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第16話 快楽の海の中で★

 ベッドに寝転がるカナタの上にまたがった僕は、彼の腹に手を置き、自分で身体を揺らす。  腰を下ろすたびに奥がこじ開けられて、はい上がる快楽に僕は喘いだ。 「う、あ、あ、あ」 「すっごい夢みたい。音耶が俺の上で腰振ってるなんて」  言いながら彼は、僕の腰を掴んで思い切り突き上げる。  すると快楽の波が一気に押し寄せて、僕は思い切り背をそらした。 「カナ、タ……」    奥を突かれるのは本当に気持ちいい。  頭が真っ白になって、わけわからなくなるほどに。  中が収縮して、カナタのペニスの形がよくわかる。このまま奥に出されたらどれだけ気持ちいいだろう?  そんな妄想に腹の奥が切なく疼く。 「すごい、中がびくびくしてる……音耶、イったの? 俺の名前呼びながら」  嬉しそうに言うカナタの言葉に、僕はこくこくと頷いた。  意識して名前を呼んだわけじゃない。ただ自然と口から漏れた言葉がカナタの名前だった。 「嬉しいな、音耶」  言いながら彼は、僕の身体を再び揺らした。  イったばかりの身体は敏感に反応し、すぐに快楽を拾い上げる。   「カナ……あ、だめ、イったばっかり、だからぁ……!」 「うん、だから中、すっごい気持ちいい。熱くって、きつくて……俺の全部もっていかれそう」 「んン……あぁ!」  あっけなくイってしまい、僕は力なくカナタの腹の上に覆いかぶさり荒い息を繰り返した。  きっとこの行為は、今日だけでは終わらないだろう。  これからずっと、この関係が続くのだろうか?  これはなんて言うんだ? 恋人? 愛人? なんて呼ぶのが正しいんだろうか。  迷う僕の背中に、カナタの手が触れる。 「大好きだよ、音耶」  うっとりと言ったカナタに僕は、自分から唇を重ねた。    夢、だったのだろうか。  そう思うほどに、昨夜のことはどこか現実味を感じなかった。  朝、目が覚めればいつもと変わらず、カナタが選んだTシャツにスウェットのズボンを履いて僕は寝ていた。  カナタの姿はすでにベッドにはなかった。  きっと、朝食を作っているんだろう。  身体を起こして服をまくり上げると、身体には何にも痕跡がなかった。  けれど、腹の奥に違和感がある。  結腸を何度も突き上げられて、いったい何度、イかされただろうか。  その感覚はあるけれど、気怠さも、疲れもない。  あるのは精神的な痛みだけだった。  ベッド横にあるゴミ箱に視線を落とせば、自然と昨夜の痕跡が目に入る。  夢だと思いたかったけれど、やはり夢ではないらしい。  僕は、カナタと寝てしまった。しかも自分から望んで、しがみ付き、腰を振った。  その事実が僕の心を蝕む。身体の傷は癒えるけれど、心に負う痛みはただ累積していく。  僕はぎゅっと拳を握りしめて唇を噛んだ。  あれでよかったんだろうか。  カナタを受け入れたのは、正しいことなのか?  いくら考えても、答えはでてこない。   時計を見れば、時刻は七時を過ぎている。  さすがに起きないと。  僕はゆっくりとベッドからおりると、リビングへとつながる扉を開いた。  そこには、いつもと変わらない光景が広がっていた。  カウンターキッチンの向こう側、カナタが食事を用意をしている。  黒い翼は見えなくて、普段通りの姿で彼は皿をカウンターに置き、僕の方を見て微笑んだ。 「おはよう、音耶」 「……あぁ、おはよう」  できる限り普通に笑い返し、僕はカウンターへと近づく。  目玉焼きに、焼き魚。野菜のスープに白いご飯。普段通りの料理たち。  ラジオがついていて、知らない音楽が流れていた。 「お茶、用意するよ」 「うんわかった」  僕はカウンターを離れて湯呑や急須を用意する。  いつもと変わらない朝にほっとするような、違和感を覚える様な。複雑な気分だった。  食卓に料理などを並べて、僕たちは向かい合って座る。 「いただきまーす」 「いただきます」  互いに言い、僕は箸を手にした。  きっと昨夜のことに、カナタは触れないだろう。  だから僕も何も言うつもりはなかった。 「俺、今日出掛けてくる」 「ひとりで?」  そう問いかけると、彼は頷き言った。 「うん、駅前行って、昼飯まえには帰ってくるから、昼は一緒に食べよーね」 「わかってるよ。昼は何がいい?」 「あ、考えてなかった。えーと……えーと……」  箸を止めて、朝食を見つめながらカナタが呻る。  食べながら次の食事について考えるのもおかしなものだけれど。  僕は黙ってカナタの答えを待った。 「麺類がいい!」 「わかった」  麺類……小麦粉が高騰した今、麺類と言えば米粉で作ったヌードルが主流だ。米だけは自給率百パーセントを越えているため、米を原料にした加工品が数多く存在する。  うどん、ラーメン、パスタなど、食感は本来の小麦粉の製品とは違うらしいが、そんな違いを知る者などそうはいなかった。  麺類はめったに食べないので、あまり家にストックはない。そうなると買い物に行かないとかも知れない。  食べながらお昼について考えていると、カナタが言った。 「音耶は今日、家にいる?」 「いや、麺類のストックがなかったと思うから買い物に行くよ。ついでに買いだめもしてきたいし」 「あ、そっか。そう言えばストックないか」  そう呟いたカナタは悩むようなしぐさをしたけれど、首を横に振り、 「一緒に行きたいけどいいや今日は」  と言った。 

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