10 / 17
8.2人で1つ(★)※レイ視点
「止めてください!!」
「チッ……うっぜーな」
「あっ! やっ……!!!」
律動を再開させる。
ヤツはなおも抵抗を続けた。
だが、体は――俺を求めてる。
きゅーきゅー吸い付いてきやがるのは勿論のこと。
「腰、揺れてるぜ」
「っ! あっ……やっ……どう、して……」
「大好物だからだろ」
「あぁ゛!!」
野郎は首を左右に振る。何度も何度も。
萌黄色の瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。
「違う。……違う。僕は 父 とは――」
「ゴチャゴチャ言ってねえで集中しろよ」
「あ!? なっ、何……?」
ヤツの体を横向きに。
太股の裏に腕を差し込んで――小綺麗なペニスを握り込む。
「さっ、触らないで!」
「なら、自分でやれよ」
「イヤです! そんな……っ、自慰なんて……人前ですることじゃない」
「はっ、こんな半勃ちの状態で、ガキがいる家に帰るってのか?」
「っ! それは――」
「とんだ変態だな」
「~~っ、あっ! んぅ……!!」
ヤツの色白なペニスを擦り上げる。
亀頭をグリグリと刺激してやれば、堪らないとばかりに首を左右に振った。
ほんと……体だけは素直だな。
「うう゛……ふー……っ、ふーっ……」
「あ? 何やってんだ?」
ヤツの顎を掴んで、こっちを向かせる。
野郎は――唇を噛んでいた。
口端からは、真っ赤な血が滴り落ちていて。
「バカ! 何やってんだ!」
「う゛、ふーーっ、ふーーっ……」
「ったく……」
「んぅ!?」
ヤツの口に、キャラメル色の指を突っ込んだ。
人差し指と、中指の2本だ。
野郎は訳が分からないと言わんばかりに、目を白黒させている。
「噛むなら、こっちにしろ」
「んん……!」
「遠慮するこたねえよ。恨んでるんだろ? 俺のこと」
「……っ、あう゛! ううっ!!」
執拗にヤツのイイところを擦り上げていく。
だが、コイツは――噛まない。
緩く俺の腕を掴む。ただ、それだけ。
チッ。……何なんだよ、テメェはよ。
「ふぅ……ふっ♡……んんっ、ンッ♡♡」
「はぁっ……はぁ……っ……あ゛~、くそっ……」
最高だ。
気味が悪いぐらいよく馴染む。
コイツの体温も、感触も、香りも。
だが、心はからっきし。
まるで噛み合わねえ。
……ほんと、皮肉な話だよな。
「ふっ! ふぅ、ら、めっ……らめっ……」
「イけよ。ほらっ」
「~~っ!!!」
先っぽに思い切り爪を立ててやる。
――瞬間、ヤツはイった。
俺の手の中は、ドロドロなザーメンでいっぱいになる。
多い。それに超濃い。
「はっ、すげーな。若さ炸裂だ」
「~~っ、みっ……見な、いで……」
消え入りそうな声で懇願してくる。
……不覚にも、悪くねえと思っちまった。
チッ、クソビッチが。
「仕返しだ。外に出す」
「っ!」
一足遅れて俺もイった。
宣言通り引き抜いて――ヤツのケツから太股のあたりにぶっかける。
「あっ……う゛っ……」
「不満か? ははっ! ざまーみろ」
「~~っ」
野郎は両肩に力を込めて、身を縮こませる。
そうすることで、野郎のケツが少し上向いた。
ドロっとした白いザーメンが、ヤツのケツを撫でていく。
何か……白桃みてえだな。
浅ましくパクつくアナルは、ザーメン塗れの血で淡く染まっている。
「ご苦労さん。楽しかったぜ」
ヤツの口から指を引き抜きつつ、気まぐれにアナルの傷を治す。
……割と深かった。ケッ、ざまーみやがれ。
「ほら、もういっちょサービスだ」
「っ、冷た……」
「贅沢言うんじゃねえよ」
水魔法でザーメンを軽く洗い流して、ヤツの腰のあたりに灰色のハンカチを置いた。
「雑巾にすっから、チンコもアナルも拭いてくれて構わないぜ」
「…………」
無視かよ。まあいい。
立ち上がってベルトを締める。
周囲に意識を向けるが……頗 る安全だ。
魔物の気配を一切感じねえ。
まぁ、当然か。
あれだけの惨劇を起こしたんだからな。
「ぐ……っ……」
泣いてやがる。それもケツ丸出しで。
何なんだ? ヤリ捨てされたオンナみてえなムーブかましやがって。
「あ~……、はいはい。そういうことかい」
合点がいった。
なるほどね。通りでバレねえわけだ。
事後はこうやって、徹底して『不同意性交』を主張するわけだ。
『僕は悪くない。本気にした貴方が悪い』
……とか、何とか言ってな。
それで言いなりになる男と……ようは、このムーブが効く男とだけ遊んでやがるんだ。だから、バレねえ。
「ケッ……クソビッチが」
「本当に……僕の方から……貴方を?」
……あ?
「……はっ、おいおい。いくら何でも『記憶喪失』はねえだろ? リアリティが無さ過ぎる」
「…………」
野郎は――何も返さなかった。
呼吸が荒い。それに震えてる。まさか。
「お前、マジで覚えてないのか?」
「……はい」
「魔物を狩りまくったことは? 黒獅子も1人で仕留めただろ?」
「……すみません。記憶にないです」
喉の奥がざらついた。
どうなってやがる。
「お前、何か……記憶に障碍でもあんのか?」
「指摘されたことはありません。今回が初めて……だと思います」
「心あたりでもあるのか?」
「……自信がなくて。だって……本当に何も覚えていないから」
酷く不安げだ。
嘘を言っているようには見えねえ。
「僕は……これまでも? 貴方以外の人とも、その……っ」
わなわなと大きく震え出す。
野郎は両手で自分の肩を抱いた。
手の甲が一層白くなっていく。
「無意識のうちに性行為に及ぶ、だなんて……。僕はやっぱり…… 父 の子供なんですね。……何をしても僕は……ははっ……全部無駄だったんだ……」
つまりは……こういうことか?
コイツは父親を憎悪するあまりに、聖職者ばりの禁欲生活を送ってきた。
結果、無理が祟って無意識のうちに男を求めるように――。
……いや。
無意識にしちゃ、自我がハッキリし過ぎていたように思う。
下劣で、猟奇的で……品性の欠片もねえ。
俺が知ってるコイツとは、まるで別人だった。
っ! まさか――。
「テメェ……2人か」
「……2人?」
「人格だよ。お前には2つあるんだ」
「??? すみません。仰っている意味が……よく分からないのですが……」
異なる言動。
一次的な記憶喪失。
間違いねぇ。
コイツの中にはもう1人いる。
過度な抑圧から生み出された――性欲の権化みてえな野郎が。
ともだちにシェアしよう!

