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第10話

その雷撃のような閃光は、何の前触れもなく清蓮の目の前の床に突き刺さると、七色の光となって弾け飛んだ。 「うわっ!」 「いたい、いたい! 目がぁ!」 閃光を目の当たりにした人々は、焼けるような目の痛みに襲われ、呻き声を上げながらのたうちまわる。 清蓮(せいれん)もあまりの眩しさに思わず目を閉じ、反射的に何かにしがみついた。 閃光は目を閉じている清蓮にも届いたが、清蓮には柔らかな日差しのように感じた。 清蓮はゆっくり目を開けると、閃光は淡い光の粒となって清蓮の周りを漂い、そして花火の残花のように静かに床に落ちた。 閃光は消えると、清蓮と人々の間に薄い透明の膜のようなものが張られていた。 清蓮にそれが何かすぐに分かった。 (結界! 何者かが結界を張ったんだ! ) 「すごい! こんな強力な結界、誰が張ったんだ? このご時世に、これだけの結界を張れる人がいるなんて信じられないな! 」 清蓮は感心しながら呟いた。 結界の中にいる清蓮からは、床にうずくまる人々や泣きわめく女子供、事態を鎮静化しようと躍起になっている護衛たちなど、なかなかの混乱ぶりだ。 「あぁ、それにしたって、なんだって急に、それに……みんな大丈夫かな……」 「心配しなくていい……」 「え? 」 清蓮の頭上から低音の落ち着いた声が聞こえた。 清蓮は驚いて顔を上げると、男が清蓮を見下ろしていた。 清蓮はその時、初めて気がついたのだ。 清蓮が反射的につかまったのは、この男の胸ぐらで、清蓮はこの男に抱き抱えられていたのだということを。

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