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第5話 久しぶりの **
デリックさんとマークさんがいたことで、一週間の山移動はほぼ長期の山岳キャンプと変わらなかった。
生命の危険はいつでも隣り合わせだが、何もわからない状況下でのサバイバルとはわけが違う。
テントを張るための道具や飲食料も揃っているし、道に迷うということもない。
「ホヅミ、ما عندكش القوة البدنية」
「خلينا ناخدو استراحة」
しかし、前を歩く三人と俺との体力の差は歴然である。
三人の中で一番体格の良いデリックさんはまだしもマークさんは身体が細いのに、普段から山で生活をしているせいか、カモシカのようにひょいひょいと山を登っていくのだ。
遅れまいと頑張るが、どうしたって限界はあるわけで。
「あそこで休憩をとるそうですよ」
「そうか、わかった」
直知は俺の分の荷物を半分持ってくれているのに、二人のペースについていける。
一度荷物を置いて、少し遅れて歩く俺のほうへと戻って来て、残りの荷物まで持ってくれるというジェントルマンぶりだ。
ああ、マラソンでもジムでもなんでもいいから、もっと体力をつけておくんだった。
「ふたりとも、すみません……」
ゼェハァと荒い息を整えながら、なんとか休憩地点まで辿り着いた俺は二人に頭を下げる。
「آسفين جوج ديالكم」
直知は俺の言葉を、二人に伝えてくれる。
「ماتهممش、ホヅミ」
「آه、الوتيرة مزيانة وما فيها حتى مشكل」
「آه、مزيان」
「気にするな、問題ないペースだよ、だそうですよ」
「そっか。直知も、荷物、持ってくれて、ありがとう」
俺が目を瞑って岩場に寝転びながら、お礼を言う。
「はは」
珍しく声を上げて直知が笑ったので、俺は薄目を開けて、直知を見る。
逆光で、表情はよくわからない。
眩しい。
「なんだ、どうした?」
「いえ……久しぶりに、穂積からお礼を言われたなと思いまして。こちらに来てからの穂積はとても素直で、生き生きとしてて、楽しそうです。それだけでも、こちらに来た甲斐があったかもしれませんね」
「はあ?」
俺は直知の言葉に眉を顰めた。
そんなこと、あるか?
普段から直知には世話になってる自覚はある。
お礼だって、水を貰った時とか、ジャケットを敷いてくれた時とか……あれ?
俺、お礼って言ったか?
いや、直知が俺の世話をするのは当たり前だと思っていたから、言っていなかった気がする。
ざあ、と血の気が引いた。
いったい、いつから。
それが直知の仕事だと考えて、感謝すべきことにすら俺は、礼を言わなくなったんだ?
「……ごめ、ん」
直知の顔は直視できなかったが、上半身を起こして、謝った。
これでは、いつ愛想をつかされたって、おかしくはない。
直知は現地の言葉が理解できるし、金のない俺は、完全なお荷物。
それなのに、オマケの俺がこっちの世界を楽しんで、どうするよ。
「大丈夫ですよ」
直知の態度は変わらず、優しい声で宥めるように言いながら、俺の頭を「イイコ」とばかりに撫でた。
その手を思わず払いのけようとして、ぐっと拳を作り、その衝動に耐える。
駄目だ。
この世界で直知に見捨てられたら、俺はどうしていいのか、わからない。
言葉が通じず、金も稼ぐことができず、路頭に迷うだろう。
直知と離れて、親切なデリックさんやマークさんの村に残ったほうがいいのかもしれない。
いや、そんなことをすれば、結局直知が、直知だけが元の世界に戻ったのかどうか、気になって仕方がないだろう。
直知だけ元の世界に戻れば、俺はこの異世界に独りぼっち。
それも、この世界に祝福されていない、異端児だ。
主従関係はとうに、逆転している。
ぞわぞわとした恐怖が、俺の胸に巣食っていった。
***
「ん……」
その日は、夜中に目が覚めた。
体力がない俺はいつも三人のうち誰かに起こされるまでぐっすりと寝てしまうから、とても珍しい。
いつもだったら満点の星空が見えるのだが、今日は真っ暗だ。
ああそうだった、洞窟で休息をとったんだったな、と思い出す。
俺は少し肌寒かったのか、直知にがっちりとしがみついて寝ており、慌てて少し離れた。
「……、……」
「ン、……」
少し離れたところから声が聞こえてきて、デリックさんとマークさんが起きていることに気づく。
しかし、漏れてくる声に続いて衣擦れの音や、ぱちゅんぱちゅん、という卑猥な水音まで聞こえてきてしまい、単なる会話のために起きているわけではない、と気づいてしまった。
うわわわわ。
ぎゅ、と目を瞑って、聞こえないふり、寝たふりをする。
なのに。
「~~ッ、ァンッ♡」
ずちっ♡ ずちっ♡ ずちっ♡
気にしないようにと意識をすればするほど、そのいやらしい二人の行為ははっきりと想像出来てしまって。
う、嘘だろ……!
二人の行為が妄想を掻き立て、俺の息子まで元気になってしまった。
この世界に来てから即寝が当たり前で、健全な若者が二週間一度もヌいてないのだから、仕方がないとはいえ困ってしまう。
一枚の毛布を俺と共有している直知にばれないよう、そろそろとズボンを脱いで、自分の股間へと手を伸ばした。
「んっ……」
声を押し殺して、息子を扱き出す。
しかし、罪悪感と、緊張感と、背徳感が俺を襲って、上手く射精感を高められない。
「よければ、お手伝いしましょうか」
イけなくてしばらくもぞもぞしていた俺の耳にそう囁かれ、ビクッと身体が跳ねる。
「直……」
「しーっ」
名前を呼ぼうとする俺の口に直知の指が当たって、息を飲んだ。
「声だけ抑えてください」
直知はそう言いながら、ペニスを扱いていた俺の右手を口元へと移動させる。
俺の心臓はバクバクと跳ね上がり、先走りが期待で先端からトロリ、と零れたのを感じた。
直知の冷たい手が、俺のペニスに触れる。
「んうっ」
ああ、この感じ。
――懐かしい。
「こうするのも、久しぶりですね」
直知も同じことを感じたようだ。
俺が初めて夢精したのは、十二歳の時。
朝起きて、漏らしたと思って驚いて、直知に助けを求めた。
「これは自然なことですから、大丈夫ですよ」
直知は泣きじゃくる俺を安心させるようにそう言って、布団の始末をしてくれて。
「精通したので、これからは定期的にヌきましょうね」
「え、やだ。こんな汚いとこ、触りたくない」
おちんちんが勃つ、という未知のことへの恐怖でそう言った俺に苦笑して。
直知が俺の代わりに、ヌいてくれたのだ。
そう、今みたいに。
ちゅこ♡ ちゅこ♡ ちゅこ♡
直知の手でダイレクトな刺激を受けて、俺の息子はぐんぐんとその体積や硬度を増していく。
「ここも随分と大きくなりましたね」
そりゃあ、あの頃よりは成長しているはずだ。
「ふぅっ♡ ふうぅ……っ♡♡」
腰砕けになりそうな快感で、自然と涙が滲んだ。
自慰の何倍も、気持ちイイ。
声が漏れないように、両手でぐっと口を塞ぐ。
あの頃も、酷く癖になっていた刺激。
もうしばらく味わっていない、感覚が呼び起こされる。
直知の手も俺の弱点を覚えているようで、先ほどまで訪れなかった射精感があっという間に尿道を駆け上がる。
それは昔と変わらず、中毒になってしまいそうな危うさを秘めていて。
「んッ♡ んん……ッッ♡」
ぐち♡ ぐち♡ ぐち♡ ぐち♡
グリグリグリッ♡♡
先走りを竿全体に広げられながら絶妙な力加減と速さで扱かれ、もう片方の掌で亀頭を押し潰すようにほどよく圧迫される。
「直知、も、イく……ッ♡」
「いいですよ、たっぷり出してください」
直知は汚さないようにか毛布を横にずらし、俺のペニスは洞窟のひんやりとした外気に晒された。
恥ずかしいのに興奮して、息子はますます元気になる。
じゅこじゅこじゅこじゅこじゅこッ♡♡!!
指で作られた輪っかで竿からカリまで搾られるように擦り上げられれば、もう限界だった。
「ンンーーッッ♡♡!!」
直知の掌に、溜め込んでいた欲を勢いよく吐き出す。
独特な匂いが、辺りに立ち込めた。
それも、はぁ、はぁ、と荒くなった息を整えているうちに、鼻が慣れたのか、もしくは広がって薄まったのか、気にならなくなった。
そして派手にイったあとの俺に訪れたのは、猛烈な眠気だった。
「直知……」
眠りに落ちる直前に、回らない頭と舌を使って、声を掛ける。
それは自分の耳にも辛うじて届くような小さな声だったかが、直知はしっかり拾ってくれた。
「はい、なんでしょう」
さっき反省したばかりなのだ。
これからは直知に何かしてもらったら、きちんとお礼を言わないと。
「俺の、ヌいてくれて、あり、がとう……」
だから直知にそう伝えて、俺はそのまま、夢の世界へ落ちていった。
▼異世界語通訳▼
「ホヅミ、お前は体力がないなあ」
「休憩にしてあげようよ」
「気にするな、ホヅミ」
「そうだよ、問題ないペースだよ」
「そうですか、良かった」
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