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第25話 魂が繋がる夜(後日談)【完結】*
今日はこのままオーレリアの町に留まり、明日王都に帰る事にして、カイとスノウは宿屋に部屋を取った。
夜食を食べに入った食堂でも、スノウは無駄に周囲の視線を集めていて、カイのモヤモヤはまたしても胸の奥で燻りだした。
だが宿の部屋でスノウが買ってくれた魂魔石 の数々を眺めていたら、だいぶ気持ちも凪いでくる。
「ありがとう、スノウ。こんなに沢山の魂魔石 。きっと買い逃したら、後悔するところだった」
「俺も買い逃したら、後悔するところだった」
思わぬスノウの言葉に、カイは首を傾げる。
「いや……スノウが後悔する必要はないと思う」
「ううん、絶対後悔する! だって買い逃したら、カイまたあの店に行くでしょ?」
「うん」
「カイがまたあの男に会うなんて、俺が嫌だったの!」
綺麗な顔を露骨にしかめて、スノウは不機嫌極まりない。
「……そんなに? 嫌か?」
「当たり前でしょう!! 恋人を狙ってる男の所に、なんで行かせるの? あのね、カイ。あんな男が、タダで指輪をくれるわけがないでしょう? ああいう男に近付くと、食べられるんだからね!!」
カイは思わず呆気にとられてしまう。
(あんたがそれ言うか?)
スノウの言い分も分からなくはないが、これではまるで隙だらけだと言われているようで、カイとしても面白くない。
「……俺は魔術師だぞ。見くびられては困る」
ムッとして言い返すカイを見て、スノウは大仰なため息をついた。
「やっぱりカイは分かってない。俺だってタダで魂魔石 を買ったわけじゃないからね!!」
スノウは突然カイを抱き上げると、ベッドの上にカイを運んで行く。
「え? おい……スノウ?」
そのままベッドに押し倒されて、カイは目を白黒させた。
「こんな時じゃないと、カイに触れられないし……良いよね?」
熱を孕んだ眼差しでじっとスノウに見つめられて、カイは頬が赤く染まるのを感じた。
スノウの顔を見ていられなくて、カイは俯く。
「……俺も……スノウに触れたかった……」
遠慮気味に答えたカイを、スノウが嬉しそうにギュウギュウ抱きしめてくる。
そのままスノウに唇を奪われると、カイは自ら舌を出し、スノウを口内へと誘った。
舌を絡ませ合い、互いの唾液を味わう。
チュッと音を立てて離れたスノウの唇を、物足りない思いでカイが見つめていると、スノウがニンマリとあくどい笑みを浮かべた。
「カイってば、こんなにキスが上手になっちゃって。誰に教わったのかな?」
分かりきった事を聞くスノウに、カイはプイッと顔を背ける。
「……あんただろ」
ボソッと小さく呟いた言葉も、スノウの狼の耳にはしっかり聞こえたようで、満足げに笑みを浮かべた。
「正解」
スノウはカイの首筋を甘噛みすると、カイの耳たぶをペロリと舐める。
それだけで身悶えしてしまうカイは、我慢ができずにスノウの上着のボタンに手をかけた。
「早く……」
「おねだりも上手になったね。可愛いなぁ、俺のカイは」
スノウは大きな耳をピンッと尖らせて、カイの喉元に噛み付く。
「んっ」
小さな痛みにのけぞるカイの衣服は、スノウの手によって脱がされていく。
お互い性急に衣服を脱がし合い、抱き合ったままベッドの上に沈む。
「スノウ、早く」
「もう欲しいの?」
クククッと喉を鳴らして、カイの恋人は満足げに微笑んだ。
「ちょっと待ってね」
カイの体を開く為には準備が必要で、スノウはいつも念入りに解してくれるけれど。
今夜のカイは我慢ができなくて、自分からスノウの腰に足を絡ませた。
香油を纏ったスノウの指先が、カイの秘所に触れ、ツプリと差し込まれる。
その刺激にすら感じてしまって、声が漏れてしまう。
「あぅ」
「可愛い、カイ。指だけで気持ち良くなったの?」
「も……良いから、スノウッ」
「もうちょっとだけ……カイを傷つけたくない」
クチュッと水音を立てて、円を描くように指を回される。
二本、三本と増やされた指を、クポクポと性交を真似た動きで抜き差しされただけで、カイは達してしまった。
「んぁーっ」
ビクビクと全身を震わせて、カイは白濁を吹き上げた。
目の奥がチカチカして、体が弛緩してしまう。
「あっ、あっ、スノウッ。もっ、欲しいっ」
「うん、あげるよ」
凶悪な程硬く反った雄を見せつけながら、スノウはカイの両足を開いて、間に収まる。
ヒクヒクと痙攣するカイの襞を割り開いて、スノウの男根がカイの腹の中を押し広げていく。
「……あっ……大きいっ」
「もう、そんな煽ること言わないの。我慢できなくなる」
最奥まで一気に穿かれて、カイは悲鳴をあげた。
「あーっ!」
ビクビクと痙攣する体を、スノウに抱きしめられて、その温もりにカイは溶けてしまいそうになる。
「あっ、スノウッ。動いて、お願いっ」
「どうしたの? 今日のカイは積極的で、たまらないっ」
獰猛な獣の目をしたスノウは、カイの望み通り動きを開始した。
肉を穿つ音を立てながら、カイは激しく揺さぶられる。
腹の中を突き荒らされる度、甘い痺れが走って、カイは身悶える。
「スノウッ!! あっ、スノウ! もっとぉ!!」
「カイ! ハッ、食いちぎられそう! もう、そんなに締めちゃ駄目でしょっ」
収縮したカイの粘膜が、ねっとりとスノウの肉棒を味わうように絡みつく。
「あっ……あっ……やぁっ」
弱い所を攻め立てられて、カイは大きく弓なりに体を反らして、必死にシーツを掴む。
「あーっ! おかしくなるっ! スノウッ! スノウッ!」
「俺も、最高だよ!! カイ!」
ベッドの軋む音が激しくなり、カイの喘ぎ声が止まらなくなる。
「あーっ、あっあっあん……んぅっ……はぁ……」
「イキそう? イッテいいよ?」
ズンッと力強くスノウに最奥まで穿かれて、カイの全身が震えた。
「かはっ!」
喉の奥深くから息が漏れ、意識が飛びそうになる。
ビクビクと小刻みに揺れるカイの陰茎は、蜜をトロリと吐き出して、パクパクと口を開けた。
「はぁーっ……はぁーっ……」
荒い呼吸を繰り返し、ぐったりとしたカイを見下ろすスノウが、大きく目を見開いている。
「カイ? 大丈夫? 耳が……」
目の前が霞んでよく見えないカイは、ぼんやりと焦点の定まらない目で、スノウを見つめた。
「目眩ましが解けちゃったね。魔法が解けるほど、気持ち良かった?」
「……え?」
スノウが恐る恐るカイの狐の耳に触れる。
優しく撫でられると気持ちが良くて、カイは無意識のうちにスノウの手に頬ずりした。
「カイは耳が弱いんだねぇ……フサフサの尻尾はどうかな?」
グイッと体を引き寄せられて、カイはスノウと繋がったまま、向き合った状態でスノウの膝の上に跨る。
「あ……ちょっと、触るなっ」
カイの背後で揺れる狐の尻尾を、スノウは弄んだ。
「可愛い……俺とおそろいだね」
スノウはパタパタと狼の尻尾を揺らしている。
普段完全に人間の姿をしているカイに、自分と同じ獣人の特徴を見つけた事が、スノウには嬉しいようだ。
「俺の前ではさ……もう隠さないで」
スノウに請われて、カイは戸惑う。
ずっと隠し続けなければと、思っていたからだ。
誰にも本当の姿は見せてはいけない。
それがカイの中のルールだったのに。
スノウはあっさりとルールを破れと言う。
「怖がらなくても、俺はどこにも行かないから。ずっとカイの側にいる。ううん、いさせてよ?」
側にいさせてくれと懇願されて、カイに断る事なんて出来るわけがないのに。
カイにはまだスノウの番になる覚悟は出来ないのに、スノウにはずっと側にいて欲しいのだ。
こんなカイの我儘を、スノウは許してくれる。
「……スノウ。側にいて……」
「うん。ずっとカイの側にいるよ」
それからの交わりは、ゆっくりと穏やかなものだった。
お互いを慈しみあうように、向き合って抱き合い、フサフサの尾を絡ませ合ってキスをする。
優しい恋人同士の時間は、夜が更けるまで続いた。
【完】
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