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第5話
成人の儀——
その儀式は幾つかの儀式からなる総称で、その集大成として最後に執り行われるのが、この演舞場で行われる演武と舞踊だ。
その始まりは、友安国 の守り神である「白神様 」と呼ばれる神に対し、感謝を捧げるというもので、それが王族や政を担う者たちなど、ごく限られた者だけに披露される儀式として、脈々と受け継がれてきたのである。
それを今回、清蓮の思いつきともいう発案で、友安国の歴史始まって以来、人々の前で披露されることになったのである。
友安国では心身の鍛錬の一環として、剣術や他の武術は、身分を問わず広く人気があったが、友安国の人々はおおらかで、争いより安寧を、武術よりも歌や踊りをこよなく愛した。
幸運にも剣と舞踊を愛する人々は、この二つを楽しむことができるのだ。
しかも皇太子が剣を操り、宙を舞うのだ。
これ以上の余興がどこにあるというのか。
皇太子を間近で見られるという名誉と、贅沢な余興に対する期待を胸に、清蓮の出番をいまかいまかと待ち構えていた。
清蓮は演舞場の舞台袖に着くと、幕が開かずとも場内の熱気と人々の興奮が伝わってきた。
清蓮は侍従に促されると、清蓮は大きく息を吐いてから、舞台中央に向かった。
清蓮が登場すると、演舞場の熱気は一転、凛とした空気に変わった。
清蓮の自信に満ちた表情と佇まいは、神々しいまでの美しさと相まって、人々の目を釘付けにした。
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