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14.ウィルとウィリアム(★)※レイ視点

いつの頃だったか、ヤツの眼差しにが混ざるようになったのは。 見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいの、『恋する乙女100%』な目を向けてきやがる。 だが――そのくせ、うっきうきで贔屓(ひいき)の男娼のもとへと向かっていく。 ようはヤツは、『心も体も愛してくれる男』に囲まれてえんだろう。ケッ……クソビッチが。 所詮(しょせん)、蛙の子は蛙。 ……いや、父親よりずっと悪質だな。 父親が求めていたのは体だけ。 (くず)なりに、きちんと割り切りが出来てたんだからな。 ――俺にその気はない。 ――勝手にやってろ。 ンな意思のもと、ヤツの好意には徹底的に無視を貫いた。 背中を流すのを許してやったのは、単なる気まぐれ。いや……嫌がらせだ。 ヤツは変わらず父親を憎悪している。 だから、心が伴わない逆レイプみてえな真似は出来ねえ。 調子付いて俺を口説いて撃沈 ⇒ 生殺しになれば愉快だと……そう思っただけだ。 「貴方の肌の色、凄く素敵ですよね。太陽の息吹を感じます。力強くて、それでいて美し――」 「くだらねえ。無駄口叩いてる暇があったら、手ぇ動かせ」 予定通り一蹴してやった。……ケッ、ざまーみやがれ。 「…………」 野郎は押し黙った。 しずくが落ちていく。 降り始めの雨みてえに、ぽつ……ぽつ……と。 胸がざわつく。……くそっ、何だってんだよ。 「……っ……」 不意に、(うめ)き声が聞こえてくる。 振り返ると――ウィリアムが頭を押さえていた。 萌黄色の瞳は虚ろで、焦点が合ってねえ。 「おいっ! しっかりしろ――んぅ……っ」 声が――呑み込まれた。 生温かくて、やわらけえ。これは……唇……? 「んっ!? んんっ……」 噛みつくように口付けてくる。 猫みてえな色の瞳は、醜く歪んで嗜虐(しぎゃく)性を帯びていた。 コイツ……ウィリアムじゃねえ。 「っ! 危ね~」 電撃を叩き込むが――ダメだな。 寸前でシールドを張られちまった。 「誰だテメェ」 「申し遅れたな。俺は『ウィル』だ」 「ウィル……」 「。俺は、ビルの過度な『抑圧』によって生み出された『性欲処理係』だ」 「っ! お前、裏に引っ込んでる間も意識があるのか?」 「ああ。バッチリとな」 ウィリアムには、裏に引っ込んでいる間の記憶がない。 肩代わりをさせているからか? 「そーゆーわけだから、今回も頼むよ」 耳をねっとりと舐め上げてくる。気色悪い。 押し返しても、大して距離が取れねえ。 水音だけがバシャバシャと鳴り響いて……何とも無様だ。 「っ、何で出てきた。男娼とよろしくやってたんだろ?」 「してねーよ」 「……は?」 「ヤツとは、ただ面白おかしくお喋りしてただけだ」 ……マジかよ。 ウィリアムがうっきうきだったのは、気の合うダチとのお喋りが楽しみだったから。 下卑た野望――ハーレム建造の野望なんてもんは、端からなかったってことか……? 「安心した?」 「……っ、バカ言え……」 虫の羽音みてえな弱弱しい声だった。 今の……俺の声か……? ~~っ、柄にもねえ……っ。 「なぁ、もういいだろ。早く……」 野郎はズボンを脱ぎ捨てると、ズカズカと湯船に入ってきた。 湯が派手に溢れて、石造りの床は水浸しになる。……くそが。 「アンタがダメなら、あのガキのとこに行く」 「……は?」 「ユーリだっけ? アイツ、いい声で啼くだろうな~」 「テメェ……っ!」 腹の前に突きつけられた拳が――白く光った。 魔力で強化された拳だ。 これを喰らったら、間違いなく腹に穴が開く。 「どうする?」 嘲りながら問いかけてくる。 ……ったく、いい性格してるぜ。 「んっ♡♡ はぁ……っ」 俺はヤツに口付けた。 そのままヤツの体を押して、浴槽の縁に縫い付ける。 「(ひげ)、やっぱない方がいい、な。じょりじょりしなくて……キス、しやすい……んぅ♡」 『お髭、どのくらいで元に戻るんですか?』 不安と期待が入り混じったような目で問いかけてきた――そんなウィリアムの姿を思い返す。 やっぱ別人だな。改めて実感した。 、もうこれっきりにしたい。 「あっ♡ 湯、が……っ」 湯の助けもあって、指はすんなり挿る。 これなら直ぐに挿れられるだろう。 「へっ、へへっ……いいもん見せてやるよ」 ヤツは白いチュニックを脱ぎ捨てた。 そして、そのまま背を仰け反らせて――これでもかと胸を見せつけてくる。 白くてデカい胸の先には、サーモンピンクのそれが芽吹いていた。 「……っ」 堪らず生唾を呑む。 くそっ……ガキのくせに、生意気な乳しやがって。 「絶品だろ? 男はみんな、この胸の虜になる。ちゅぱちゅぱ赤ん坊みてえに吸い付いてきたり、ザーメンぶっかけてみたり……。アンタはどうする? 手始めにパイズリでも――あっ! やっ……」 うぜえ。ヤツの体を反転させてうつ伏せに。 いいところを執拗に擦り上げて、無力化する。 「妬いて、ンの? ……はははっ!! ダサ……あぁンッ♡♡」 「楽しそうで何よりだ」 大分ほぐれた。もういいだろう。 「あっ♡ おっき……♡」 「くっ……」 ヤツのアナルに押し込んでいく。 キツい。マジで2か月ぶりなのか。 額に脂汗が滲むのを感じながら、腰を進める。 「熱っ、はン♡ 溶け、ちゃう」 「そりゃいい。そのまま消えてなくなれ」 「ひっで~……あっ♡ あっ、はっ……あんっ♡♡♡」 バシャバシャと、湯をまき散らしながらガン掘りしていく。 なんっつーか……荒れ狂う海の上でセックスしてるみてえだな。 そう思うと、何だかバカバカしくて笑えてくる。 「はっ……浮かれやがって……」 「あ゛?」 「両想い♡ だとでも思ってんだろ。ははっ、……チョロすぎ……っ」 「……さっさとイけ。ンで消えろ」 湯に沈んだヤツのペニスを握る。ガッチガチだ。 先端を浴槽の継ぎ目に擦り付けながら、竿を擦り上げていく。 「あっ♡ んッ……確かに……、……ビル……は、アンタ……にっ……夢中だよ。……」 俺の手がぴたりと止まる。 はっ、と我に返った時には既に遅く――野郎がニタリと意地汚い笑みを浮かべていた。 「アンタの前はゼフで、その前はアーサーだった。ははっ……コイツはな、誰でもいいんだよ。愛してくれるなら、誰でも」 「デタラメ言うんじゃねえ。ウィリアムは……どう見ても――」 「ビルは、男と別れるたびに『童貞処女』に戻るんだ。付き合ってたことすら、文字通りぜ~んぶ忘れちまう。何でか分かるか?」 「…………」 「生きるためだよ。コイツにとって、だからな。尻軽な自分なんて、認めるわけにはいかねえのさ。何が何でも、な」 こんな戯言、耳を貸すだけどうかしてる。 だが、妙に辻褄(つじつま)が合い、しっくりくるのも……また事実。 コイツの狙いは何なんだ? 俺は……認めたくはねえが、色ボケしかけてた。 さぞ転がしやすかっただろうと思う。 ……なのに、どうしてこんな水を差すような真似を? ウィリアムを憎んでいる。 ヤツが幸せになるのが、我慢ならねえってことか? それとも、単に俺が気に食わねえだけか。 「まぁ、細けーことは気にすんな。アンタはアンタで楽しめばいい。形はどーあれ、こんな上玉を抱けるんだから、さ……」 ヤツは目を閉じて――浴槽の縁に倒れ込んだ。 白く広い背中の上を、緋色のしずくが滑り落ちていく。 俺の(まだら)な手は、ヤツのペニスから離れて……黒いインクを薄く溶かしたような湯を撫でた。 「っ、……ん……?」 白い肢体がぴくりと跳ねる。 「僕は、一体……?」なんて呟きながら、周囲を見回した。 「レイ……殿……?」 見上げてくる。 ぼんやりと。それでいて真っ直ぐに。 『コイツはな、誰でもいいんだよ。愛してくれるなら、誰でも』 ――俺はいよいよ、コイツのことが分からなくなった。

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