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第5話 調査報告(スノウ視点)
ガラハッド王国の王都は、様々な身分の者が住んでいて、それぞれは交わる事が少ない。
貴族階級の者は貴族街、一般人である平民は平民街、最も貧しい者が住む貧民街と、住居区分が分けられていた。
スノウは雑多な平民街を抜けて、貴族街へと入って行く。
貴族街は大きな屋敷が建ち並ぶ閑静な場所で、手入れの行き届いた庭には季節ごとに美しい花が咲いている。
賑やかだが、ごちゃごちゃした印象のある平民街とは、貴族街は全く違う雰囲気の街だった。
そんな場所に傭兵のように武装したスノウが歩いているのは、場違いな感じもするが、貴族には護衛を雇っている者もいるので、スノウの姿は目立つ事はなかった。
スノウはある一軒の屋敷の前で足を止めると、正面玄関ではなく使用人が出入りする裏口へと回った。
屋敷の敷地に入ると、大きな庭を通り抜ける。
豪華な建物の前まで来ると、やはりそこも正面玄関は避け、目立たないように大きなバルコニーのある部屋の前まで移動した。
スノウは跳躍すると、二階のバルコニーまで一気に飛び乗る。
さらに飛び上がり三階のバルコニーまで到達した。
そのバルコニーから、スノウは部屋の中へと入って行く。
「お帰り、私の可愛いスノウホワイト。お母様のお願いした事、調べてくれたかしら?」
部屋の中でスノウに声をかけてきたのは、オークションのオーナーでスノウの飼い主の女性だった。
「はい。例のアレキサンドライトの落札者ですが、平民街で魔石店を経営していました。冒険者ギルドで依頼も受けており、資金源にしているようです。金の流れに問題はなく、上客として今まで通り扱えば良いと思います」
「そう、ありがとう。お前の手を汚す必要がなくて良かったわ」
「それでは、お母様。私は失礼します」
バルコニーから出て行こうとするスノウを、オーナーは呼び止める。
「スノウ、あんまりやんちゃしては駄目よ。自由にして良いとは言ってるけど……」
「分かっています。お母様」
スノウはオーナーに頭を下げると、バルコニーから外へと出て行った。
再び平民街へと戻って来たスノウは、町外れにある小さな石壁の住居に入って行く。
こじんまりとした建物は、豪華なオーナーの屋敷とは比べ物にならない。
ここにスノウは住んでいた。
オーナーからは、屋敷に部屋も用意してあるから、いつでも帰って来て良いと言われているが。
何者にも縛られない自由な場所が欲しくて、スノウは隠れるようにひっそりと、この小さな家に住んでいた。
スノウはベッドに横になると、首に嵌められた隷従の首輪に触れる。
「魂喰い の魔術師……カイか……」
カイは女性と間違うような華奢で綺麗な見た目とは裏腹に、表情一つ変えずにコカトリスをソロで討伐してしまった。
二つ名で呼ばれるだけあって、魔術師として相当な実力者だった。
「カイだったら……」
スノウは隷従の首輪にふれる。
「俺を解放してくれるかもしれない……」
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