8 / 27
第8話 知らなかったな(スノウ視点)
「あんな笑顔出来るなんて……知らなかったな……」
カイの店からの帰り道、スノウはぼんやりと路地を歩きながら、カイのことを思い出していた。
獣人奴隷の子供に餌付けと言いつつ、食事を与えていたとは……
(カイがあんな懐の深い人だとは……思わなかった)
この街では獣人奴隷の子供なんて、数え切れない程溢れていて、行き倒れていたと知っても、普通の人は見て見ぬふりをする。
奴隷は飼い主の所有物だから。
下手に手を出せば、面倒な事になる。
奴隷の飼い主のほとんどは貴族や豪商で、平民が盾つける相手ではないからだ。
カイだってそんな事位、知ってるはず。
(それなのに手を差し伸べたのは、何故なんだろうね?)
いつも無表情で、ギルドの誰とも馴れ合おうとしない。
カイが冷酷と言われてるのも、外見の印象だけで、カイをよく知らない人間が勝手に吹聴していただけなんだろう。
(カイはたぶん……冷たい人ではない)
それがスノウから見たカイの印象だった。
「何だろう? この気持ちは……」
初めは都合よくカイを利用するつもりだったのに……
スノウは自分自身の魅力はよく理解していて、大抵の人間は甘い言葉と、この整った美しい容姿で愛を囁やけば、簡単に落ちると思っていた。
だがカイには全く通用しない。
(カイに好きになって貰うには、どうしたら良いんだろうね?)
隷従の首輪を外して貰うと言う目的もあるけれど……なんだかんだと理由をつけて、スノウはカイに会うのが楽しみになっているのだ。
(もしかして俺は……)
ともだちにシェアしよう!

