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第15話 重なる★

 ばさり、と僕が抱えた服が落ちる音が響く。  カナタは僕の腰に手を回し、僕の頭を押さえて深く口づけてきた。  舌が僕の口の中を蠢いて、びちゃり、と音が響く。  さっきは拙いキスだったけれど、今のキスは全然違う。角度を変えて口づけて僕が息苦しさを感じた頃、唇が離れてカナタはぎゅっと、僕を抱きしめた。 「あ……」  声を漏らすと、カナタは噛みつくように僕の首に口づけをおとし、ちゅうっと吸い上げる。 「音耶……」  切ない声で僕の名を呼び、首や耳、胸へと口づけの雨を降らせていく。  そして彼の手が下着の隙間から入り、硬くなり始めたペニスに触れた。 「感じてるの、嬉しい」  うっとりと言い、カナタは僕のペニスをゆっくりと扱き始めた。 「う、あ……」 「早く繋がりたい、音耶と……ひとつになりたい」  その言葉を聞くとどうしても拒絶感が出てしまい、僕は思わず腰をひいた。  すると、カナタは手を止めて僕をじっと見つめた。  悲しげに目を細めて。   「逃げないでよ。音耶」  静かに言ったカナタは、僕を抱きあげてベッドへと運んでいく。 「カナ……」 「音耶軽い。ねえ、お昼ちゃんと食べてるの?」  そう問われると黙り込むしかなかった。  食への欲求も薄くなり、カナタがいないと食べないことが多いからだ。   黙りこむ僕をベッドに下ろした彼は、冷たい瞳で僕を見下ろし、腹を撫でながら言った。 「ちゃんと、食べてほしいな。だから俺、大学には行かないでずっと、音耶といたい。俺いれば、ちゃんとご飯、食べてくれるでしょ?」  そして、カナタは俺の傷をゆっくりと撫でた。  わずかにくすぐったさを感じ、僕は息を漏らす。 「あ……」   「だから逃げないでよ、音耶。俺、音耶が欲しいんだから」  そして彼はベッドの横に置いてある台から何かを手に持った。 「ベルト……?」  黒い革のベルトだ。  それを見て、僕の背筋に冷たいものが走る。  まだカナタの背中には羽根がある。  ベルトを手にした彼の姿は美しい堕天使に見えた。  カナタは僕の手首をそっと掴み、ニコッと笑って言った。 「うん。だって、俺、音耶を傷つけたくないから」    言いながら彼は僕の手首を頭の上でベルトで縛り上げる。  そんなことをしなくても逃げないのに。 「なんで……こんな……」  絞り出すように言うと、カナタは僕の下着に手をかけて言った。 「なんでって、誕生日にはヤるって決めてたから、色々準備してたんだ。こうすれば音耶、逃げられないでしょ? 俺、音耶を傷つけたくないもん」  矛盾したことを言っていると思うけれど、カナタとしてはごく普通のことを言っているつもりなのだろう。  僕がカナタから逃げられるわけがないのに。  諦めが僕の心を支配し、すっと、身体から力が抜けていく。  受け入れてしまえば楽になる。抵抗したってきっと、カナタは強引にでも僕を貫くだろうから。  カナタは僕の下着を脱がすと、尻に触れた。 「あれ、中、濡れてる?」  そう言われると羞恥心に顔が熱くなってくる。  中にローションを仕込んだのだから、当たり前だ。  暴走したカナタにいきなり突っ込まれても嫌だし、治りが早いとはいえ痛みはあるから、少しでも傷つかないようにと思った結果だった。 「もしかして、自分でここにローション入れたの?」  その問いに僕が頷くと、カナタは笑って言った。 「そうなんだ。音耶、ヤる気満々じゃん?」  そしてカナタは僕の顔の横に膝を立てて座り、口元に先走りを溢れさせるペニスを当てた。 「ねえ、舐めて」  僕が口を開くよりも早く、カナタは容赦なく僕の口にそれを突っ込んでくる。  そして僕の頭を掴んで腰を揺らし始めた。 「ん……んン……」  異形のペニスは総じて大きい。カナタのそれも例外ではなかった。  喉奥まで貫かれて息苦しさに涙が出てくる。  だけどカナタは腰の動きを止めはしなかった。 「音耶……口、気持ちいい……」  うっとりと言い、腰を揺らし続ける。  手を縛られて、望まない形でフェラまでして。これではレイプと同じじゃないか。  その事実が僕の心にまた、ヒビを入れていく。 「んん……ン……」    どれくらいフェラをさせられていただろうか。  頭がぼうっとしてきたころ、カナタは僕の口からペニスを引き抜いた。 「ゴム、ちゃんと用意したんだ」  そう余裕のない声で言った後、彼は移動して僕の足を抱え上げる。  いったいいつからこんなこと、カナタは考えていた?  カナタは困惑する僕の濡れたソコにペニスの先端を宛がい、息を吐きながらゆっくりと腰を埋めた。 「あ……あぁ……」  とうとう、繋がってしまった。  カナタのペニスがミチミチと僕の中に入ってくる。  僕のそこは、難なく亀頭を飲み込み、奥へ奥へと受け入れていく。  僕の絶望感などよそに、カナタは嬉しそうに僕の顔を見つめ言った。 「やっと繋がれたよ、音耶。すごい、中きつくって熱くて……気持ちいい」 「ひ、あぁ!」  前立腺を先端が通り過ぎ、カナタのペニスが奥へと進んでいく。きっと、結腸まで届くだろう。  そう思うときゅん、と腹の奥が疼いた。 「奥、狭い」 「カ、ナタ……や、やめ……」  思わず出た拒絶の言葉に、カナタは短く答えた。 「やめない」 「あぁ!」  カナタのペニスの先端は奥まで達し、僕は目を見開いて荒い息を繰り返した。  嫌だ、という想いはあるのにそれよりも快楽のほうが勝ってしまう。  知っている相手とこんなことをするのは初めてだ。  それでも……愛があるだけマシ、なんだろうか。  それだけは他の客とは確かに違う事実だから。 「全部入った」  嬉しそうに言った後、カナタはぎりぎりまで引き抜き、一気に奥まで貫いていく。 「ああ、あ、あっ」  腰から背筋を快楽が這い上がり、脳まで突き抜ける。  だめだ、おかしくなる。  快楽と背徳が、確実に僕の脳を蝕んでいた。  すがりつきたい、なのに手は縛られたままだ。 「カナ……タ……」 「音耶、気持ちよさそう。俺も気持ちいい」  そう告げて、カナタは腰を激しく打ち付ける。  気持ちいいのは事実だ。  奥をこじ開けられるたび、僕は自分で腰を振っているのだから。 「カナ……あぁ……奥、好き……あ、あ」 「奥好きなんだ。じゃあ、もっと気持ちよくなって」 「う、あぁ!」  ぐい、と奥を貫かれ、僕の視界が白く染まったような気がした。  カナタが動くたびにローションがグチュグチュと音を立てて、快楽の波が身体中を飲み込もうとする。  だめだ、何も考えられなくなってしまう。  その時僕の奥底で何かが割れるような音がした。 「カナ……タ、手、取って……」  しがみついてすがりたい。  カナタに願うと、彼は繋がったまま僕を拘束するベルトを外した。 「カナタ……」  切なく名を呼び彼に手を伸ばすと、カナタは嬉しそうに笑い顔を近づけてくる。 「音耶、大好き」  うっとりと言い、カナタは僕に口付けた。  僕は彼の首に腕を絡め、自分から舌を出す。 「ん……カナ……」  舌が蠢き絡み合い、頭の奥がジン、としてくる。  唇が離れたとき、僕は彼の目を見つめて言った。 「ちょう、だい……カナタの、全部」  息を切らせて言うと、彼は頷きうっとりと答えた。 「全部、音耶にあげる」  そして、彼は激しく腰を揺らし、僕の中を蹂躙した。  奥をこじ開けられるたびに僕は喘ぎ、カナタを抱きしめる腕に力がこもる。   「い……あ、あ、そこ、いい」 「うん、奥つくたび、すっごい締め付けてくる。ほんと、奥が好きなんだね」 「あぁ! す、き、だからぁ。カナタ、いっぱいに……あぁ!」    快楽の波は止まることなく僕の身体を駆け巡っていく。  前立腺も奥も気持ちいい。  自分から腰を揺らして、僕はカナタにキスを求めた。  激しく舌が絡まり、脳の奥がジン、と痺れていく。 「イ、く……からぁ。カナ、タ……あ、あ、あ」  カナタにしがみつき、奥を激しく突かれて僕はビクン、と大きく身体を震わせた。  僕の腹が、自分で出した精液で汚れていくのがわかる。あぁ、達してしまった。カナタのモノで僕は……  罪悪感と背徳感に僕は酔っているようだった。  いけないことをしていると思うのに、悦びで満たされているんだから。  その時、カナタが恍惚とした声で言った。 「やばい、すごい締め付け……俺も中でイく……」  そして、カナタの動きが止まる。  彼のペニスが僕の中で大きく膨らんだのがわかった。  あぁ、カナタが僕の中で……  僕の想いなどわからないだろうカナタは、僕の顔を見下ろして頬を撫でながら言った。 「大好き、音耶。ねえ、俺だけの音耶になって?」 「カナタ……」  カナタはずるり、と僕の中からペニスを引き抜くと、ゴムを外す。 「夜は長いから、ねえ、もっとしよ?」  その言葉は、僕にとってまるで刑の宣告のように感じられた。   

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