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第13話

「お兄様! 大丈夫? 」 清蓮(せいれん)に飛びついてきたのは妹の名凛(めいりん)だった。 男は音もなく二人から離れた。 「ちょっと足を捻っただけだよ。そんなに騒ぎ立てなくても」 「何言っているの、騒ぐに決まっているでしょ! あんなに大勢の人たちが襲ってきたのよ! 」 「でも大丈夫だっただろう? 結界もあったし」 「そうだけど……。みんな心配したんだから! 」 名凛は泣き出しそうな顔をしながら、それでいて怒っている。 清蓮は彼女の目に滲む涙を拭いながら、「心配かけたね。ごめん」と謝った。 そのうちに国王夫妻をはじめ、王弟夫妻や大臣などが、次々と部屋に入って来ると、控えの間はあっという間に人でいっぱいになった。 母親である王妃が清蓮のもとに駆け寄ると、人目をはばからず抱きしめた。 「清蓮! あぁ、無事でよかった! 本当にこの子は! もし、あなたになにかあったら、私はどうすればいいのですか! 」  王妃は感情を抑えきれず震える声で清蓮に言った。二人に同じことを言われると、清蓮は申し訳ないと思いつつ、苦笑いした。 清蓮は王妃にも謝罪の言葉を口にした。 国王はあえて何も言わなかったが、清蓮には国王が母や妹と同じ気持ちであることは十分に分かっていた。 その場にいた大臣ら関係者も口々に清蓮の無事を喜んだ。 国王はその場にいた者たちの方に向き直ると、張りのある声で話し始めた。

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