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第12話
男は清蓮 を控えの間にある長椅子まで運ぶと、すぐさま清蓮の靴を脱がせた。
清蓮の右足は軽く捻っただけではあったが、赤く腫れ、男が触れると鈍い痛が生じた。
男は清蓮の右足にやさしく触れ、ゆっくりと擦りながら「気」を送り始めた。
その気は冷たい冷気となって患部を冷やすと、次第に腫れは引いてゆき、男の手の温もりだけが伝わった。
清蓮は右足を曲げ伸ばして自在に動くことを確認すると感嘆の声をあげた。
「すごいな、君は医術の心得もあるんだね」
「医術も? 」
「そうよ、医術も。だって、さっきの結界は君がやったんだろう? あれは仙術 だろう? だから医術もって言ったんだ。実際、あれは君がしたんだろう? 」
「……あなたもできるでしょう? 」
男は言葉短く答えるが、冷たさは感じられない。
「さぁ、どうかな。あんまり覚えてないんだ。数年前に仙術を学んだんだけど、どうやら修練の途中で病気をしてしまったみたいで、中途半端な状態で終わってしまったんだ……」
清蓮 は足を摩りながら、残念そうに言った。
「そう……」
男はそれ以上何も言わなかった。
男は清蓮に靴を履かせると、二人は自然と無言になったが、清蓮は居心地の悪さは感じない。
むしろ、初対面のこの男にどこか懐かしささえ感じ、この無口な男からいろいろ聞いてみたいと思った。
「あの、君は——」
清蓮が男に話しかけようとした時、一人の女性が、勢いよく部屋に飛び込んできた。
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