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21.まだまだ未熟な愛(★)
「一生抱いてやる。覚悟しとけ」
何だ。冗談か。ほっと息をつく。
だけど、それも束の間。
レイ殿のペニスが、僕の後ろに宛がわれる。
「あっ! はっ……ンッ……!」
挿ってくる。大きい。
たっぷり解してもらったはずなのに、物凄く痛い。
初めてしてるみたいだ。
おかしいな。もう何度もしてるはずなのに。
「あぅ!? はぁんっ……!!!」
ガツガツと容赦なく突いてくる。
殴りつけるようにして、奥へ奥へと挿っていって――不意に何かにぶつかった。
なのに、レイ殿は変わらず腰を進めてきて。
「だっ、ダメ! それ以上、奥……はっ……」
「黙ってろ。天国、見せてやっから」
「やぁ……っ、……お腹、破れちゃ――っ!!!」
何かを突き破るような感覚がした。
直後、痛みが消える。嘘みたいに。跡形もなく。
「なっ、なん、で……?」
「言ったろ? 天国見せてやるって」
未だ僕は、その意味を理解出来ずにいる。
曖昧な感じで頷くと、ちゅっとキスをされた。
啄むようなキスを繰り返して、至近距離で見つめ合う。
痛みがなくなったのと、愛情たっぷりなキスのお陰で、僕は大分落ち着きを取り戻しつつある。
「呼び捨てにしろ」
「? 何で?」
「テメェは俺の何だ?」
「えと……恋人?」
「だろうが」
野暮なヤツ。
レイ殿はそう言わんばかりに、不機嫌に鼻を鳴らす。
確かに。今のは察しが悪すぎたな。
胸の内で反省しつつ、小さく咳払いをする。
「レイ」
「おう」
レイ殿……いや、レイの口角がくいっと持ち上がる。
ご満悦だ。ふふっ、そんなに嬉しいんだ?
「敬語もやめろ。いいな?」
「うん。分かっ――っ!? あぐっ!!」
ぐぐっと引き抜いていく。
レイのペニスを失って、ナカがどんどん閉じていくのが分かる。
もう終わり? なのかな?
「あ゛はっ!?」
貫かれた。ギリギリまで引き抜いたところで、ガンッと奥まで。
チカチカと星が瞬く。
これは確かに気持ちいい……のかもしれない。
「記念に、何かタメ語で可愛いこと言ってみろよ」
「えっ? ははっ……ン……っ、なに、それ……」
「満足させられたら、褒美をやる」
「褒美?」
奥をゴリッゴリッと硬いペニスで突かれる。
僕は堪らず顎を上げた。
ぐんっと伸びた白い首を、レイがつーっと舐め上げていく。
「愛称で呼んでやるよ」
囁き掛けてきた。
魅惑的なハスキーな声音が、僕の鼓膜を酔わせる。
そのせいで、一瞬何を言われたのかよく分からなかった。
「『ビル』って、呼んでほしいんだろ?」
どうしてそれを……?
あ、そうか。先生から聞いたのか。
納得するのと同時に腹が立ってきた。
僕は純粋に夢を見ていた。
なのに君は、その願いを景品みたいに扱って僕を煽ってくる。
何だかおちょくられているみたいだ。気分が悪い。
「ほらっ、早く言えよ」
「…………」
「あ゛? 何だ、その目は」
「…………」
「おい。ウィリアム――」
「だいすきだよ~ん……」
「……ざけやがって」
「あっ! やっ……!!」
「手伝ってやるよ。おらっ、啼 け」
入り口付近を集中的に掻いてくる。
ガリガリ、ガリガリ……と。
声が止まらない。
頭の中が、トロトロぐちゃぐちゃになっていく。
「言えよ、ほら。『大好き』でいいから」
「んっ……はぁっ……ンンっ、や、だ……!」
「あ? ったく、さっきから何へそ曲げてんだよ」
「ンン! ん……はぁ……くっ……」
「機嫌直せよ、ほら」
目尻にキスをしてくる。
お髭まみれなチクチクなお顔も、すりすりと擦り付けてきて。
ああ、もうズルい……。
「~~っ、だい、すき……っ、レイが……大好きっ……」
「チッ……何だかいまいちパっとしねえが、まぁこんなもんか」
また弄ばれた。
ますます腹が立ってくる。
レイのこと、ちょっと嫌いになってきたかも。
「ビル」
頭を撫でながら、優しく呼んでくれる。
念願が叶った。
でも、全然嬉しくない。
レイの驕 りが透けて見えて。
「……元のままでいいよ」
「あ゛? ったく、メンドクセーな……」
「っ!!? やっ……!」
胸を鷲掴みにされる。
女の人にするみたいに、もみもみと揉みしだいてきて。
「あぁっ! やっ、それ……っ」
「嫌だ? じゃあ、これは何だよ?」
「あン!!」
尖った乳首を、ピンピンピンっと弾かれる。
乳首が上下左右に傾く度に、僕の背中はビリッ、ビリッと痺れて。
「お願……っ、……もっ、ヤダ。胸……さわら、な……でっ……」
「素直になれよ。いいんだろ? ここ」
「やぁああっ!!」
じゅっじゅと執拗に吸われる。
ただでさえ痺れてるのに、そんなふうに吸われたりしたら。
「ダメ! レイ、……っ、ダメ……はああぁあん♡♡♡」
イった。イってしまった。
胸を吸われて。
嬌声じみた声まで上げて。
僕の男としてのプライドはもうズタボロだ。
「ひど……っ、イヤだって……言った、のに……あぁっ……!」
レイが爆ぜた。
お腹の中で飛沫が散る。
熱い。苦しい。
幸せいっぱいになれるはず……だったのにな。
今の僕の心はモヤモヤしてる。
空模様に喩えるなら曇天。
今にも土砂降りになりそうな。
「はぁ……へっ……善かっただろ? なぁ、ビル――っ!?」
僕は手近な枕を取って、ガバッと顔を埋めた。
まさに頭隠して尻隠さずな状態だけど、籠城作戦と読み換えることで気を強く持つ。
「何やってんだよ」
「いっぱいイジワルして……」
「あ゛?」
「レイなんて嫌いだ」
「チッ……意味分かんねえ。おい。ビル」
僕は頑として枕のガードを崩さない。
本当は蹴とばしてやりたいけど、そこはぐっと我慢する。
「~~っ、このバカ力が」
レイは僕のガードを解くのを諦めたのか、深く息をついた。
手も離れていく。僕の粘り勝ちか?
「……悪かった。ちと浮かれ過ぎてた」
今度のは……信じていいのかもしれない。
聞こえてくる声は、酷くしょぼくれてる。
ワンちゃんに喩えるなら『くぅ~ん』って感じで。
ただひたすらに、僕に許しを求めてる。
嫌いにならないで。見捨てないで。
そんなふうに訴えかけられているような気がした。
……そうだ。そうだった。
レイは捨て子で、お師匠さんと死別して以降十年もの間ずっと独りで生きてきた。
だから、人との距離の詰め方が分からない。
恋人なんて尚更。なぜなら、僕が初めてだから。
「ふっ……ふふっ……」
「? ビル?」
課題は山積みだね。
僕の分も合わせると、とんでもない量だ。
けど、全然イヤじゃない。
むしろ凄く楽しみだ。
一つ一つ、一緒にクリアしていこうね、レイ。
「っ! おわっ……!」
手始めに、レイを有り余る愛で包み込むことにした。
彼を押し倒して、キスをする。
それはもうとびっきりの甘いキスを。
されるがままだったレイも、次第に応えてくれるようになる。
「重い」と文句を言われたから、横向きになってキスをしていく。
その時、僕の目をキラっとした明かりが照らした。日の光だ。
そういえばまだ昼間だった。
こんな真昼間から僕らは……。
苦笑しつつも、僕は止めない。
もう少しだけ、もう少しだけ浸らせてほしい。
今、物凄く実感してるんだ。
生きてるんだって。
この人と生きていくんだって。
だから、あともう少し。あともう少しだけ……。
「レイ」
「? 何だよ」
「大好き」
レイが瞠目する。
直後、ちょっとオーバーな感じで咳払いをした。
照れてるな。顔は真っ赤で、口なんてもうゆるゆるだ。
「……はっ、やりゃ出来るじゃねえか。出し惜しみしやがって」
「あれは、君が無理に言わせようとするから――」
「あ~あ~、そうだな」
ご機嫌取りをするようにキスをしてくる。
僕はまんまと絆されて、ふっと表情を緩めた。
気恥ずかしくなるような甘い一時が流れていく。
たぶん、ここがピークなんだろうな。
ここから、どんどんトーンダウンしていく。
そうやって、何もかもが当たり前になっていくんだ。
少し寂しいような気もするけど、甘さが深みに変わるのだと思えば、それもまた楽しみになる。
「チョロ」
「怒るよ」
「……悪かった」
「へへっ」
レイと生きていく。
これから先もずっと。
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