは物理特化の怪物。
俺ら魔術師からすれば、『天敵』みてえなもんだ。
何せ俺らはシールドを張れねえ。
生身の人間が、10メートル越えのゴリラを相手にするようなもんだ。
間合いを詰められたら最期――一捻りだ。
「……そーゆー訳だ。しっかり守ってくれよ、ダーリン」
覚悟を決めて、下降する。
「っ!!」
黒獅子が牙を剥いた。
――直後、ウィリアムの姿が消える。
「なっ……」
風が軋んだ。
次の瞬間――黒獅子の巨体が揺れて、首が落ちた。
断面は鏡みてえに滑らかで、血も出てねえ。
時が止まってる。月並みだが、そう感じた。
「っ!?」
遅れて、紫色の血が噴き出した。
森が紫に染まっていく。
葉も、幹も、土も――何もかも。
ただ、ウィリアムだけは違った。
俯 くヤツの体に、紫の雨が降り注ぐ。
だが、その白いチュニックにはシミ1つ付いてねえ。
強靭なシールドを張っているからだ。
騎士と勇者だけが扱える――無属性魔法。
優れた使い手であればあるほど、『汚れ知らず怪我知らず』だと言われている。
アイツはまさに、その最たる例だな。
「でも、だからってな……背負いこみ過ぎなんだよ。テメェは……よ?」
また――風がざわめいた。
目の前には、ウィリアムの顔がある。
「な――っ!!??」
急降下――10メートル近い上空から落ちていく。
ウィリアムに、両肩を押さえ込まれてる。
風で押し返そうにも、ビクともしねえ。
地面はもう目の前だ。ぶつかる――!!
「~~っ、くそ!! このゴリラ――がっ!!!?」
地面に激突した。
肺の空気が抜けて、意識が飛びかける。
頭は――何とか死守した。
……が、背中がヤバい。息が出来ねえ。
「ゴホッ……ガッ……!!」
口から何かが出た。鉄臭い。血だ。
くそっ、やっぱ肺をやられたか。
「っ!」
唇に、生温かいもんが触れた。舌だ。
目の前には――猫みてえな萌黄色の瞳がある。
「~~っ、おい」
肩を押すがビクともしねえ。
ヤツは俺に構わず、舐め上げていく。
俺の血を、余すことなく。
「くっくっく……」
ヤツは恍惚とした表情を浮かべると、ゴクリと喉を鳴らして――俺の血を飲み下した。
「……何の真似だ」
「アンタを買いたい」
「あ゛?」
「男娼なんだろ? ……なぁ?」
「んぅ、んっ……!」
口付けてくる。
酷く乱暴に。噛みつくように。
品性なんて欠片もねえ。
コイツ、本当にあのウィリアムなのか?
『レイモンド様は、そんなふしだらな人じゃない』
ヤツは……何の迷いもなく言い放ったんだぞ。
自信満々に、真っ直ぐな目で。
「……ケッ、くだらね」
真に受けてんじゃねえよ、バーカ。
「あの親にしてこの子あり、だな」
「ヤダな。俺はちゃ~んと相手を選ぶよ。いい男しか相手にしねーんだ」
「都合のいい男、だろ」
「ふっ、妬くなよ」
太腿に股間を押し付けてくる。
首筋に甘ったるいキスを落としながら。
チッ……このクソビッチが。
「いいぜ。相手してやる」
「やった♡」
「ただし、テメェが下だ」
「へぇ? 愉しませてくれるんだろうな――っ!? ~~っ、ぐ……!!!」
電撃を浴びせた。
怯んだヤツの腹を蹴り上げて――押し倒す。形勢逆転だ。
「乱暴だな~。ビルじゃなかったら死んでたぞ――」
「口、開けろ」
「は?」
「咥えろ」
「……っ、OK♪ 期待していいぜ。コイツ、口も最高だから♡」
「そうかい」
「アンタのは?」
「喜べ。どこに出しても恥ずかしくねえ『デカちん』だ」
「そりゃ楽しみだ♡」
ベルトを寛げていく。
野郎は嬉々とした表情で俺の股間をガン見しながら――
ねっとりといやらしく舌なめずりをした。
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